伝統音楽とJAZZはよく似ている。ライブを生で見ないと、本当の良さはわからない!
2020年02月25日
ジャズと韓国伝統音楽。それぞれ違うジャンルとして認識されている。
では、それを一緒に奏でた音楽は、一体何のジャンルになるのであろうか?
新しいジャンル?
まあ、そもそも、私は、音楽にジャンルなど無いと思っていますけど。
2月の初め、日本に行き、JAZZユニット トライソニークWITHミン・ヨンチで、名古屋、大阪、京都、東京の有名ジャズハウスツアーを行ってきました。
まずはソウルから名古屋にインしたのですが、いつも人で超ごったがえしている、インチョン国際空港がなんとガラガラ。コロナウイルスの影響ですね。
朝8時発の飛行機だから、いつもだったら2時間前の6時には空港に着き、チェックインなどの手続きをすると丁度いいタイムなので、逆計算し朝4時に起きて家を出発。
ところがどっこい、その日はインチョン空港がガラガラなので、飛行機の搭乗口になんと1時間40分前に着いてしまった。家でもうちょっと寝れたのに。
そして名古屋に着き、ホテルに荷物だけを置いて、久々の日本でのランチ!
これが大事なのである! ほぼ3か月ぶりくらいの日本食! 日本で食べたいものが、もうすでに私の頭の中で、容量オーバーしていた。
そのツアーのコンディションにも関わる程、食は重要だ。
しかも日本に行く何日か前から、日本に行けば、あれも食べて、これも食べてと、妄想しシュミレーションまでしていたが、結局、私の足が自然に向いたのは、餃子の王将!!
どんな日本食目当ての外国人観光客も、第一食目に餃子の王将には行かないと思うよ。
餃子の王将は、中国料理が日本人好みの味のミックスにより成功した、日本大衆中華料理! 一つのジャンルを確立したに違いない。
日本で生まれ育った私には、故郷の味なのである。王将さんいつもありがとう。
まあ、とにかく、それから、名古屋の栄にある、ジャズハウス「ラブリー」に入ってトライソニークのみんなと再会。
簡単な挨拶を済ませ、すぐに、リハーサル。これが面白い。
JAZZの人たちにもよるのでしょうが、去年も一緒にツアーを回ったせいか、あまりリハーサルをちゃんとしない。サウンドチェック程度と、曲順の確認程度で終わる。もう慣れているので、びっくりはしなかったが、私だけは久々のJAZZとの共演。緊張ものである。
けどもう実は、ここからJAZZは始まっているのです。
それからの、名古屋、大阪、京都、東京のトライソニークとのライブは、曲順、曲名は一緒なのに、毎回毎回違う演奏をするのである!!
これには普段、韓国伝統音楽をメインに活動している私にとっては、地獄、いや、拷問である。
けどね、これは、すごいと思うんですよ。本当に。
なんでかというと、それほど、音楽に対する引き出しが多いという事になるからです。
でね、移動中、たまらなくて私が、「どうしていつもいつも演奏がちがうの?」って聞いたら、こう答えるんですよ。
「違う景色が観たいからかなあ」
――だって!! かっこいいーーー!!! 私もそんなん言うてみたいわーー!
こんな感じで、4公演を彼らの素晴らしい演奏と、素晴らしい観客と共に、一緒に楽しく何とかやり終えた。
私も負けず嫌いなので、はげしいバトルも何度か繰り広げられたので、ツアー終了後、身体はボロボロ。
けどね、なによりも彼らと一緒に演奏するのは、楽しい!! 刺激にもなる!!
なので、できるだけ、年に1度ツアーに入れてもらうようにしている。
それは私の勉強である。訓練である。そして修行。
もちろん普段も、新しい曲を書いたり、演奏したりしているが、大体は楽譜どおりの演奏。もちろんこれも難しさが楽しさになるよ。
けどね、JAZZは、その場で、周りの音を聞きながら、その場で即興で作曲しながら、演奏するのですよ。すごいでしょ。
ある脳科学者が一番脳をフル活動している職業はミュージシャン、と言っているのを聞いたことがあるが、その中でもJAZZミュージシャンの脳が一番忙しいんじゃないかなあ。
そしてそのアドリブは、韓国伝統音楽にも意外に多くあるんですよ。特に民俗音楽には、アドリブや即興性が高く求められるので。JAZZと韓国伝統音楽は非常に共通している。
私はね、幸いにも韓国伝統音楽の二人の人間国宝の師匠に師事することができました。そのお二人ともおっしゃったのをよく覚えている。
「ヨンチ、もっと自由に音楽を表現しなさい」と。
自由と言っても、もちろん基礎をちゃんとできてからですよ。
その事を、日本の邦楽の、とある人間国宝さんに伝えたら、「日本も一緒ですよ」って。
ビックリ!した私は、「日本の伝統はきまりが多くて、それを少しでも破ると破門!!みたいなイメージが強いですけど」。
そしたら、その人間国宝さんが、「もちろん、きまりは大事だが、ちゃんと認められるようになったら、邦楽も結構自由にやっていいんですよ」「邦楽にそういうイメージが付いたのは、奏者より理論者の方が力を持ち始めてからかな」。
理論者=評論家かな。っておっしゃった。
へええーー。そうなんだ。目から鱗であった。
そういえば韓国伝統音楽業界も、評論家たちがだんだん力をつけ、伝統音楽を細かくジャンル分けしていったりしている。
しかも内容は、評論家の個人の主観や主張がはげしくなる一方。だいたい、音楽のうまい人は口が立たないから、文字や喋りでは、評論家に負けてしまうよね。
だんだん韓国もそうなるのだろうか……。
日本のJAZZ業界も、大変だと聞いた。
リスナーは増えはせず減っていると……。
だからJAZZミュージシャンたちも毎日必死で演奏しています。お客さんに来てほしいから。
私は色んな外国のミュージシャンとのセッション経験があるが、日本の、一流JAZZミュージシャンたちの実力は凄い! 世界レベルです。この彼らが、リピーターを増やすために知恵を振り絞り、最高の超絶技巧の演奏を毎日みせています。
伝統音楽とJAZZとの共通点は、音源や画像より、生が最高という事。すなわちライブを生で見てもらわないと、本当の良さがわからないのだ。
さあ、果たして、最近の日本の業界には、新しいミュージシャンやジャンルを発見しに来る、評論家やプロデューサー、そして事務所はあるのでしょうか?
私はこの何年間、そんな人には会ったことが無いような気がする。
文章や言葉で表せないのが、芸術である。私も今こうして文章で訴えていますが、評論家やプロデューサーの皆さん、あなたたちは、芸術家と一般の方の間に存在する架け橋なのです。
良いもの探し、新しいジャンルを発見し、そして世の中の人々に、たくさんたくさん広めて下さい!!
今日はここまで。
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