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夫婦別姓はまだダメらしいので、苗字はコイントスで決めませんか?

夫婦における男女の不平等を思考実験であぶり出す

勝部元気 コラムニスト・社会起業家

 杉田水脈衆議院議員が発言主と言われている「(夫婦同姓が嫌なら)結婚しなくていい!」という国会でのヤジが大きな問題になったことを受けて、前回は選択的夫婦別姓に反対する人々のその理由を考察しました。さらに今回は別姓の問題を皮切りに、夫婦間の平等問題について深く堀り下げたいと思います。

 はじめに触れておきたいのは、選択的夫婦別姓は必要不可欠な制度ですが、それをジェンダー平等推進政策と位置付けることは違うのではないかということです。今この瞬間に別姓が認められたところで、「現在、夫婦の約96%が男性の姓を選択する男性優位な社会」の素地は何も変わっていないからです。

 確かに「女性も男性も自分の姓を変えないで済む選択肢がある」という観点においてはジェンダー平等推進策かもしれません。ですが、世の中には必ずしも両者ともウインウインとはならないような、ゼロサム的対立(※片方が利益を得た場合、もう片方が不利益を被る状況)がいくつも存在します。それらの様々な不利益をどちらが負担するか、二人で分けた時に、等しく分かれた状態になっていなければ、男女平等な状態であるとは言えません。

 選択的夫婦別姓制度はあくまで「夫婦の姓に関する利害対立を減らす仕組み」であり、「夫婦関係の平等化を進める仕組み」ではありません。「姓」において利害対立が生じなくなっても、夫婦関係においては他にも様々なゼロサム的利害対立が発生しています。その際、夫婦関係がアンフェアなままでは、不利益の多くを女性が被る全体構造は残り続けるのです。

男女平等に対する意識の違いを可視化する実験

 それを前に進めるには、やはり全世代にわたる男性の意識改革が必要不可欠でしょう。確かに近年はジェンダー平等の指導が教育の中にも導入され、おそらく若い男性を中心に「パートナーとの関係は対等だ」と思っている人は少なくないはずです。しかし、その若い世代ですら平等にはほど遠いのではないでしょうか。そこで、そうした状況をチェックする思考実験を考案したので紹介したいと思います。

【平等というのは不利益を被る可能性も平等に降りかかる状況になることです。なので、結婚式や婚姻届提出等の際に、妻と以下のゼロサム的利害対立について、不利益を被る担当者を公平にコイントスで決めるようにしましょう】
・苗字を変えるのはどちらか
・子供が保育園に落ちた際に仕事を辞めて子の面倒を見るのはどちらか
・(保育園等に)病気のお迎えが必要になった際にメインでやるのはどちらか

 finallast/Shutterstock.com拡大夫妻間でどちらが不利益を被るかをコイントスで決めたら? finallast/Shutterstock.com

 この思考実験的提案をTwitterで投稿したところ、多くの人(主に男性と思われるアカウント)から、「いやいや、そんなことをコイントスで決めるなんて馬鹿げている!」「夫婦の数だけやり方はあるでしょう!」「話し合いが大事!」という批判が殺到しました。

 一方、女性からは「性別によって(利益・不利益が)決まってしまう現状に比べたら、50%の確率で決めてくれるコイントスのほうがよっぽどフェア」という意見が非常に多く寄せられました。これは実際、夫(父親)よりも妻(母親)がやるのが当たり前とされ、負担していることが少なくないからでしょう。

 また、話し合いをするといっても、「収入が少ない君が仕事を辞めるのが合理的だと説得させられるだけ。結局夫が不利益を被らない選択肢は事実上存在しないから、コイントスのほうがフェア」と答える人もいました。

 逆に男性が「コイントスなんてあり得ない!」と反発するのは、現状の社会の仕組みに男性の特権が多々あるからです。この思考実験は、見えにくい男性の“下駄”を可視化したものと言えるでしょう。

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筆者

勝部元気

勝部元気(かつべ・げんき) コラムニスト・社会起業家

1983年、東京都生まれ。民間企業の経営企画部門や経理財務部門等で部門トップを歴任した後に現職。現代の新しい社会問題を「言語化」することを得意とし、ジェンダー、働き方、少子非婚化、教育、ネット心理等の分野を主に扱う。著書に『恋愛氷河期』(扶桑社)。株式会社リプロエージェント代表取締役、市民団体パリテコミュニティーズ代表理事。所有する資格数は71個。公式サイトはこちら

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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