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朝ドラ「スカーレット」は「大丈夫」? ゆるーい1週間に爆発した私

矢部万紀子 コラムニスト

 NHKの朝ドラ「スカーレット」は3月28日(土)で終了する。いよいよラスト4週だ。ヒロイン喜美子は、離婚した元夫の八郎と新たな関係を築いていくのか? 「今、無性に作りたい」と言っていた陶芸は、新たな境地を開いていくのか? 喜美子と同じ道を歩む長男・武史のこれからは?

 などなどが、すごく気にかかるかといえば実はそうでもなく、なんか「可もなく不可もなく(ちょっと不可寄り)」なドラマだなー、と思っていた。

 だが、2月29日(土)の段階で、こう認定した。だめー。すっごくだめー。

 24日(月・振替休日)からの第21週が、大問題だった。問題はふたつある。ひとつ目だけなら、目をつぶってもよかった。心の中の通知表の目盛りを「可もなく不可もなく(ちょっと不可寄り)」から「可もなく不可もなく(だいぶ不可寄り)」に動かすだけだった。だが、29日の番組終了3分ほど前に、見過ごせないふたつ目の問題が発覚した。合わせ技一本。心の中の嘉納治五郎先生が、「スカーレット」の敗退を告げている。

視聴率20%が約束されたドラマの気概を持って

 ひとつ目から説明しよう。第21週は「スペシャル・サニーデイ」とタイトルが付けられている。週タイトルを20週から振り返るなら、もういちど家族に→春は出会いの季節→炎を信じて→涙のち晴れ→熱くなる瞬間→優しさが交差して……となる。

 あまり朝ドラをご覧にならない方でも、「スペシャル・サニーデイ」はストーリーを想起させないタイトルで、何か毛色が違うなあと思っていただけるのではないだろうか。そう、21週に何が起きたかと言えば、「ストーリーの進展を止めて、過去映像をたっぷり使って、ゆるーいお話で時間をつぶした」だ。

 と、これでは、「こわっ、怒ってんじゃん」と思われること間違いなしなので、少し優しめに言い直そう。

 この頃の朝ドラお約束の「最終回後に放映されるスピンオフドラマ」。それを最終回より前、本編でやりました、もちろん、ウエルメイドですが。そんな感じ。

 ヒロインの幼なじみ(林遣都)&ヒロインの妹(福田麻由子)という夫婦のコメディーだった。幼い時からの回想シーンを少なく見積もっても放送時間の3分の1(個人の感想です)ほど使い、そこに夫婦の芝居を足して、最後は心が温まるから許してね。そんな感じの1週間だった。

 って、おかしくないですか?

信作/林遣都(左)と百合子/福田麻由子=NHK「スカーレット」の公式サイトより拡大信作/林遣都(左)と百合子/福田麻由子=NHK「スカーレット」の公式サイトより

 私が意識的に朝ドラを見始めたのは2007年の「ちりとてちん」からだ。本格的にハマったのは2010年の「ゲゲゲの女房」で、以来、ほとんど欠かさず見ている。「論座」でも朝ドラについては何度も書き、『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』も上梓した。足掛け10年以上になる朝ドラ界の住人だが、こんな体験は初めてだ。

 なぜこんなことが起きたのか。と考えるのは私の仕事でないのだが、台本が間に合わなかったというのが妥当な線ではないかと思う。朝ドラは1日15分、週に6日、半年25週で2250分=37時間半という超長尺だ。脚本家が少しでも行き詰まると、制作現場はきっと大変なのだろうと想像する。だからストーリーは横において、別バージョンでつないだのだろう。

 心優しい知り合いは、「働き方改革の先取りでは?」と言っていた。確かにその線もあるかもしれない。次回作「エール」から、朝ドラは週5日放送に変わる。週6日という1961年以来の歴史に終止符を打ったのは、働き方改革の一貫だとNHKは説明している。長時間労働は大嫌いだし反対だ。だが、働き方改革をするなら、セットは変えないとか出演者を絞るとか、それも私の考えることではないが、とにかくもっと違和感のない芸のある対処法にしてほしかった。心からそう思う。

 だって、朝ドラは今や、日本一見られるドラマだ。この10年を振り返ると「ゲゲゲの女房」(2010年度前期)から「なつぞら」(2019年度前期)まで全19作品あるが、平均視聴率が20%を割ったのは、6作品しかない(ビデオリサーチ調べ、関東地区。以下同)。私が「可もなく不可もなく(ちょっと不可寄り)」と判断していた「スカーレット」20週でも、2月17日放送の視聴率が19.9%を記録している。その週に放送されたドラマで次に視聴率が良かったのは「相棒」(テレビ朝日系)だが、13.9%でしかない。

 だからこそ思う。あらかじめ20%が約束されたも同然で、「多くの人に見られることがわかっている」ドラマを作っているのだ。張り切ってほしい。気概を持ってほしい。だから長時間労働せよというつもりは毛頭ないが、最終回前のスピンオフは残念すぎる。

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筆者

矢部万紀子

矢部万紀子(やべ・まきこ) コラムニスト

1961年生まれ。83年、朝日新聞社に入社。宇都宮支局、学芸部を経て、週刊誌「アエラ」の創刊メンバーに。その後、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理、書籍編集部長などをつとめる。「週刊朝日」時代に担当したコラムが松本人志著『遺書』『松本』となり、ミリオンセラーになる。2011年4月、いきいき株式会社(現「株式会社ハルメク」)に入社、同年6月から2017年7月まで、50代からの女性のための月刊生活情報誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長をつとめた後、退社、フリーランスに。著書に『美智子さまという奇跡』(幻冬舎新書)、『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)。最新刊に『雅子さまの笑顔――生きづらさを超えて』(幻冬舎新書)

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