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英語入試「4技能」に惑わされず、力をつける道は

新共通テストの奇妙な出題方針を考える【下】

阿部公彦 東京大学教授

前稿の要旨)大学入試共通テストへの英語民間試験導入が延期されたが、新共通テストの問題点は解消していない。民間試験は、聞く・読む・話す・書くの「4技能」を評価するために必要だとされてきたが、その内容は、4技能をバラバラに測るもの。それに合わせるため、大学入試センターは、共通テスト試行調査(プレテスト)で、センター試験でおなじみだったアクセント、発音、語句整序といった問題を廃止した。これでは総合的な英語力を養うのに、かえってマイナスではないか。

拡大大学入学共通テストの試行調査(プレテスト)で試験開始を待つ受験生たち=2018年11月10日、福岡市の九州大学

民間試験「4技能」にこだわりすぎた無理

 大学入試センターは、新共通テストの出題方針を現在、次のように説明しています。

 令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト問題作成方針」
     (令和 2 年 1 ⽉ 29 ⽇ ⼀部変更)

 英語
 ⾼等学校学習指導要領では、外国語の⾳声や語彙、表現、⽂法、⾔語の働きなどの知識を、実際のコミュニケーションにおいて、⽬的や場⾯、状況などに応じて適切に活⽤できる技能を⾝に付けるようにすることを⽬標としていることを踏まえて、4技能のうち「読むこと」「聞くこと」の中でこれらの知識が活⽤できるかを評価する。したがって、発⾳、アクセント、語句整序などを単独で問う問題は作成しないこととする。

 民間試験方式を正当化しようとしているのですが、そのために無理が生じているように感じます。ここは大事なところで、今後の共通テスト英語の出題方針に対する問題提起の意味もありますので、論点を二つにしぼってまとめてみます。

 ①もともと民間試験活用が前提となっていた文言なのに、民間試験が中止になったからといって、民間試験利用に言及したところだけ差し替えてすませていいのか?

 これでは、そもそもどちらの「根拠」も薄弱で、たいした意味のないつじつま合わせにすぎなかったと思えてしまう。

 ②上記の説明では、アクセント等の問題を廃止する理由として、「実際のコミュニケーション」とかけ離れているからとしているが、この考え方は無意味に「4技能分離」にこだわりすぎていないか?

 これでは、まるで「実際に」読んだり聞いたりするときに、他の技能がかかわらないかのような錯覚が生まれてしまう。そのような純粋な「読む力」「聞く力」などほんとうにあるのか?

 ②は重要なポイントなので、以下、もう少し詳しく説明しましょう。

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筆者

阿部公彦

阿部公彦(あべ・まさひこ) 東京大学教授

1966年生まれ。専門は英米文学、文芸評論。『文学を〈凝視する〉』(岩波書店、2012年)で第35回サントリー学芸賞受賞。その他の著書に『善意と悪意の英文学史』(東京大学出版会、15年)、『幼さという戦略』(朝日新聞出版、15年)、『名作をいじる 「らくがき式」で読む最初の1ページ』(立東舎、17年)、『史上最悪の英語政策』(ひつじ書房、17年)など。近く、リスニングの効用を説く著作を刊行予定。

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