公演はできるのか? 稽古場からの肉声【上】
2020年03月11日
新型コロナウイルスの感染を防ぐため、文化イベントの自粛が要請され、演劇公演の公演中止、延期が相次いでいる。
国立の劇場は東京、大阪の4劇場が2月28日から3月15日まで、新国立劇場は3月24日まで、全ての主催公演を中止している。東京芸術劇場や世田谷パブリックシアターなど地方自治体が設置する劇場も軒並み主催公演をとりやめた。民間では大手の東宝、松竹、劇団四季は15日までの中止を発表。宝塚歌劇団や梅田芸術劇場は9日から公演を再開した。(3月11日現在)
その後、国立劇場、東宝、松竹は公演中止を19日まで延長すると発表。いったん公演を再開した宝塚と梅田芸術劇場も12~19日の公演をとりやめた。ホリプロも14日開幕予定だったミュージカル『サンセット大通り』の初日を20日に延ばし、パルコ劇場もオープニング・シリーズ第1弾『ピサロ』(渡辺謙主演)の初日を13日から20日に変更した。(3月12日現在)
中小規模の劇場や劇団の判断は分かれるが、上演したい気持ち、劇場で感染が広がったらという恐れ、何の補償もない中いつまでも「仕事」を自粛していられない経済事情などが複雑にからみ合い、それぞれが苦しい決断をしている。その当事者の一人である若手演劇人、劇作・演出家で俳優のシライケイタさんに、悩みの渦中にいる「いま」を2回に分けてつづってもらった。(2回目はこちら)
新型コロナウイルスの脅威の前に、落ち着かない日々を送っています。
僕たちの劇団、温泉ドラゴンは4月1日から5日まで、東京芸術劇場のシアターイーストで「SCRAP」という作品の公演を行う予定になっています。今年、劇団創立10周年を迎えるため「10周年記念公演」と銘打ち、劇団の総力をもって、渾身の作品を産み出すべく稽古場に通う毎日です。
がしかし・・・。
僕たちは今、「本当に公演を行えるのだろうか?」という大きな不安の中にいます。
新型コロナウイルスという脅威を前にして、僕たちのようなアーティストがどのような判断で行動すればいいのか、日々悩みながら、迷いながら、話し合いながら、稽古を進めています。
去る2月26日、安倍首相より2週間のイベント自粛要請が出されました。
その要請を受けて、次々とイベント中止のニュースが届くようになります。
演劇に関しても、新国立劇場を始めとして大小さまざまな公演が中止の決定をしました。2000人収容の大劇場から100人規模の小劇場まで、まさに雪崩を打つように中止、または延期の判断をしていきました。
その中には当然、僕の知人友人も多数含まれており、彼らの心中を察すると、まさに身を斬られるような思いで、公演中止のニュースを聞いていました。
温泉ドラゴンが上演する予定の東京芸術劇場は、劇場主催の公演に関しては当面の間、中止。それ以外のいわゆる「貸し館公演」に関しては、各団体の判断に委ねるということでした。
温泉ドラゴンは劇場との提携公演ではなく、劇場を借りて行う劇団主催の公演の為、自粛するかどうかの判断は僕らに委ねられることになりました。ここから我々の、終わりのない自問自答が始まります。
自粛要請の期間を、2月26日から正確に2週間だと解釈すると、3月11日までということになります。『SCRAP』の初日は4月1日なので、要請期間はとっくに過ぎています。
しかし、4月にコロナ騒動が収束に向かっている保証はありません。とても演劇どころではないくらいに感染が拡大している可能性もあります。反対に、ウイルスの押さえ込みに成功し、被害が縮小に向かっている可能性もあります。中止していた公演も復活し、各種イベントで日本中が盛り上がっているかもしれません。
僕たちの稽古初日は、3月3日でした。メディアから得られる情報はバラバラで、専門家の見解も全く統一されていませんでしたので、その時点で1か月先のウイルスの情勢を僕たちが予測するのはあまりにも困難でした。
劇団員で相談し、1か月後には収束に向かっていることを祈りながら、稽古場の換気や消毒を徹底して、稽古を開始することにしました。
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