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『ロバと王女』と『ロシュフォールの恋人たち』、ミュージカルの至福の傑作

藤崎康 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

<排除と選別>が心理的急所を刺激する

 それにしても、くだんの“指輪テスト”の場面は、なぜハラハラドキドキさせるのか。おそらくその場面では、“指輪テスト”に合格する“ロバの皮”/王女/カトリーヌ・ドヌーヴが、外見もいちばん美しい(顔面偏差値が最も高い)という、今なら「ルッキズム/外見至上主義」なるオソロシイ言葉で批判されかねない、ある種の優性思想めいた美/醜をめぐる優劣、および、身分も最も高貴であるという<格>をめぐる優劣、そしてそれらの判断基準による<排除と選別>が肯定されているからだ。

 そして、そこでは少なくとも、<人間みな平等>という価値観は後景にしりぞいている。まあ現実の社会では、こうした「不平等」が極端にならぬよう、“民主的に”調整していくほかはないのだが(老いて死んでいく人間は、誰しも劣者/弱者になりうるのだし……)。

=「ミシェル・ルグランとヌーヴェルヴァーグの監督たち」のサイトより拡大『ロバと王女』=「ミシェル・ルグランとヌーヴェルヴァーグの監督たち」のサイトより

 いずれにせよ、映画『ロバと王女』やその原作や、やはりペローの『シンデレラ』やアンデルセンの『みにくいアヒルの子』、あるいは『白雪姫』(グリム版、他)などのお伽話・説話の世界は、

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筆者

藤崎康

藤崎康(ふじさき・こう) 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

東京都生まれ。映画評論家、文芸評論家。1983年、慶応義塾大学フランス文学科大学院博士課程修了。著書に『戦争の映画史――恐怖と快楽のフィルム学』(朝日選書)など。現在『クロード・シャブロル論』(仮題)を準備中。熱狂的なスロージョガ―、かつ草テニスプレーヤー。わが人生のべスト3(順不同)は邦画が、山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』、江崎実生『逢いたくて逢いたくて』、黒沢清『叫』、洋画がジョン・フォード『長い灰色の線』、クロード・シャブロル『野獣死すべし』、シルベスター・スタローン『ランボー 最後の戦場』(いずれも順不同)

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