2020年03月12日
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ対策として、安倍首相が全国の学校を春休みまで臨時休校とするよう突如要請したことが、大きな波紋を広げています。
とりわけ、共働き家庭やひとり親家庭は、日中に子供をケアできる人員が物理的に家にいないため、休校による影響が非常に大きく、以下のように悲鳴をあげる親も少なくありません。
・「長期の臨時休校、子供の世話はどうする? 働くママ悲鳴」(読売新聞「大手小町」 2020年2月27日)
・「「子供はもちろん大切、でも仕事どうしよう」臨時休校で対応に追われる母親…政府のサポートは充分?」(FNN PRIME 2020年3月3日)
・「休校要請に教育現場は戸惑いや混乱、悩む働く母親」(日刊スポーツ 2020年2月29日)
このような状況を理由に、首相が臨時休校を唐突に進めたことに対して、「病院勤務の看護師が働けなくなってしまう! 結果的に医療インフラの脆弱化を招いてしまう!」という批判も散見されました。
ところが、これらのニュースに対して、私は強い違和感と不快感を覚えずにはいられませんでした。気が付いた方もいるかもしれませんが、主語がいずれも「女性」になっているからです。
ひとり親家庭でないならば親は二人いるはずなのに、“働くパパ”や父親はいったいどこに行ったのでしょうか? 学校に行けなくなった子供たちの“親”をやっていないのでしょうか? なぜ臨時休校で“こころナーバス”になるのは女性ばかりなのでしょうか?
前回の記事「夫婦別姓はまだダメらしいので、苗字はコイントスで決めませんか?」でも書いたように、多くの父親が育児を当事者の問題として考えず、妻に押し付けたままという日本社会の歪みが、臨時休校という非常事態で一気に表に噴き出したように感じます。
メディアの表現にも大きな問題があります。子育てを2人でシェアしている共働き夫婦であれば、臨時休校によるダメージは父親にも重くのしかかるはずです。たとえ、少数でも、困っている父親は実際にいます。
にもかかわらず、休校がまるで母親にのみ降りかかる問題であるかのように取り上げるのは、メディアが「育児は女の仕事」というジェンダーロールや性差別を再生産していることになります。感染者が咳エチケットを守らずにウイルスをばら撒くのは罪なことですが、ジェンダーロールや性差別をばら撒くのも同様に罪なことです。
それに加えて、臨時休校で困っている男性たちの声をも消し去っているわけです。
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