単に「不要・不急」ではなく、より具体的かつ明確な言葉が必要
2020年03月28日
小池百合子東京都知事は、新型コロナウイルスへの感染者が急激に増えている東京都の現状を考慮して、週末の不要・不急の外出を自粛するよう要請した(朝日新聞3月26日付)。
1日あたりの感染者がたった数日で倍増した事実を前に、あせりにも似た気持ちをいだいたのは分かる。だが、社会的影響が甚大な、それでいて効果のほども確実とは必ずしも言えない対策を、なぜ安易に打ち出したのだろうか。小池知事には、この間の北海道での経験が念頭にあるかもしれないが(杉田前稿)、北海道でのそれが功を奏したかどうかは、結局は分からないのである。
なるほど3月19日にだされた「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」の状況分析・提言は、北海道の対策には一定の効果があったと評価した(朝日新聞3月20日付)。北海道の対策は、全道の小中高校等の一斉休校要請(2月26日)および非常事態宣言・週末の外出自粛要請(28日)よりなるが、同分析・提言が前者の効果を評価するのは困難とも述べているとすると(同前)、評価されたのは非常事態宣言・週末の外出自粛要請のようである。だがその評価に私は疑問がある。
データを用いて政策評価を行う際、「統計の政治」が入り込む可能性は極力さけなければならない。統計は解釈の仕方によっては、いかようにも用いられうる危険性がある。
北海道の場合、宣言・要請時点(2月28日)を起点とすれば、その後、一時の例外をはさんで新規感染者数は減少したように見える。だが、起点をそれより何日も前におけば、事態は違って見える。新規感染者数は、宣言・要請が出される以前からすでに減少傾向に転じている。道内への観光客が激減したこと、断片的ながらも流れてくる情報を通じて市民の行動に一定の変化が生じていたこと等が影響したのかもしれない。
そうした判断も可能なら、専門家会議が行った評価には疑問符がつく。だいいち、専門家会議は宣言・要請と新規感染者の減少を時系列的に並べることはできても、その因果関係までは明言できないはずである。科学的に因果関係を証明するためには、宣言・要請を受けずにふつうに過ごす統制集団を作り、その集団において感染者がどのように推移したかを調べなければならないが、もちろんそうした統制集団は作れず、したがって統制集団との比較は不可能である。しかもこれが仮にできたとしても、相関関係以上の因果関係を明らかにすることは、非常に難しい。
なるほど専門家会議は、道知事の対策を評価する理由として、宣言・要請後に、1人の感染者が何人に感染させるかを示す「実効再生産数」なるものが減少傾向にあった点をあげたというが、このデータからわかることは、やはり時系列的な事実関連だけである。
百歩譲歩して、緊急事態宣言・外出自粛要請に一定の効果があったと解釈してもよい。
だが忘れてはならないことは、
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