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新型コロナに「医療先進国」キューバはどう立ち向い、世界に貢献しているか

板垣真理子 写真家

 今、キューバから原稿を書いている。そもそもは米国による経済封鎖強化の続くこの国が、オバマ政権時代に私自身が3年と少し過ごした時代といかに変化しているかについて、現地情報をリポートするはずだった。にもかかわらず新型コロナウィルス=COVID-19関連のものになってしまった。

誰もいなくなった、目抜きの23通り拡大誰もいなくなった、目抜きの23通り=撮影・筆者

 それだけ今の世界情勢の中でこのウイルスが引き起こしたもろもろの事象が大きく、またキューバが世界でウイルスに感染した人々の命を救うのに素晴らしく多大な貢献をしているか、でもある。そこでキューバの活躍に関するニュースが日本でどのくらい一般的だろうか、と思いながら書くことにする。

 まず、中国の武漢でこのウイルスの感染が伝えられた後の2020年1月、キューバの医療団が中国入りしたニュースを見た。「きたっ」と思った。キューバと中国の強い結びつきがあり、また、キューバは知る人ぞ知る、高度医療先進国だからである。

 この時キューバの医療団が携えていったのは、別に新薬ではなかった。これは、インターフェロンアルファ2bといい、1986年、遺伝子工学・バイオテクノロジー研究センター(CIGB)のチームによって開発されたもの。これは日本でも認可された薬。そもそもインターフェロンは、人の免疫システムに働きかけ、それを強める作用を持つ。アルファ2bも例外ではない。当初は、デング熱などの薬として開発された。キューバも、熱帯・亜熱帯のかなり多くの地域でみられる、蚊が媒介するデング熱の発症地域である。またこの薬はHIV-AIDS、B型およびC型肝炎、さまざまな癌に効果のあるものとしても、使用されてきた。

 ウイルスに対しては「感染後の症状悪化を阻止し、致命的な段階に入るのを防ぐ」という。つまり、ウイルスを殺すわけではなく、人の免疫力を使って、抗ウイルスの作用を促す。中国でもキューバとのパートナーシップにより2003年から作られるようになり、今回の新型ウイルスにも、中国で選ばれた30種類の薬のうち効果のあった21の薬のひとつとして、1000人以上もの命を救ったとされている。キューバはこの中の何種類かを開発している。

 韓国、ドイツなどでも実際に効果を発揮し、死者の増加を食い止め、その他のヨーロッパ、ラテンアメリカの国々からも、当然のごとくオーダーが相次いでいる。各国からのオーダーで、この薬の製造所は多忙を極めており、フレックス制で働いていた従業者はフルタイム制に変更。しかし、これからさらにオーダーが増えても対応できる構え、という。このキューバ産製剤については、すでに駐日キューバ大使が日本の厚生労働省と意見交換を行い、新型コロナウイルス対策の協力を申し出ている。

 キューバの活躍を喜ばない米国の現政権は、各国にキューバ製のインターフェロンアルファ2bをオーダーしないように呼び掛けた、という記事も目にしたが人命尊重の立場から見ると目を覆いたくなるような発言は、聞くも心苦しい。

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筆者

板垣真理子

板垣真理子(いたがき・まりこ) 写真家

1982年、ジャズ・ミュージシャンの撮影から写真の世界に入る。以後、ナイジェリアをはじめとしたアフリカ、南米、カリブ、アジアなどを取材。著書に、『キューバへ行きたい』(新潮社)、『ブラジル紀行――バイーア・踊る神々のカーニバル』(ブルース・インターアクションズ)、『武器なき祈り――フェラ・クティ、アフロ・ビートという名の闘い』(三五館)など多数。