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「スカーレット」にモヤモヤ。朝ドラのヒロインは「天才」か「女性」か問題

矢部万紀子 コラムニスト

 NHK朝ドラ「スカーレット」の最終回、ヒロイン喜美子(戸田恵梨香)の息子・武志(伊藤健太郎)が死んでしまった。白血病とわかってからも陶芸をし、恋人もできた。最終回でも彼の日常が淡々と描かれ、「武志は、26歳の誕生日を前にして旅立ちました」というナレーションが入るだけだった。

 静かに喜美子の人生を描いていく。そういうドラマだったと終わってみれば思う。「静かに」の意味は後々書いていくが、見ている最中はモヤモヤしていた。モヤモヤのありかがよくわからず、結果、感情があまり動かない。そんなドラマだった。

 12月までの前半は少し違った。感情が、ストーリーへの共感には結びつかないものではあったが、わきあがってきた。喜美子の父・常治(北村一輝)の横暴ぶりに日々、怒りが込み上げてきた。喜美子の行く手を妨げ、ちゃぶ台をひっくり返す。一体なんだと義憤にかられ、本サイトでもそのことを書いた。

 前半の最終週で、父が亡くなった。1月から始まる後半のキーワードは「自由」ではないか。そんなことを書いた。期待したのだ、父という重石が取れてからの喜美子の活躍に。父親ゆえ乗り切れなかったストーリーに、後半こそ共感できるのでは、と。

 そして後半、喜美子は活躍した。陶芸家として名声を得ていった。だが、乗れなかった。モヤモヤした。「隔靴掻痒」という言葉があるが、痒いのかどうかもわからず、わからない何かを、靴を隔てて見ている。そんな感じだった。

NHK「スカーレット」の公式サイトより拡大「スカーレット」のヒロイン、喜美子(戸田恵梨香さん)=NHK公式サイトより

 この気持ちは何だろうと、最終週に気合を入れて考えてみた。「つまんないよー」というストレートな感情がわいてくることもない、正体不明のモヤモヤ。その正体を知るため、「読書感想文」という課題を与えられた生徒のように、まずテーマから考えてみることにした。このドラマは、何を訴えようとしていたのだろう、と。

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筆者

矢部万紀子

矢部万紀子(やべ・まきこ) コラムニスト

1961年生まれ。83年、朝日新聞社に入社。宇都宮支局、学芸部を経て、週刊誌「アエラ」の創刊メンバーに。その後、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理、書籍編集部長などをつとめる。「週刊朝日」時代に担当したコラムが松本人志著『遺書』『松本』となり、ミリオンセラーになる。2011年4月、いきいき株式会社(現「株式会社ハルメク」)に入社、同年6月から2017年7月まで、50代からの女性のための月刊生活情報誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長をつとめた後、退社、フリーランスに。著書に『美智子さまという奇跡』(幻冬舎新書)、『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)。最新刊に『雅子さまの笑顔――生きづらさを超えて』(幻冬舎新書)

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