2020年04月05日
あれは小学校5年の時、大阪市生野区鶴橋にある親友の家にお泊りに行った時の事だった。
土曜日の午後から公園で遊んだ後、パート先の彼のお母さんに晩ごはん代をもらいに行った。彼の家の鶴橋からお母さんの職場のある布施へ。4kmの距離だった。遠かった……。
1時間くらいかけて、お母さんに晩ごはん代をもらった帰り道、もう暗くなっていた。交差点の横断歩道で信号待ちをしていると、横切ろうとしたカブのバイクが私たちの目の前で転倒! 火花を出して10mほどスリップしながら転がっていった。
大変だ! 助けてあげないと! と思った瞬間、親友はこう言ったのだ。
「逃げよう!!」
私の家では、困った人がいたら、すぐに助けてあげなさい! 警察に連絡して救急車を呼びなさい! と教育を受けていたので、友達の「逃げよう!」にはビックリ……。
そういって、手を引っ張られて、一緒に走ってその場を去った。結構、遠くまでひたすら走った。
ようやく、どこかの公園にたどり着いた後、彼は息を切らせながら、こう言ったのだった。
「俺んち、登録ないねん……」
「だから、こういう時その場から逃げろって言われてるねん」
私は、1970年、大阪市西成区生まれ。
当時、父の弟姉妹を始め、私の兄弟も通った学校に通ってた。
クラスは全学年1クラスずつしかなく、しかも1クラスに52人もいた。しかし、6年になって、卒業する頃には人数が26人になっていた。
なんと半分の学生が6年間の間に転校……して行ったのだ。
みんな東京へ行くとか、地方へ行くとか、韓国に引っ越すとか。
お別れパーティーもたくさんやった。
けどそれは、全部、嘘。彼らの家族は、登録が無かったのだ。
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