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アニメーションにつながる、絵に生命が宿る話

江戸時代の物語、絵画から、現代の山村浩二アニメーションへ

有澤知世 神戸大学人文学研究科助教

絵に生命が宿って動き出す

 「夢応の鯉魚」の最後には、興義が描いた絵を湖に散らすと、本物の鯉になったという不思議なエピソードが記されている。

 この「絵が抜け出す」という話は、昔から中国や日本によく見られる。たとえば、鎌倉時代に成立した説話集『古今著聞集』には、こんな話が収められている。

 平安前期に活躍した宮廷画家、巨勢金岡(こせのかなおか)が、京都の仁和寺に描いた馬は、朝になると脚に土がついていることがしばしばあり、夜、絵から抜け出して近くの田の稲を食べていることがわかった。馬の絵の目の部分を彫ってなくしてしまうと、田が食い荒らされることがなくなった。

拡大大津絵の「三味線をひく鬼」=旭正秀著『大津絵』(1932年)より、国立国会図書館デジタルコレクション
 金岡の絵はよほど生き生きしていたのか、命が宿って抜け出すというエピソードが他にも多く残されている。

 このように、古くから、絵画には命が宿ると考えられていたらしく、小説や演劇にはこの話のパターンが数多く見られる。

 たとえば、歌舞伎に「大津絵物」という一群がある。

 「大津絵」とは、現在でも滋賀県の名産品として知られ、藤娘や鬼の念仏、弁慶といったモチーフを、粗く走り描きした戯画。江戸時代、交通の要所であった大津の追分、三井寺のあたりで売り出し、旅人の土産として人気が高かった。演劇の「大津絵物」では、この絵の中の人物や動物が抜け出して踊ったり、敵と戦ったりする。

 今でもよく上演される歌舞伎の『けいせい反魂香』(近松門左衛門作、1708年初演)にも、絵が抜け出して動く話が登場する。

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筆者

有澤知世

有澤知世(ありさわ・ともよ) 神戸大学人文学研究科助教

日本文学研究者。山東京伝の営為を手掛りに近世文学を研究。同志社大学、大阪大学大学院、日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、2017年1から21年まで国文学研究資料館特任助教。「古典インタプリタ」として文学研究と社会との架け橋になる活動をした。博士(文学)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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