福嶋聡(ふくしま・あきら) MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店
1959年生まれ。京都大学文学部哲学科卒。1982年、ジュンク堂書店入社。サンパル店(神戸)、京都店、仙台店、池袋本店、難波店店長などを経て、現在、MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店に勤務。著書に『希望の書店論』(人文書院)、『劇場としての書店』(新評論)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
ボランティア、傀儡政権、テクノ・ファシズム
それでも、「正義」と暴力だけでは、現地の抵抗を圧し潰すことは容易ではない。現地の人々の中からも、様々な思惑から植民地化を受け入れ、日本の大陸侵略における大きなアクターとなった「親日派」が生まれ、傀儡政権が成立する。
傀儡政権というと、軍事的暴力に屈して宗主国の言いなりになった弱く情けない人たちというイメージがどうしても先に立つが、実際はさまざまな歴史的要因を背景として生まれた複雑な存在であることを、広中一成著『傀儡政権――日中戦争、対日協力政権史』(角川新書)は教えてくれる。
最も有名な傀儡国家である「満州国」を成立させた関東軍の南下侵攻に伴い、日本は万里の長城の内側にも傀儡政権を打ち立てていった。冀東(きとう)防共自治政府(1935.11.25~1938.2.1、通州・唐山、殷汝耕;括弧内は存続期間、首都、指導者)、中華民国臨時政府(1937.12.14~1940.3.30、北京、王克敏・王揖唐)、中華民国維新政府(1938.3.28~1940.3.30、南京、梁鴻志ほか)、中華民国国民政府(1940.3.30~1945.8.16、南京、汪兆銘)と、それは日本軍の侵攻とともに、南下拡大していき、1945年に終幕する。
時代が下るに従って、傀儡政権は辛亥革命後の中国の正統な政権を名乗るようになっていくが、