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ミニシアターを救え!――新型コロナで、小規模映画館は存続の危機に

古賀太 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)

休業補償の要求ではなく、映画文化を守るため

 もともと今回の運動は、全国のミニシアターを束ねる「一般社団法人コミュニティシネマセンター」が始めようとしたものだった。今回のコロナ騒ぎで全国のミニシアターが危機的な状況に陥っているのを知る同センターの岩崎ゆう子事務局長は、文化庁や映画議員連盟に援助を求める文書を提出しようと各地のミニシアターと協議を始めた。すると深田晃司監督や濱口竜介監督が発起人となった「ミニシアター・エイド基金 Mini Theater Aid」の動きを知って彼らと話し合い、ミニシアターに限らず広く映画人に呼びかけ人になってもらうことにしたという。

 この呼びかけ人や賛同者を見ると、監督も俳優も若いことに気がつく。さらにもっと重要なことは、映画館の団体である興行組合や作り手の団体の日本映画製作者連盟や日本映画監督協会が関与していないことだ。若手のインディペンデントで活躍する作り手や映画館主を中心に、基本的には個人で参加している。

 コミュニティシネマセンターの岩崎ゆう子事務局長は、「これは単なる休業補償の要求ではない。ミニシアターは重要な文化であり、映画文化を守るためにはミニシアターが必要だという認識を持って欲しい」と語り、署名が10万人を超えた時点で文科省、文化庁、内閣府、映画議員連盟などに提出する予定という。

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 もともと岩崎事務局長は今回のコロナ騒動以前からミニシアターには援助が必要だと考えていた。それが今回の動きでミニシアターの収入が激減したことから、声を挙げることにしたという。確かにフランスなどでは、個性的な番組編成をする映画館に対する国立映画センターからの助成金がある。日本には芸術文化振興基金からの映画製作や映画祭への助成金はあるが、映画館自体への助成はない。映画館はあくまでビジネスと考えられているからのようだ。

 深田晃司監督は「ミニシアター・エイド基金」のステートメントで次のように言う。

 「日本を訪れた世界の映画人が等しく感嘆と賞賛の声を挙げるのが、ミニシアター文化の存在です。なぜこれほどまでに国家の支援の少ない国で、シネコンとは違う、非常にローカルでユニークな映画館が日本中に存在できているのか、と。撮影所システムの崩壊後に広がったミニシアターの存在によって、私たちは娯楽大作だけではなく、様々な国、様々な時代の映画を鑑賞することが叶いました」

 濱口竜介監督は、以下のように語る。

 「私はミニシアターの存在によって、映画ファンになり、そして映画監督にしてもらった、という思いがあります」


筆者

古賀太

古賀太(こが・ふとし) 日本大学芸術学部映画学科教授(映画史、映像/アートマネジメント)

1961年生まれ。国際交流基金勤務後、朝日新聞社の文化事業部企画委員や文化部記者を経て、2009年より日本大学芸術学部映画学科教授。専門は映画史と映画ビジネス。著書に『美術展の不都合な真実』(新潮新書)、『永遠の映画大国 イタリア名画120年史』(集英社新書)、訳書に『魔術師メリエス──映画の世紀を開いたわが祖父の生涯』(マドレーヌ・マルテット=メリエス著、フィルムアート社)など。個人ブログ「そして、人生も映画も続く」をほぼ毎日更新中。http://images2.cocolog-nifty.com/

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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