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コロナ自粛、文化芸術への補償の根拠は

劇場、映画館は“パブリック”な場、民主主義に欠かせない

馬奈木厳太郎 弁護士

「自粛」は自由な意志決定ではなかった

拡大新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で発言する安倍晋三首相(中央)。この日、「イベント2週間の自粛」が打ち出された=2020年2月26日、首相官邸

 そこで、今回の件についてですが、舞台芸術や映画館が大打撃を受けることになった発端は、「自粛要請」にあります。しばしば「自粛要請」と表記され、私たちもそれでなんとなくわかった気になってしまいがちですが、安倍首相は実際には何と言ったのか。いま一度確認しておきましょう。

 「多数の方が集まるような全国的なスポーツ、文化イベント等については、大規模な感染リスクがあることを勘案し、今後2週間は、中止、延期又は規模縮小等の対応を要請する」

 「多数の方が集まるような……文化イベント等」「今後2週間」「中止、延期又は規模縮小等の対応を要請する」という点がポイントになりそうです。

 舞台芸術にしても映画館での上映にしても、「多数の方が集まる」「文化イベント」に該当することは、おそらく争いがないと思います。そうしたイベントの主催者に対して「対応を要請」しているのですから、それらの主催者が「特定の人」であることも明らかです。

 さらに、「中止」は、主催者にとっては経済的な利益を得られなくなる重大な事態ですし、それは主催者自らの原因で招いたわけでもありませんから、特別に財産上の犠牲を強いるものということができます。

 他方で、「自粛要請」は強制力を伴うものでなく、したがって中止はあくまでも自己責任であって、補償は必要ないという立場もあります。

 しかし、今回の事態に際しては、中止か否かの判断をめぐって、自由な意思決定がなされたとは評価できないと思います。補償を不要だとする意見は、実態をみない、実態を知らない考え方といえるでしょう。

 以上のことから、補償を求めることは、決して非常識な要求ではなく、憲法に照らしても根拠を有するものということができます。

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筆者

馬奈木厳太郎

馬奈木厳太郎(まなぎ・いずたろう) 弁護士

1975年生まれ。大学専任講師(憲法学)を経て現職。 福島原発事故の被害救済訴訟に携わるほか、福島県双葉郡広野町の高野病院、岩手県大槌町の旧役場庁舎解体差止訴訟、N国党市議によるスラップ訴訟などの代理人を務める。演劇界や映画界の#Me Tooやパワハラ問題も取り組んでいる。 ドキュメンタリー映画では、『大地を受け継ぐ』(井上淳一監督、2015年)企画、『誰がために憲法はある』(井上淳一監督、2019年)製作、『ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記』(平良いずみ監督、2020年)製作協力、『わたしは分断を許さない』(堀潤監督、2020年)プロデューサーを務めた。演劇では、燐光群『憲法くん』(台本・演出 坂手洋二)の監修を務めた。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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