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彼らは新型コロナ緊急事態宣言下でもなぜ自粛をしないのか

見えてきた「日本独り負け」という悲しい未来

勝部元気 コラムニスト・社会起業家

 新型コロナウイルスの感染拡大で、2020年4月8日0時に緊急事態宣言の効力が発生しました。ですが、その後も感染確認者数(※実際の感染者数は不明)は増加の一途をたどっています。一方で、中国、韓国、ニュージーランド等ではすでにピークを脱し、再燃に気を配りながら軟着陸を図る段階に移行しているようです。

 では、いったい日本のコロナ禍が完全に終息するのはいつ頃になるのでしょうか? 主要国の中でも感染が拡大した時期が遅いため、当然終息の時期も遅くなるだろうという予測もあります。ですが、私はそれよりもさらに何カ月も遅くなり、「超長期化」「世界最長化」という懸念をもたざるを得ないのです。

 ヤマ場(下降局面が見える段階)はなかなか訪れず、三菱スペースジェット(リージョナル旅客機)の納入が何度も延期されているように、政治家たちは「今が極めて重要な時期」のような発言を延々と繰り返す。世界各国が経済回復のギアを上げ始めた段階に入っても、日本だけがまだ終息させられず、各国からの渡航も制限されたままで、「独り負け」の状況がだらだらと続いてしまう未来が来るのではないかという不安をかなり強く感じています。

緊急事態宣言が出て最初の週明けも通勤する人が目立った東京・新宿=2020年4月13日緊急事態宣言が出て最初の週明けの朝、東京・新宿=2020年4月13日

政策が中途半端では自粛しない人が出て来る

 その要因の一つと思うのは、言わずもがな、安倍政権の新型コロナ対策が遅くて規模が小さく、全てにおいて「中途半端」な点です。

 安倍首相は4月7日の会見で「PCR検査体制を1日2万件へ倍増」等、様々な数値目標をようやく盛り込みました。ですが、都市封鎖や外出制限を行わずとも大量検査やIT駆使、徹底したディスクロージャーで乗り切った韓国型を目指すわけでもなく、公衆衛生の王道とされる徹底的な移動制限によって乗り切ろうとする欧米型を目指すわけでもなく、中途半端だと言わざるを得ません。

 それゆえ、緊急事態宣言が発令された後の今でも、人々の行動制限が徹底されていません。宣言翌日にはTwitterで「電車普通(に混んでる)」がトレンドワードに入り、飲み会をしている人もまだいます。街中ではマスク無しで会話する老若男女があちこちにいますし、屋外の喫煙所では人が群がっていました。週末も商店街は人通りが絶えず、依然として営業を続けるパチンコ店には開店前に客が列をなしている状態です。

 私のところには4月9日に「電気を弊社に切り替えませんか?」という営業の電話もかかってきました。「緊急事態宣言が出ているのに電話営業の仕事をしに会社に来いって言われているのですか? 従業員や社会の様々な人を危険に晒す経営判断は慎むように上に言ってください」と伝えましたが、今もなお不急の仕事で従業員を会社に呼びつける上役たちが少なからずいるようです。

 実際、宣言前後の7日と8日の人口増減状況を比較調査したNTTドコモの調査では、減少はしたものの、依然としておよそ60%~90%の人出があったと報告されています。厚生労働省クラスター対策班の西浦博氏も、人との接触を8割減らせば感染者の数が減るまで1カ月間、65パーセントだったら105日という数値を出しているようですが、そこからはほど遠い状況であり、コロナ対策で日本が「残業」するのはほぼ確実でしょう。

慶大病院研修医のような愚行は今後も起こる

 もちろん、フリーキャッシュフローの少ない中小企業や個人事業主、「休むこと=所得ゼロ」の非正規雇用労働者等が、「補償や給付が無ければ明日生きていけない。少しでもキャッシュを得るために仕事を続けるしかない」と、行動制限を徹底できないのは当然です。

 不急の仕事なのに上司に来いと言われてやむを得ず働いている人も同様で、彼らは決して責められるべきではありません。補償や給付を渋る政府に原因があり、責めるべき対象は政府でしょう。

 また、政府や自治体から要請されている「自粛」の定義も曖昧で、各々の専門家が発する自粛の意味もバラバラなので、個人がどこまで行動を制限するべきか判断に悩む人も多いでしょう。それゆえ、「外出制限を完璧にしない奴はダメ」というバッシングは間違っていると思います。

 その一方で、前述のように、明らかにリスクの高い不要不急の行動を制限せずに街中で遊んでいる人、できるはずなのにソーシャル・ディスタンスの確保や「3密(密閉・密集・密接)」の防止を守らない人、従業員を不要不急の仕事で出社させる会社もまだまだあります。行動制限が数%違うだけで感染拡大のペースが大きく異なると言われている中、彼らの安易な行動が感染爆発に繋がる可能性は大いにあるでしょう。

 実際に、小池東京都知事の自粛要請翌日、3月26日に慶応大学病院では研修医約40人が深夜まで宴会をして、参加者を含めた18人が新型コロナウイルスに集団感染していたことが大きな批判を浴びました。これにより研修医が多数自宅待機を迫られたようですが、このようなことを確実に防止しなければ、社会インフラ全体が崩れかねません。

研修医に多数の感染者が確認された慶応大学病院=東京都新宿区研修医が集団感染した慶応大学病院=東京都新宿区

なぜ真面目なはずの日本人が自粛を守らないのか

 それにしても、日本人は「規律を守る」「同調圧力に弱い」傾向が強いと言われているにもかかわらず、なぜ彼らは自粛要請を無視してこのような行動を取るのでしょうか?

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