山口宏子(やまぐち・ひろこ) 朝日新聞記者
1983年朝日新聞社入社。東京、西部(福岡)、大阪の各本社で、演劇を中心に文化ニュース、批評などを担当。演劇担当の編集委員、文化・メディア担当の論説委員も。武蔵野美術大学・日本大学非常勤講師。共著に『蜷川幸雄の仕事』(新潮社)。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
府中市美術館「ふつうの系譜」展から
気持ちがふさぎがちな今、ぜひ見てほしい「きれいな絵」シリーズの2回目です。府中市美術館「ふつうの系譜」展(5月10日まで、現在閉館中)から、名品をご紹介します。〈 〉内は学芸員、金子信久さんに聞いた解説です。(1回目はこちら)
今回のおすすめは、この土佐光孚(とさ・みつざね、1780~1852)の屛風ですか?
なんだか特に「ふつう度」が高いような気がしますが……。
〈金地に花をあしらった屛風です。平凡だと思われるかもしれませんが、展覧会では3月14日の開幕時から人気を集めていました。二つ1組で、合わせると幅6メートル以上になります。その大きさ、金の華やかさ、描かれた植物の美しさが目を引き、会場で特別な存在感を放っています。
宮廷おかかえの絵師として、典雅な「やまと絵」を描いてきた「土佐派」の作品です。「飾ってきれい」を作るのがお仕事の土佐派らしさがよく出ています。保存状態もとても良いです〉
神社やお寺の天井などに花が描かれているのは、見たことがあります。
〈よくある画題ですが、この屛風では、様々な種類の花が一つひとつ、とてもリアルに、精緻に描かれているのが特徴です。植物を円形にしたデザインには、フランスのアールヌーボーのようで、近代に通じるセンスも感じますね〉