勝部元気(かつべ・げんき) コラムニスト・社会起業家
1983年、東京都生まれ。民間企業の経営企画部門や経理財務部門等で部門トップを歴任した後に現職。現代の新しい社会問題を「言語化」することを得意とし、ジェンダー、働き方、少子非婚化、教育、ネット心理等の分野を主に扱う。著書に『恋愛氷河期』(扶桑社)。株式会社リプロエージェント代表取締役、市民団体パリテコミュニティーズ代表理事。所有する資格数は71個。公式サイトはこちら
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
あえて外出自粛しない「フリーライダー=タダ乗り」の論理
前回の記事「彼らは新型コロナ緊急事態宣言下でもなぜ自粛をしないのか」では、出勤等で外出抑制ができない人に加えて、自粛をせずにあえて外出する人も、政府の体たらくに原因があるという話をしました。自粛をしない人もある種の合理的な選択をしており、それゆえ単なる自粛要請では止めることができないのです。
さらに今回問題にしたいのは、外出自粛をしない彼らの多くが「フリーライダー=コストを支払わず制度の恩恵をタダで受けている人」であるという点です。彼らには「行動制限を徹底することで被る損失」がありません。にもかかわらず、自分や家族が感染しない限り、他の人たちの行動制限によって生まれる一定の感染抑止という恩恵(利益)に十分あずかっています。
そういう意識や、自分だけ抜け駆けしようという明確な“悪意”があるか否かは別として、実際に他人の生み出した利益にタダ乗りしていることは間違いありません。
つまり、彼らフリーライダーは、「規律を守る人や同調圧力に弱い人には行動制限を徹底して、感染拡大防止に努めてもらった上で、自分は本格的に危機が来るまで外出を続ける」という、ある種最も合理的な戦略を取っているのです。
ですが、彼らを放置すると、家に籠もっている人から、「自粛している自分たちはバカみたいじゃないか! もうやってらんないよ!」と、行動制限の放棄が続出する可能性もあります。既に「自粛したほうがいいに決まっているけれど、ほかの人が出歩いているうちは自分だけ自粛しても損をするだけだ」と感じている人もいるでしょう。逆に、この鬱憤が原因となり、衝突や暴力沙汰が起こる可能性も十分あるはずです。