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新型コロナ対策で役所から私に届いたクレジットカード

韓国の緊急災難政策はまあまあ理にかなっている

ミン・ヨンチ ミュージシャン 韓国伝統音楽家

 はや4月も半ば。新型コロナの影響で、韓国でも公演は全て中止や延期……えらい事である。

 大学の講義はというと、オンラインで授業したり、SNSを使って動画配信したり出席をとったりしている。

 小学生になるうちの子たちも、平日はオンラインで授業している。

 韓国ではコロナによる自粛生活が2月から始まっているから、まる2か月、主に家の中。

 なんかこんな生活にも、慣れて来たせいか、友達とは「これからは学校に必ず行かないといけない、という概念が変わるかもね」と、言い合ったりしている。

 私の住んでいる地域は、ソウルのすぐ隣の都市、イルサンという新都市。

 こちらでは、新型コロナによる緊急災難支援金の配布が今月初めから始まった。国家からの支援は5月らしいが、京畿道と市から別々に支給してもらった。

 京畿道からの支援金は、一人当たり10万ウォン(約8850円)が僕のクレジットカードに、市からの支援金は一人当たり5万ウォン(4450円)をクレジットカードにして配られた。

市から届いた5万ウォンカード

 そのカード、なんと住んでいる道や市内の一部の大型スーパー、デパート、チェーン店では使えず、それ以外の小型商店や食堂でのみ決済できるシステム。

 日本と違い、スピードで決めていく韓国の緊急災難政策にしては、まあまあ、理にかなっているやり方である。

 勿論まだまだ、改善の余地はある。例えば、うちの妻は在韓日本人なので、この支援金は出ない。一緒の税金を払っているのだから、フェアではない。

 けど、今までの行政の動きを見ていると、後々改善されるだろうと思ってもいる。やはり、マイノリティーはこういう時に、必ず後回しにされるので、少し時間がかかるのだ。

ダボス会議で韓国伝統音楽監督を務めた時のこと

 もっとこの事態が長く続くのだろうか、普段の平凡であった生活が少しずつ懐かしくなってきた今日この頃でもある。

 時間に余裕ができたので、Netflixでドラマを見た。

 アメリカのドラマ、“サバイバー宿命の大統領”。

 あの一時期流行ったアメリカのドラマ“24”のジャック・バウアー役、キーファー・サザーランドが主演で、スタッフも一緒であろう。

 こんな言い方は良いか分からないが、“24”の主人公ジャック・バウアーが、今度は大統領になって、国家の危機を救っていくって感じのモノ。個人的に“24”ファンであった私には、たいへん面白かった作品である。

 大阪・西成で生まれ育った、単なる在日凡民にすぎない私が、韓国伝統音楽を勉強し、職にしたおかげで、一般の方にはできない、大変貴重な経験ができているなあ、とそれは有難く感じている。

 その中でも特に、10年前くらいかなあ……イ・ミョンバク大統領の時に、スイスで行われる、世界経済フォーラム「ダボス会議」の、コリアン・デーの韓国伝統音楽監督を担当した。

 大統領行事。いわば国家で最高の行事である。

 それは出演者及びスタッフ全員の身元調査から始まる。過去に刑事事件の前科があったものは、参加できない。

higyou/shutterstock.com

 調査の結果、ミュージシャンの中の2人が引っかかって不参加に……若い時に喧嘩とか……。

 出発前の国内リハも厳しく、テクニカルやタイム的なことはもちろん、もう嫌というほど何回もリハをした。

 最後のリハにはシークレットサービスが来て確認もしていった。

 移動の飛行機は、すべてビジネスクラスで、現地に着いたら、ホテルのカギと携帯とレンタカーのカギを渡された。

 ミュージシャンには無いなかなかのVIP待遇!!

 さて本番、私たちは全員耳にイヤー・モニター(無線のイヤホン、TVでよく歌手が耳に音楽聞くために付けてるやつ)を付けていた。そこには音楽ももちろん聞こえるのだが、シークレットサービスの声も聞こえるようになっていた。

 非常時用のシステムだ。そしてあらかじめ、シークレットサービスの一人に大統領が何時に、会場に入るのか確認し、コリアン・デーのオープニング演奏がスタート。演奏しながらも、大統領の動向が耳から入ってきて、登場を待つ。

 「大統領が、今、部屋を出た」
 「大統領がエレベーターに乗った」

 そんな声が聞こえる。緊張は高まる。

 けど、おかしい、もともとの登場時間より少し遅れている。音楽も、そういう非常時用に準備していたように、長めに演奏。そして少ししたら、

 「大統領、入場」

 という声が聞こえて、めでたく登場完了! 音楽もきっちりそこに合わす!

 その後、パーティーもうまくいって、行事は無事終了。

 後でシークレットサービスに聞いたら、大統領の到着時間の誤差はよくあって、ワザとしていると。事故、事件防止だと。なるほど!!

 とにかく、当時、何週間かはこの行事に気を使い、疲れ果てたのを覚えている。

 パーティーの打ち上げで、大統領秘書から、「帰りは大統領専用機乗っていくか?」とお誘いを受けたが、「いいえ、結構です……」とお断りした。

 せめて移動くらい、ゆっくりしたかったから。

ダボスの街並み(筆者撮影)

「国のため」より「人類のため」

 アメリカのドラマは優秀である。制作費や歴史があるもんね。文化面でも。人種や性的差別問題などの描写は、随分先を行ってる。

 ただ、ほとんどのアメリカドラマがそうだが、最後は必ずアメリカが正義。

 決め台詞は、「国のため」だと。

 これが残念……。

 愛国者の反対は、嫌「外国」かも。

 ハリウッドの皆さん!! これからの決め台詞は、「人類のため!」とか、「地球人のため!」で、よろしく!!