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新型コロナで外出制限1カ月のパリ、中間報告――新しい“飲み”文化も

林瑞絵 フリーライター、映画ジャーナリスト

光が見えないトンネルの中で

 フランスでは3月17日正午より全国民の自宅待機措置が始まったが、早いもので1カ月を超えた。4月13日にはマクロン大統領が国民向けの演説を行い、5月11日までの自宅待機措置延長を発表。この日からは段階的に学校が再開されるとしたが、仏医師連盟代表は「無用な感染リスクを引き起こす」と呼びかけるなど、疑問の声も根強い。

 日常に戻れるのはいつの日になるかわからぬままであり、光が見えぬトンネルの中にいる気分の国民も多いだろう。この奇妙な軟禁生活の現状を、市民目線で中間報告したい。

 まず、基本的に1日に最大一度「必要な外出」しかできないのは、当初から変わらない。つまり、テレワークできない通勤、食料買い出し、ジョギングなどの運動、受診などの健康上の理由、子どもをあずけるといった家族の事情、介護などが必要な外出である。

 最近では、「行政または司法当局からの召喚」や「社会貢献活動への参加」といった項目も追加された。運動は「自宅から1キロ以内で一人」だが、散歩なら同居人と一緒に歩いてもよい。犬の散歩は必要な外出とされるが、ウサギに紐をつけて散歩した人はしっかり罰金刑をくらっていた。

 外出時は「例外的外出証明書」を必ず持参する。当初は指定の用紙をプリントアウト(または手書きもOK)して携帯しないといけなかったが、4月6日からはスマホ対応版もできた。だが、このエコの時代に3週間も国民に紙を大量消費させていたわけで、デジタル化の対応の遅さは残念であった。

 持病を持つ人やハンディキャップを持つ人、高齢者らは何日も全く家から出られない人も多い。そのような感染リスクが高い人々には、同じアパートの住民が買い物をして届ける動きも活発になった。手伝いをしたい人は直接声をかけるほか、「お手伝いします」という言葉と電話番号をアパートの共有部分に貼るケースが目立つ。

感染リスクが高い高齢者などのため、住民が「お手伝いします」とメモを残し、買い物などをする活動が広がる。ウエスト・フランス紙サイトより拡大感染リスクが高い高齢者などのため、住民が「お手伝いします」とメモを残し、買い物などをする活動が広がる=ウエスト・フランス紙のサイトより

 政府も3月23日より、自宅待機措置下で求められるボランティア活動を促すサイトをオープン。ボランティア志願者と、人手を探す非営利団体とを結びつけるプラットフォームである。ここで扱うサービスは、「貧困者への必要最低限の食料や衛生用品の配達」「医療関係者などの子どものあずかり」「一人暮らしの高齢者や病人、ハンディキャップを持つ人とのコミュニケーション(電話やビデオ通話、メール)」「弱者のための買い出し」「インターネットを使った家庭教師」だ。

 筆者はパリ南部の住宅街に住んでいるが、だいたい夕方頃に買い物か散歩で外に出る。この時間帯はかなりの人が路上にいることが多く、一見、いつもとあまり変わらぬ風景にも見える。だが、フランス人でも当たり前のようにマスクをするようになったのは、以前と全く違う。それに、たまに通るバスは乗客がいない“幽霊バス”(バスは細々と運行しているが、遠出する人は少ないため)なので、やはり非日常だと思わされる。

 近所のカフェ・レストランは、自宅待機措置後すぐにテイクアウトのピザ屋に変わり、かえって繁盛している。すぐに仕事内容を切り替え生きていく姿には逞しさを感じた。

もとは軽食を食べられるカフェだが、テイクアウトのピザ屋に変わり、繁盛している=撮影・筆者拡大もとは軽食を食べられるカフェだったが、テイクアウトのピザ屋に変わり、繁盛している=撮影・筆者

 入場に人数制限を設けるスーパーや食料品店の前には、長い行列が伸びていることが多い。だが、急ぎの用事がないからか、みな1メートル以上の間隔を開けておとなしく並んでいる。スーパーの入り口には消毒ジェルが置いてある。店によっては店員が直接、手にジェルをかけてくれることもある。

スーパーの入り口には消毒ジェルが置いてある拡大スーパーの入り口には消毒ジェルが置いてある=撮影・筆者

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筆者

林瑞絵

林瑞絵(はやし・みずえ) フリーライター、映画ジャーナリスト

フリーライター、映画ジャーナリスト。1972年、札幌市生まれ。大学卒業後、映画宣伝業を経て渡仏。現在はパリに在住し、映画、子育て、旅行、フランスの文化・社会一般について執筆する。著書に『フランス映画どこへ行く――ヌーヴェル・ヴァーグから遠く離れて』(花伝社/「キネマ旬報映画本大賞2011」で第7位)、『パリの子育て・親育て』(花伝社)がある。

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