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新型コロナ対策で“成功”している指導者に女性が多いのはなぜだろう

多様性が社会を強くすることが改めて証明された

勝部元気 コラムニスト・社会起業家

・台湾の蔡英文総統
・ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相
・ドイツのアンゲラ・メルケル首相

 気が付けば、現時点での新型コロナウイルス感染症対策で、卓越した「結果」を出し、世界各国から称賛されている指導者は、女性比率がかなり高いように感じます(※ここでの結果・成功とは、早期に感染拡大局面を脱したこと)。

 台湾の快挙は早くから日本でも報じられていますが、死者数のいない段階から厳格なロックダウン(都市封鎖)を実施したニュージーランドの評価も、国際社会でうなぎ登りです。ドイツも感染者数は上位に入るものの、近隣諸国で医療崩壊が相次いでいる中で必死に食い止め、死亡率の低さが際立っています。

 また、女性が指導者を務める北欧諸国のフィンランド、ノルウェー、デンマーク、アイスランドでも、4月21日現在、封じ込めに一定の成果が出ています。

コロナ対策の「優等生」であるニュージーランドのアーダーン首相(左)と安倍首相の違いとは?コロナ対策の「優等生」であるニュージーランドのアーダーン首相(左)と安倍首相の違いとは?

なぜ称賛される指導者に女性が多いのか?

 確かに、韓国の文在寅大統領のように、結果を出している男性指導者もいるため、安易に「男性指導者が失敗した」と決めつけてはいけません。ですが、世界の指導者全体に占める女性の割合が依然として約7%と低いにもかかわらず、コロナ対策の成功比率の高さには目を見張るものがあります。

 もちろん、彼女たちが指導者として非常に優れた能力を備えていたことに、何ら疑いはありません。ですが、「女性偏在」というこの現象は、個々人がただ優秀であること以外にも、何か別の要因があるのではないでしょうか?

 コロナ対策の真っ只中であるため、その要因を分析した先行研究はまだありません。あくまで憶測の域から脱しませんが、私なりにいくつかの要因をピックアップしたいと思います。

男女不平等だから有能な女性指導者が輩出される?

 まず、有能な女性指導者が輩出される条件として、実力主義の文化が根付いていることがあげられるでしょう。実力よりも性差で決まる男性優位社会をある程度克服していなければ、優秀な女性指導者は育ちません。

 その一方で、完全なるジェンダー平等を達成している国は、この地球上にまだ存在していません。ジェンダー・ギャップ指数121位(2019年)の日本ほどではないにせよ、ほぼ全ての国で、女性のキャリアを阻む「ガラスの天井」は根強く残っています。

 たとえば、男性の人事部や上司が、人事評価の際、男性社員の欠点以上に女性のそれに無意識に注目する内集団バイアス(内輪びいき)はその代表例でしょう。男女を公正に扱っているつもりでも、成長機会のあるチャレンジングな仕事を無意識のうちに男性部下に多く振っているというアンコンシャス・バイアスもあります。

 その結果、女性は男性よりも、さらに努力を重ねて、優秀でなければ指導者になれないという構造があります。つまり、女性のほうが要求される水準が高くなるため、結果的に指導者に就いた女性は男性よりも一回り優秀である可能性が高くなると考えられるわけです。

 これらの説は既に多くの論者によって指摘されています。ただし、それだけでは、有能な女性指導者が輩出される理由にはなっても、「なぜ多くの男性指導者が新型コロナの早期鎮圧に失敗したか」の理由にはなりません。私たちが注目するべきは女性側ではなく、実は男性側ではないでしょうか?

新型コロナウイルスの感染拡大を制御した台湾の蔡英文総統の手腕は世界的に注目されている新型コロナウイルスの感染拡大を制御した台湾の蔡英文総統。その手腕は世界的に注目されている

男性指導者には能力の低い人が混じりやすい?

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