ドラマが起きるのを待っていては仕事になりません。だから、私たちはドラマを作ります
2020年04月26日
まずは、自己紹介から。
私は、作家、編集者、コピーライター、クリエイティブディレクターなど、いろんな肩書きでいろんな制作現場に行って、ポスターを作ったり、パンフレットを作ったり、カタログを作ったり、本を作ったりしています。現在は「4コマ作家」という珍しい肩書きで、「ツァラトゥストラの編集会議」という4コママンガの仕事もやっています。
これは、「東西の古典、名著を4コママンガで紹介する」というもので、朝日新聞社の書評サイト『好書好日』で連載しています。2018年6月から週2本ずつ更新していて、このまま行けば5月末で200本になります。
「4コママンガを仕事にしている」といっても、絵は描いていません。絵を描いているのは斉田直世さん。イラストレータ、エッセイストとしても活躍している人です。では、私は何をしているかというと、「原作」を担当しています。ストーリーを作って、コマ割をして、台詞を入れて、ということをしています。「マンガの原作者」としては『あしたのジョー』『巨人の星』の梶原一騎先生が有名ですが、「4コママンガ」にも原作者はいるのです。
さて、斉田さんとは10年以上、一緒に仕事をしています。「ツァラトゥストラの編集会議」の前は、「ツァラトゥストラの社訓」という4コママンガを共同通信社のニュースサイトで連載していました。こちらは「古今東西の名言、格言を4コママンガで紹介する」というもので、500回以上続きました。
この連載を抱えていたとき、私の机の上は名言集、格言集、映画やアニメの台詞集などでいっぱいでした。そして、毎日、名言集をパラパラとめくりながら、次はどの名言をやろうかと悩んでいました。そんなある日、いつものように名言集をパラパラとめくっていると、次の一文が目に飛び込んできました。
神様が人間を創ったのは、面白いドラマが観たかったからだ。
これは、五千年前だか六千年前だかに活躍したユダヤの預言者が残したものです。おそらくこの預言者は、悲劇、喜劇を繰り返す人々を観て、なんで神様はこんなものを作ったのだろう、と思ったのでしょう。そして、人々の繰り広げるドラマを観ているうちに、なかなか面白いじゃないかと思うようになり、神の意図に気が付いた、というところかと思います。
ユダヤの預言者のこの言葉を知って、私はこう思いました。ユダヤの預言者の言うことが本当かどうかはわからない。が、もし、本当なら、人間は神の子孫だ、と。なぜ、そう思ったかというと、この頃、「ツァラトゥストラの社訓」を観た人から、しょっちゅうこう言われていたからです。
「今回の4コマはドラマがあって面白かった」
「おまえはドラマ作りが上手い」
「次もドラマのあるやつを頼む」
古代のユダヤの預言者は「神様が人間を創ったのは、面白いドラマが観たかったからだ」と言いましたが、ドラマが好きなのは神様だけではありません。人間もドラマが大好きなのです。
本当に人間はドラマが好きですね。新聞のテレビ欄を見ると明らかです。朝ドラ、昼ドラ、大河ドラマと数え上げたらきりがない。月曜日の朝から日曜日の夜まで、いつもドラマを見ている。
人間のドラマ好きはテレビ欄だけでなく、政治面にも及んでいます。「政策よりも政局の方が読者は喜ぶ」と言いますが、読者が政局にひかれるのは、そこにドラマがあるからでしょう。
そんなわけで、私は毎日、ドラマを作っています。「面白い!」と言われたい一心で。それで、かれこれ4コママンガだけでも1000本以上のドラマを作ってきました。
というと、「そんなバカな」と思われる方もいると思います。ドラマなんて、そう転がっているものではないからです。たしかにそうです。運命的な出会い、悲劇的な別れ、奇跡の大逆転などというドラマは、めったにお目にかかれるものではありません。
じゃあ、どうやって1000本もドラマを作っているのか。
実は
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