井上威朗(いのうえ・たけお) 編集者
1971年生まれ。講談社で漫画雑誌、Web雑誌、選書、ノンフィクション書籍などの編集を経て、現在は科学書を担当。
※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです
開幕が遅れたからできた精緻なデータ分析
「カープおじさん」編集者の井上と申します。
2020年3月、球春が到来……しませんでした。抽選に当たって確保できたなけなしの広島カープ戦チケットも次々と無効になり、日々ナイター開始時刻の18時が近づくと涙に暮れる、そんな昨今です。
本サイトで続けている「球場で著者とお酒を飲みながら野球と本の話をする」企画も、あえなく中断となりました。
ならば代わりにどうするか。開幕が延びたからこそできる野球の楽しみ方を、プロフェッショナルに教えていただけばいいのでは――。
ということで厚かましくも、野球を統計学の視点から解析する「セイバーメトリクス」の日本における第一人者、江戸川大学客員教授の鳥越規央先生にインタビューをお願いしました。
開幕が遅れたおかげで精緻さが増したデータによって可能になった「2020年プロ野球最新予測」をぜひ楽しんでいただければ幸いです。
――先生、春が来たのにプロ野球がありません。正直、カープうんぬんよりも生きる支えを失ってしまった状況になってしまっています。そんな私はいったい何を楽しみに生きていけばいいんでしょうか。
鳥越 こんなときこそ、セイバーメトリクスです。
――ええっ? データで野球を楽しめる、ということですか?
鳥越 そうです。2019年シーズンの結果をセイバーメトリクスで精査することで、各チーム、どのポジションが強くて、どこが弱かったかということは分析できています。
そして、あいにく大半が無観客試合でしたが、オープン戦を通じて今シーズンにあたっての各チームの戦力も、セイバーメトリクスで分析することができました。
この分析結果を比較することで、2020年シーズンにあたって各チームは戦力の効果的な補強ができたか、層を厚くすることができたのか、ということが検証できるのです。
――もう今年の春の分析も終わっているのですね。すごい!
鳥越 (パソコンの画面を開きながら)はい。昨年(2019年)『読売巨人軍 優勝の条件――今年の原・巨人を楽しむ統計学』(ゴマブックス)という本を出しました。この本ではタイトルこそ読売ジャイアンツに限定しているようですが、実は全12球団について、セイバーメトリクスで分析した「優勝の条件」を研究しています。同様の手法で、各球団のポジションごとの戦力について数値化した、未公開データがあります。
この資料から、各ポジションの打撃力(投手は運や守備に左右されない能力)が平均と比べてプラスかマイナスを私が指標化したうえで、2020年シーズンの予測をしてみようと思うのですが、どうでしょう?
――おお、これは嬉しいです! 雑誌のあおり風にいうと「未公開ポジション別データでわかった『プロ野球最新順位予測』!」みたいな感じですね。ストーブリーグが長くなってよかったと逆に考えられそうで楽しみです。
鳥越 そうですね。では私の予想順位の高いほうから順番に、戦力分析と予想オーダーを紹介してまいりましょう。
――ありがとうございます! カープがいきなり登場したらいいなあ。
鳥越 いえ、ではまずパ・リーグから始めます。
――はーい。12球団しっかりとうかがえるので、それはそれで感謝でございます。
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