開幕が遅れたからできた精緻なデータ分析
2020年04月24日
「カープおじさん」編集者の井上と申します。
2020年3月、球春が到来……しませんでした。抽選に当たって確保できたなけなしの広島カープ戦チケットも次々と無効になり、日々ナイター開始時刻の18時が近づくと涙に暮れる、そんな昨今です。
本サイトで続けている「球場で著者とお酒を飲みながら野球と本の話をする」企画も、あえなく中断となりました。
ならば代わりにどうするか。開幕が延びたからこそできる野球の楽しみ方を、プロフェッショナルに教えていただけばいいのでは――。
ということで厚かましくも、野球を統計学の視点から解析する「セイバーメトリクス」の日本における第一人者、江戸川大学客員教授の鳥越規央先生にインタビューをお願いしました。
開幕が遅れたおかげで精緻さが増したデータによって可能になった「2020年プロ野球最新予測」をぜひ楽しんでいただければ幸いです。
――先生、春が来たのにプロ野球がありません。正直、カープうんぬんよりも生きる支えを失ってしまった状況になってしまっています。そんな私はいったい何を楽しみに生きていけばいいんでしょうか。
鳥越 こんなときこそ、セイバーメトリクスです。
――ええっ? データで野球を楽しめる、ということですか?
鳥越 そうです。2019年シーズンの結果をセイバーメトリクスで精査することで、各チーム、どのポジションが強くて、どこが弱かったかということは分析できています。
そして、あいにく大半が無観客試合でしたが、オープン戦を通じて今シーズンにあたっての各チームの戦力も、セイバーメトリクスで分析することができました。
この分析結果を比較することで、2020年シーズンにあたって各チームは戦力の効果的な補強ができたか、層を厚くすることができたのか、ということが検証できるのです。
――もう今年の春の分析も終わっているのですね。すごい!
鳥越 (パソコンの画面を開きながら)はい。昨年(2019年)『読売巨人軍 優勝の条件――今年の原・巨人を楽しむ統計学』(ゴマブックス)という本を出しました。この本ではタイトルこそ読売ジャイアンツに限定しているようですが、実は全12球団について、セイバーメトリクスで分析した「優勝の条件」を研究しています。同様の手法で、各球団のポジションごとの戦力について数値化した、未公開データがあります。
この資料から、各ポジションの打撃力(投手は運や守備に左右されない能力)が平均と比べてプラスかマイナスを私が指標化したうえで、2020年シーズンの予測をしてみようと思うのですが、どうでしょう?
――おお、これは嬉しいです! 雑誌のあおり風にいうと「未公開ポジション別データでわかった『プロ野球最新順位予測』!」みたいな感じですね。ストーブリーグが長くなってよかったと逆に考えられそうで楽しみです。
鳥越 そうですね。では私の予想順位の高いほうから順番に、戦力分析と予想オーダーを紹介してまいりましょう。
――ありがとうございます! カープがいきなり登場したらいいなあ。
鳥越 いえ、ではまずパ・リーグから始めます。
――はーい。12球団しっかりとうかがえるので、それはそれで感謝でございます。
鳥越 ではまず、パ・リーグの1位予想は、東北楽天ゴールデンイーグルスです。
――そうなんですか! ホークスではないのですね。たしかにデータを拝見すると、先発投手陣の上積みが大きいようです。
鳥越 はい。指標的に期待できる先発投手が、則本昂大、岸孝之、松井裕樹、涌井秀章、辛島航、石橋良太、弓削隼人。7人も先発がいるっていうのは大きいですよね。もともと強かった中継ぎは、アメリカから牧田和久も補強している。昨年まで抑えをやっていた松井が先発に回っているのですが、代わりに後ろに回った森原康平がまたいいんです。
――たしかに、昨シーズン、各球団とも森原を全然打てなかった印象があります。
鳥越 さらに新外国人投手のシャギワも、いい指標です。昨年活躍したブセニッツも元気です。
――先発がカッチカチなものだから、補強のリソースをリリーフに突っ込めるんですね。
鳥越 そうなんですよ。
――ハーマンがロッテに移籍し、岸の出遅れが報じられていますが、投手陣は大丈夫だ、と。
鳥越 はい、とにかく厚くなりました。そして、実は去年もけっこう打撃陣は大きなプラスだった。
――データ上はセンターと捕手以外が平均を上回る攻撃力です。
鳥越 サードにロッテから鈴木大地を補強したことで、大きなプラスになりました。そして実は、DHの層がとても厚くなった。ウィーラー、ブラッシュに加え、オリックスからロメロが移籍。セカンドの浅村栄斗も腰に不安があるので入ってくる可能性がある。
――内野にはドラフトで即戦力を補強しました。
鳥越 ドラフト2位の黒川史陽は浅村の代わりにセカンドを守れる。そして茂木栄五郎が出遅れているショートは、ドラフト1位の小深田大翔がこなせそうです。
――ドラフト指名時にはどうなんだろう、という声もありましたが。
鳥越 いえ、データを見ると小深田は三振率が低いので、かなりいけそうです。
――ならば捕手の嶋基宏がスワローズへ移籍した穴はどうなりますか。
鳥越 2年目捕手の太田光が成長して、メドがたちました。現時点での指標ではプラスになっています。
――なるほど、弱点がないですね。
鳥越 だから予想オーダーを見ていても穴がない。期待できそうです。たとえば1番センター辰巳涼介もいい。田中和基が戻ってくれば、辰巳と田中のツープラトンでいけます。茂木も戻ってくれば、さらに攻撃力が上積みされる。
――そうかあ。いろいろと言われる石井一久GMですが、現時点では結果を出しつつあるといえそうですね。あっ、外野の控えに元カープの下水流昂があがっている。嬉しいなあ。
鳥越 (流して)2位にあげるのは福岡ソフトバンクホークスです。
――で、ではどんどん行きましょうね。ホークスの評価がちょっと下がるのはなぜなんでしょうか?
鳥越 やはり投手陣がイーグルスに比べると、ちょっと薄いかなって感じがしますね。
――名前でいえば、すごいのがそろってますよ。
鳥越 ですけども、負傷者が続出したこともあり、現時点ではまだ本領を発揮していないですね。サファテも往年のストレートを投げられていない。抑えには森唯斗がいますけれど。
――なるほど、11月の「プレミア12」優勝に日本代表で貢献した投手たち、千賀滉大に高橋礼、そして甲斐野央が出遅れているのがやはり大きい?
鳥越 そうなんですよ。ですが、こういった戦力を欠いたままで、オープン戦ではライオンズに次いで2位になった。逆に言うと、この人たちが帰ってくればどれだけの戦力になるんだっていうことなので。
――野手も同じ事情がありそうですね。
鳥越 ええ、2018年までセンターは柳田悠岐で大きなプラスでした。昨年前半はこのアドバンテージがなくて優勝を逃しましたが、後半帰ってきたことによってクライマックスシリーズ、日本シリーズを勝ち上がることができました。
――予想オーダーでは1番セカンドに牧原大成を置き、中軸にスワローズから移籍してきたバレンティンが入る。
鳥越 このバレンティン、オープン戦のOPS(出塁率+長打率)が1.2を超えています。これは本塁打60本を打った2013年シーズン以来となる、ものすごい数字です。で、これから出遅れているグラシアルもデスパイネも戦列に復帰すれば……。
――こうなると、やはり出遅れている上林誠知が戻ってきても入る場所がない。
鳥越 はい。やっぱりここは層が厚いなっていう。
――柳田の代わりに、ドラフト1位ルーキーの佐藤直樹を予想オーダーに入れていますね。
鳥越 オープン戦での起用を見ると、工藤公康監督がけっこう買っているようなので。OPSも1を超えていますし、柳田が戻ってくるまで使うんじゃないかなっていう感じですね。若手ではもう1人、栗原陵矢の指標がいい。やはり監督に買われているようです。捕手登録ですが、いろいろなポジションを守れるので、ユーティリティプレーヤーとしても重宝されそうですね。
――故障者がいても若手が伸びて、戦力的な厚みは圧倒的、ということですね。
鳥越 そういうことです。そして次、3位予想は北海道日本ハムファイターズ。この球団はもう何年もピッチャーを中心とした編成をしてきましたし、今年もここまで投手陣は数字を残しています。
――大きく出遅れそうな投手も上沢直之くらいですね。
鳥越 ええ。ブルペン陣も安定しているので、投手力は問題ないと見ます。ただ、懸念すべきは攻撃力です。昨年は西川遥輝と大田泰示が引っぱったものの、ほかの野手がマイナスの指標でした。中田翔が不調だったこともあり、長打力不足で得点力が下がったというのが5位に沈んだ原因でした。
――ですが今年の指標を見ると改善しています。
鳥越 はい。中田は元気ですし横尾俊建も戻ってきた。加えて、昨年までマイナスであった捕手に、ジャイアンツからシーズン途中に加入した宇佐美真吾が定着し、指標を大きくプラスにしている。
――逆に今年は、予想オーダーで1、2番にあげた西川と大田の調子が今ひとつのようですが。
鳥越 ところが、栗山英樹監督は上位打線に出塁率が高い選手を固めるのが、とても上手なのです。外野の予想オーダーに、日本野球に慣れてきた「台湾の至宝」王柏融を入れましたが、彼は今年、数字を伸ばしてくるでしょう。仮にシーズンに入っても大田の状態が上がらなかったら、この王や近藤健介といった選手をDHと併用しながら組み込み、うまく出塁率の高い上位打線を組み上げてくるでしょうね。
――なるほど、これで投手陣がしっかりしているのだから、大崩れしない戦い方ができそうですね。ではどこに弱点があるのですか。
鳥越 データ上でははっきりしています。2019年からマリーンズに移籍した、サードのレアードの穴がいまだに埋まっていないのですよ。
――昨季ジャイアンツにいたビヤヌエバを補強していますが。
鳥越 指標を見る限りでは、まだ穴を埋め切れてないですね。レアードの穴に2年間も苦しむシーズンになるのではないか、と見えるので、3位止まりにしたわけです。
――では続いて4位。シーズン2連覇の埼玉西武ライオンズがここに入るんですか?
鳥越 やっぱり秋山翔吾の抜けた穴が埋まらないのですよ。昨シーズン、浅村が抜けた穴はちゃんと外崎修汰が埋めているんですけれどね。
――本当だ。見せていただいている指標では、外崎も2年前の浅村に匹敵するくらいですね。
鳥越 ところが秋山の代わりのセンターになる金子侑司は、守備はいいのですけれど攻撃面ではやっぱり……。
――秋山はそれだけ圧倒的だったということですね。3年連続で最多安打のタイトルだものなあ。
鳥越 5年間ずっと1番センターを守り続けるというのもすごいことです。指標を見ても、明らかに傑出していましたね。川越誠司や佐藤龍世といった若手野手に期待したいところですが、まだ数字的には厳しいようです。
――外野陣に不安あり、ということですね。まあ内野陣は「山賊打線」健在でしょうから、ここで話さなくてもいいでしょうね。
鳥越 捕手の森友哉もあわせ、内野は盤石でしょう。ですが先ほど申したとおり、外野陣に加えてDHに不安が残ります。栗山巧やメヒアでは他球団と比較してもちょっと弱い。新外国人のスパンジェンバーグも、山賊打線に入るにはまだ線が細い感じですね。
――一方、指標では、弱点だとされてきた投手陣がずいぶんよくなっているようですね。
鳥越 はい。今年に入って、先発陣もリリーフ陣も平均を超えてきています。セイバーメトリクス的には、特にニールに期待できるところです。
――11連勝した投手ですね。どこが評価できるのですか。
鳥越 三振は取れないんですけど、ゴロ率が高いんですよ。そうなると、守備指標的に傑出している源田壮亮がショートにいると、きわめてよく機能するのです。ニール自身も、「源田のところに打たせればいいんだ」とコメントしているんですよ。
――なるほど。リリーフ陣も充実しているようですが、それでも4位予想ということは、それだけ秋山の穴が大きい、というところに話が戻るのですね。
鳥越 打てない分、守備力で何とかカバーしようって感じですかね。
――面白い。ライオンズはこれから「打」のチームから「守」のチームへと変わっていく、と見ているのですね。
鳥越 そうです。金子や木村文紀といった守備力の高い選手を使うことで、守備指標もプラスになっていくでしょう。あのライオンズが「守り勝つ野球」をするようになっていくのです。
――でも予想オーダーでは、山賊打線がどっかりと座る。1番金子、2番源田、3番森、4番山川穂高、5番外崎で6番に中村剛也を置ける。これはやっぱりすごいラインナップだなあ。
鳥越 ええ、やはり強力な中軸が機能し、さらに「守り勝つ」ことができれば、投手陣がよくなったこともありますし、浮上する可能性はあります。さらにオープン戦では山野辺翔のような若手がバックアップできる力を示しました。
――チームカラーの転換と世代交代が同時に進みつつあるのですね。
鳥越 ライオンズについては育成もうまくいっているようなので、「守り勝つ」チームになった将来の姿も楽しみですね。
――続いて5位予想はオリックス・バファローズ。失礼ながら最下位ではないかと思っていたのですが……。
鳥越 とにかく、山岡泰輔、山本由伸の先発2本柱がもう異常に強いので。2人そろって日本球界を代表するピッチャーと言ってもいいぐらいに成長しましたから、この2人に任せておけば、オリックスは大きな連敗はしないだろうというわけですよ。
――攻撃力は厳しくないですか。
鳥越 正直、昨年は吉田正尚に任せっきりだったところがありました。
――でも超大物外国人選手であるジョーンズが加入した。
鳥越 今年は、ファーストのT-岡田とDHのモヤがプラス指標になっている。これでライトのジョーンズが活躍すれば期待できますよね。さらにサードの中川圭太、セカンドの福田周平も悪くない。オープン戦のデータを見る限り、内野陣は改善しましたね。
――弱点はセンターと捕手ですか。
鳥越 バファローズは何年もセンター不在で苦しんでいます。今年もその状況は続きそうですね。捕手も、若月健矢の打力がちょっと心配で……。
――センターラインの打力が安定しないのは不安要因ですね。
鳥越 だから、頓宮裕真の捕手コンバートなどを試みています。高卒2年目の俊足セカンド、宜保翔を1番で使うかもしれません。そうなると福田とツープラトンでの起用になるでしょうね。
――予想オーダーでは吉田3番、ジョーンズ4番、続いてモヤ、T-岡田と並んでいます。破壊力ありそうですね。
鳥越 これで吉田が敬遠されなくなります。あとは出遅れているロドリゲスが戻ってきたらどこに入れるか。そしてモヤもT-岡田も、左打者でファースト兼DHとポジションが重なる。西村徳文監督がどう起用するか、見どころですね。
――セイバーメトリクス的にはどうすればいいのでしょう。
鳥越 実はもうデータが答えを出しています。T-岡田は左投手に弱いんですが、モヤは強いんです。ドラゴンズ時代のデータもあるので、これはもう明らか。だから、左投手が出てくるときには右打者のジョーンズとロドリゲスに加えてモヤを使えばいいわけです。こうした起用ができるか、シーズンに入ったら注目したいですね。
――なるほど、ジョーンズが機能し、うまく打線を組めたらバファローズはかなりの強力打線になりそうですね。
鳥越 ですがこのチームには大きな穴が残っています。3番手以降の先発投手がまだ決まっていない。
――これはデータ上でも明らかな大弱点ですねえ。ならばジョーンズ次第とはいえ、やはり5位予想になってしまうのも納得です。
鳥越 で、最後は千葉ロッテマリーンズですね。
――おお……。これはイーグルスの逆で、鈴木大地の穴が大きいということでしょうか。
鳥越 はい。昨シーズン、鈴木はファースト、サード、レフトを守りましたが、この指標はいずれもプラスでした。
――ところがいなくなった今年のオープン戦で、これらの指標がみなマイナスに……。
鳥越 ホークスからFAで福田秀平が入って、センターはうまいことはまったんですが……。サードのレアードもどうにかなりそうですが、4番ファーストで期待されていた井上晴哉がいない。オープン戦序盤、打率1割台だったのが、そのまま出場しなくなってしまったんですよ。
――これは心配ですね。二軍戦では出ているようですが、出遅れが懸念されている、と。
鳥越 結局、野手は福田秀平以外の補強がはまっていない上に、若手の底上げもできていない。どうして若手にもっと出番を与えないのかなっていう感じですよね。
――マリーンズはずっとドラフトの目玉選手を獲得しているのに……。
鳥越 ええ。こういうチーム状況だからこそ、藤原恭大、安田尚憲、あるいは平沢大河とか、そういった若手を起用するようにシフトチェンジしてもらいたいのですが。
――最下位予想されたマリーンズ、今年はチーム再建の年として、育成にシフトしてもらったほうがいいかもしれないですね。
鳥越 佐々木朗希なんかも、早いタイミングから一軍で使ってみるというのが1つの手でしょうね。
――おお、千葉マリンスタジアムで佐々木朗希、安田、藤原が見られるかもしれない。そうなったら高校野球ファンはたまらないですね。
鳥越 現状では、予想オーダーも苦しいところです。外野の守備範囲を考えると、角中勝也をDHに置き、マーティンをライトに回すことになりますが、どうしてもセンターの福田に負荷がかかる。彼はフルシーズン出場できる体力があるか未知数なので、なかなか厳しい用兵になってしまいます。
――故障で出遅れている荻野貴司が間に合わないと、かなり大変なところですね。マリーンズは精力的に補強に動いていましたが、あまり実を結んでいないということでしょうか。
鳥越 福田の加入はプラスですし、投手陣に美馬学という柱が加わったのも大きい。ですが負傷者の多さなどが足を引っぱって、現時点では戦力が整っていないという印象です。
――繰り返しになりますが、若手がどうも伸びてきていないですね。
鳥越 そうですね。2016年ドラフト会議で5球団競合から引き当てた佐々木千隼も全然出てこない。そのドラフトで2位に指名した酒居知史もイーグルスへ行ってしまった。
――育成環境に何か不備があるのですか。
鳥越 うーん、やっぱり二軍が浦和にあるのはどうなのか。習志野とかに持ってこれないんだろうかってずっと思っていますけどね。
――ファイターズの鎌ケ谷と取り替えてもらえばいいのに。
鳥越 実は、どうして二軍施設を千葉に作れないのか、前球団社長の山室晋也さんに尋ねたことがあるんですよ。それによれば、球団としては、やっぱり二軍も千葉に持ってきたいという構想はずっと存在していた。ですが用地などの折り合いがつかないまま、いまに至ってしまったようです。
――選手層を厚くするには、二軍施設を一軍の近くに持っていって強化すべきだ、と。
鳥越 筑後に二軍・三軍設備を整備しているホークスを見れば明らかですよね。たとえば、横浜DeNAベイスターズの選手層の厚さは、横須賀に最新式の練習設備ができたっていうのが大きい要因だと思っています。
――自分も横須賀の二軍戦を見に行ったことがありますが、球場もちゃんとしていたし、練習環境は良さそうに思えました。
鳥越 DeNAはいま、横須賀に最新式の測定機械をそろえた練習施設を整備して、細かいデータを蓄積しているようです。たとえば靱帯や肩の可動域だったりとか。さまざまなデータをすべて計測している。
――どうしてそんなことをするんですか。
鳥越 適正な指導をするためですね。たとえば、高校時代に通算本塁打何十本といったところで、みんなプロで長距離バッターになるわけではないでしょう。まず身体の構造を見て、このバッターは長距離バッターに育てられるっていうなら、そのように指導する。逆に手首や足首が硬いのなら、アベレージヒッターに育てようとする。このようなことが実行されているようですね。
――そうなんですか。身体のデータ次第で、フルスイングを許可される選手とそうじゃない選手が出てくるわけですね。
鳥越 特に、足首の硬さが大事なようです。バッティングで「壁」を作れるかどうかに影響すると聞きました。
――なんと……ベイスターズには若い好打者が次々と出てくるなあと思っていたら、そんなことになっているのですね。い、いや、ちょっと待ってください! 何となくセ・リーグの順位予測をはじめる展開になってますけど、この流れでは、1位にあがってくるのはカープではないような。
鳥越 ええ、私がセ・リーグの1位に予測しているのは……。
――こ、後編(セ・リーグ編)に続きます!
プロ野球順位予想 セ・リーグ編――セイバーメトリクスの第一人者に訊く
*セ・リーグ編は4月27日に配信予定です。
*ここで紹介した本は、三省堂書店神保町本店4階で展示・販売しています。
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