井上威朗(いのうえ・たけお) 編集者
1971年生まれ。講談社で漫画雑誌、Web雑誌、選書、ノンフィクション書籍などの編集を経て、現在は科学書を担当。
※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです
開幕が遅れたからできた精緻なデータ分析
――うーん、ぐうの音も出ない。では2位にカー……
鳥越 2位に予測するのは読売ジャイアンツです。
――ですよねー。……鳥越先生が上梓された『読売巨人軍 優勝の条件――今年の原・巨人を楽しむ統計学』(2019年、ゴマブックス)でも、丸佳浩の補強をきわめて高く評価しておられました。実際、同書での予測通りにジャイアンツは優勝したわけですし、今年の高評価も仕方がない気がします。
鳥越 ジャイアンツの弱点は長いこと明確でした。セカンドとセンターです。昨シーズンは丸の補強に成功することで、セカンドは穴のままでしたが大きな戦力アップを果たしました。
――カープファン的には悲しみしかない現実ですが、丸の貢献度は高かったのですね。
鳥越 高いですね。丸の獲得は、原辰徳監督が、坂本勇人、丸、岡本和真という、2、3、4番を組んだことでより効果をあげました。この3人を、3、4、5じゃなくて、2、3、4で並べ、クリーンアップにしたのが成功だったのです。
――日本はクリーンアップが3、4、5番を打ちますが、メジャー式に2、3、4番にした、と。それで何がよかったのですか。
鳥越 データは明確にその戦略の正しさを示しています。ジャイアンツのイニング別合計得点数を見ると、初回の96点が最高。これは2018年より22点も多く、初回得点率はなんと36%です。
――3分の1以上の確率で先制点をあげてしまうかもしれないのか。
鳥越 先制すれば、もちろん有利になりますからね。
――でも今年は、ジャイアンツはオープン戦で負けまくっていたじゃないですか。
鳥越 ええ。でも戦力的にはそんなに劣ってはいません。山口俊がメジャー移籍しましたが、それでも投手陣が充実してるんですよ。
――どういうことですか?
鳥越 このオープン戦で、150km以上出したピッチャーが11人いるんですよ。
――ええー! それはすごい。
鳥越 はい。これは12球団ナンバーワンの数です。それだけ潜在能力が高いピッチャーをそろえた、ということです。球速はどうしても素質にかかわるところがあるので。
――三軍制度を運用していることが功を奏してきたのかもしれないですね。
鳥越 球速といえば、新外国人のビエイラが161kmを出しました。春に161km出せるっていうのは、とんでもないことです。夏だと165kmまでいきますよ。
――それは打てないですよ!
鳥越 ということでリリーフの厚みも増した。もちろん坂本、丸、岡本の2、3、4番は健在だし、セカンドは今年も穴になりそうですが、ファーストの中島宏之が復活したのがそれ以上の上積みになります。あとは捕手をどうするか、くらいでしょうか。私は予想オーダーにフレーミング(捕球技術)がうまく盗塁阻止率が高い小林誠司を入れましたが、大城卓三との併用になるかもしれませんね。
――恐ろしいことに2、3、4番が盤石のようですが、その後ろについてはいかがでしょうか。
鳥越 去年もそうだったんですが、パーラ、中島宏之、亀井善行が第2のクリーンアップ的な感じになってくると、けっこう後ろがちゃんとしてくる。
――遭いましたとも、痛い目に……! ちなみに亀井はオープン戦からだそうですけど、下位に回るんですよね、今年は。
鳥越 そうですね。ただ予想オーダーで1番に入れた吉川尚輝の腰痛が治らなければ、またトップバッターに戻るでしょうね。
――こちらとしては、腰痛次第の痛い目打線となりそうです……。
鳥越 で、その次の3位予想がですね……。
――(来い! カープ来い! せめてAクラスにっ!)……先生のPC画面に阪神タイガースが表示されました……。
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