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疲れた心にきれいな絵を③ 細やかな春景色に憩う

府中市美術館「ふつうの系譜」展から

山口宏子 朝日新聞記者

「起業家」絵師は几帳面?

 原在中とは、どんな人ですか?

 〈実は、まだあまり研究が進んでいない人物なんです。京の酒造家に生まれ、直接指導を受けたかどうかは分かりませんが、応挙に学んだのは確かです。風景画を得意とし、息子や弟子を育てて「原派」を作り、宮中や寺社などの仕事で活躍しました〉

 「起業家」でもあったんですね。

 〈そう、自身の腕がいいだけでなく、スタイルを作り、「派」の経営も考えていた人といえますね〉

 在中からもう一点。これも名所です。伊勢、二見浦の朝の風景です。

拡大原在中『二見浦富士図』(1830年、42.0×69.0センチ、敦賀市立博物館蔵)

 〈二見浦の夫婦岩、その向こうに富士山が見えるという風景は、非常に多く描かれてきました。画面の手前に夫婦岩を大きく描く作品が多いのですが、これは、遠近法的なリアルな描き方にこだわり、まるで写真のようです。そんな「理屈っぽさ」がこの絵の魅力といえそうです。にもかかわらず、画面左上に水平線から顔を出した太陽が赤く小さく描かれ、その光が右斜め下方に線のように伸びています〉

 海面に映る日の出の光は普通、手前に広げて描きますよね。

 〈確かに不自然ですよね。構図のおもしろさを狙ったのかもしれません。ぴしっとした線のような光も、全体に定規をあてて描いたような几帳面さのあるこの絵には、よく合っている気がします〉

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筆者

山口宏子

山口宏子(やまぐち・ひろこ) 朝日新聞記者

1983年朝日新聞社入社。東京、西部(福岡)、大阪の各本社で、演劇を中心に文化ニュース、批評などを担当。演劇担当の編集委員、文化・メディア担当の論説委員も。武蔵野美術大学非常勤講師。共著に『蜷川幸雄の仕事』(新潮社)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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