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【2】誰でも、何でもキャラクターになる

特に決まりはない。それが、創作の世界の唯一の決まりです

中川文人 作家

無生物もキャラになる

 今回はキャラクターの話をします。

 キャラクターという言葉を辞書で調べると、たいてい、次の二つの意味が載っています。

(1)小説や映画、漫画などの登場人物。
(2)性格、人格。

 日常会話の中では、(2)の意味で使われることが多いと思います。「あの人はキャラが立っている」(あの人は性格のはっきりした人だ、あるいは、わかりやすい人だ、の意)とか、「いいキャラしてるね」(何をやっても怒られない、得な性格をしているね、の意)といった具合に。

 が、制作の現場では、たいてい(1)の意味で使われます。たとえば、「この企画はキャラを立てないとダメだ」と言ったら、それは、「この企画は、なんらかの主体を立てないと成立しない」という意味で、「この企画の性格をはっきりさせよう」という意味ではありません。「この殺人鬼、いいキャラだね」と言ったら、「この殺人鬼は登場人物として存在感がある」という意味で、「殺人鬼の性格を称賛している」と思ったら間違いです。

 なぜ、制作の現場では(1)の意味で使われることが多いのか。少し考えてみたのですが、おそらく、「登場人物」という言葉が使えないからでしょう。まったく使えないわけではありませんが、使えないケースが多いというのはたしかです。

 どういうことか、説明しましょう。

 絵1は、私が朝日新聞社の書評サイト『好書好日』で斉田直世さんと連載している「ツァラトゥストラの編集会議」のキャラクター、レギュラーの登場人物です。

拡大絵1 「ツァラトゥストラの編集会議」 作画:斉田直世

 このように、6人の登場人物で連載を回しているのですが、ご覧の通り、そのうちの2人は猫、1人はロボットです。猫もロボットもマンガの中では人間のように振る舞っています。人間よりも猫やロボットの方が「キャラ」(2の意味)が立っています。が、やはり、「人物」ではありません。だから、「登場人物」というと語弊があります。

 絵2と3は、斉田さんが共同通信社で配信中の時事漫画「みんなのギモンにこたえるモン」で描いた「コロナくん」です。見ればわかると思いますが、コロナウイルスを擬人化したものです。

拡大絵2 「コロナ君」作画:斉田直世
拡大絵3 「コロナ君」作画:斉田直世

 このコロナくんも立派なキャラクターです。キャラクターというと「人物」を思い浮かべる人が多いと思いますが、動物もキャラクターになりますし、ロボットもキャラクターになりますし、コロナくんのような無生物のウイルスでもキャラクターになります。古典的なところでいえば、「北風と太陽」の話に出てくる北風のような自然現象も、太陽のような天体もキャラクターになります。

 キャラクターを作るときは、まず、このことを忘れないでください。キャラクターはこうでなければいけない、というルールはありません。なんでもキャラクターになりうるのです。大切なのは柔軟性です。

 ついでに言っておきますと、創作の世界で一番大切なのは柔軟性です。「何でもあり」の精神です。反対に、一番嫌われるのが決めつけです。特にネガティブな決めつけをする人、具体的には、「こんなのありえない」とか、「そんなこと、できるわけがない」というようなことを簡単に口にする人はものすごく嫌われます。

 なぜ、嫌われるかというと、創作に携わっている人間は、「創作の世界には、何々はこうでなければならないというような決まりはない」と固く信じているからです。

 4コママンガもそうです。たとえば、4コママンガ界の巨匠、いしいひさいち先生の作品を見てください。先日、新聞で見た先生の作品は、3コマ目を二つに分割した5コママンガになっていました。「4コマ」でない4コママンガがあってもいいのです。

 また、たいていの4コママンガは一話完結ですが、「100日目に死ぬワニ」のように、100話まで行ってやっと完結という作品もあります。

 特に決まりはない。それが、創作の世界の唯一の決まりです。

知り合いをキャラにする

 さて、ここからはキャラクターの作り方についてお話しします。「特に決まりはない」と言った手前、「こうしなければいけない」というようなことは言えません。そこで、

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筆者

中川文人

中川文人(なかがわ・ふみと) 作家

1964年生まれ。法政大学中退、レニングラード大学中退。著書に『身近な人に「へぇー」と言わせる意外な話1000』(朝日文庫)、『地獄誕生の物語』(以文社)、『ポスト学生運動史』(彩流社)など。本の情報サイト『好書好日』で「ツァラトゥストラの編集会議」の構成担当。総合誌『情況』にてハードボイルド小説「黒ヘル戦記」を連載中。

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