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ステイホーム週間は「スター・ウォーズ」で遥か彼方の銀河系へ!《後編》

5月4日はスター・ウォーズの日。壮大な宇宙の旅をおうちで楽しもう。

小松﨑友子 観光ブランディングプロデューサー/株式会社iNTO代表取締役

拡大『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』の手書き看板=2019年12月、日比谷TOHOシネマズ(筆者撮影)

 第一作から40年あまり、「スター・ウォーズ」はなぜ、世界を魅了し続けるのか。2005年から「スター・ウォーズ ウェブログ」を運営、「スター・ウォーズ」情報を発信し続け、2016年にはソーシャルコミュニティサイト「Wikia(ウィキア)」主催の「『スター・ウォーズ』究極のカルトクイズ ウィキア Qwizards<クイザード>」世界大会で優勝した藤井隆史さんに、「ステイホーム週間は『スター・ウォーズ』で遥か彼方の銀河系へ!《前編》」に引き続き、この一大スペースオペラの魅力について話を伺った。

拡大藤井隆史さん

藤井隆史(ふじい・たかし)
2005年からWEBサイト「スター・ウォーズ ウェブログ」を運営。「Wikia」主催の「『スター・ウォーズ』究極のカルトクイズ ウィキア Qwizards<クイザード>」世界大会で優勝。映画ライターとしても活動。

パルパティーンのモデルはニクソン大統領

――ここまでオリジナル・トリロジーを中心に話を伺ってきましたが、次にプリクエル・トリロジー(※1)と呼ばれる作品群について教えてください。

※1『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999年)『スター・ウォーズ エピソード2(2002年)/クローンの攻撃』『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(2005年)

 1999年から2005年にかけて公開されたプリクエル・トリロジーは、オリジナル・トリロジーに比べて政治がストーリーに絡んでくる作品群と言えます。銀河共和国の議会である銀河元老院が登場して、その一議員として後に皇帝になるパルパティーンがいるわけです。

 一議員だったパルパティーンが、いかにして権力を握り皇帝になったのか。ジョージ・ルーカスは、合法的に絶対君主制を築いたナポレオンやカエサル、ヒトラーなど歴史上の独裁者が経たプロセスを参考にしたとインタビューで答えています。

 『エピソード1/ファントム・メナス』では、パルパティーンが影から操ってナブーを侵略、それを利用して元老院の最高議長のポストを獲得します。『エピソード2/クローンの攻撃』では、平和だった共和国が軍を持つか持たないか、というところからはじまっていくわけですが、軍を持たなければならない、という脅威を作ったのもパルパティーンなんです。

 その結果、投票により軍隊がつくられ、クローン戦争が勃発。『エピソード3/シスの復讐』では、ジェダイの反乱をでっちあげ、最終的に共和国の解体と「銀河帝国」の建国を宣言します。

 古くからある、権力を握る過程を描いたものだと思うんですが、パルパティーンが皇帝に選ばれ、銀河帝国をつくるというところでは、議員たちが拍手喝采をするシーンが出てきます。そこでアナキンの妻である元老院議員のパドメは、絶望して次のように言います。

「これで自由は死んだわ。万雷の拍手の中でね。」
(原文:So this is how liberty dies, with thunderous applause.)

 権力が握られるプロセス、独裁政権というのは、実は大衆の政治の結果であって、民意によって出来てしまうんだ、ということを描いているんです。

――脅威をでっちあげて権力を得るとは、どこかで聞いたような話ですね。

 ルーカスは、パルパティーンはリチャード・ニクソン(元米大統領)をモデルにしている、と言っているんです。議会を転覆させて乗っ取ったと。ちなみに、ニクソンは1972年に起きたウォーターゲート事件で米大統領の座を失いました。「スター・ウォーズ」シリーズが生まれる前の話です。

 ニクソン以外にも、その時代の権力者を彷彿とさせるシーンがいろいろあります。例えば、2005年公開の『エピソード3/シスの復讐』で、アナキンがダークサイドに落ちてからオビ=ワンと対決する時、「僕と同じ道を行かないのであれば、お前は敵だ」ということを言っているのですが、当時、対テロ戦争にひた走っていたアメリカ大統領のジョージ・W・ブッシュの、「我々に協力しない者は、テロリストの味方だ」という発言と似ていると指摘されていました。協力しない者は全部敵、という構造は一致してますよね。

 プリクエル・トリロジーは、アナキンがいかにしてダース・ベイダーとなったのかを描いているんですが、ある意味パルパティーンももうひとりの主人公なんです。一議員でしかなかったパルパティーンが、次々に権力を手に入れて、最終的に銀河帝国の皇帝となっていく、というもうひとつのストーリーがあるんです。


筆者

小松﨑友子

小松﨑友子(こまつざき・ともこ) 観光ブランディングプロデューサー/株式会社iNTO代表取締役

東京都出身。広告代理店を経て独立。日本の「旅」と「食」を国内外に発信するマーケティングプロデューサーとして、日本全国の自治体及び企業のブランディング・マーケティングに関する課題の解決に取り組んでいる。大の映画好きであり映画関係者のコミュニティを運営。株式会社iNTO(イントゥ)代表取締役、早稲田インバウンド・ビジネス戦略研究会メンバー。「ジャパン・ツーリズム・アワード」メディア部門賞受賞「インバウンド・ビジネス戦略」共著にて出版。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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