5月4日はスター・ウォーズの日。壮大な宇宙の旅をおうちで楽しもう。
2020年05月01日
第一作から40年あまり、「スター・ウォーズ」はなぜ、世界を魅了し続けるのか。2005年から「スター・ウォーズ ウェブログ」を運営、「スター・ウォーズ」情報を発信し続け、2016年にはソーシャルコミュニティサイト「Wikia(ウィキア)」主催の「『スター・ウォーズ』究極のカルトクイズ ウィキア Qwizards<クイザード>」世界大会で優勝した藤井隆史さんに、「ステイホーム週間は『スター・ウォーズ』で遥か彼方の銀河系へ!《前編》」に引き続き、この一大スペースオペラの魅力について話を伺った。
藤井隆史(ふじい・たかし)
2005年からWEBサイト「スター・ウォーズ ウェブログ」を運営。「Wikia」主催の「『スター・ウォーズ』究極のカルトクイズ ウィキア Qwizards<クイザード>」世界大会で優勝。映画ライターとしても活動。
――ここまでオリジナル・トリロジーを中心に話を伺ってきましたが、次にプリクエル・トリロジー(※1)と呼ばれる作品群について教えてください。
※1『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999年)『スター・ウォーズ エピソード2(2002年)/クローンの攻撃』『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(2005年)
1999年から2005年にかけて公開されたプリクエル・トリロジーは、オリジナル・トリロジーに比べて政治がストーリーに絡んでくる作品群と言えます。銀河共和国の議会である銀河元老院が登場して、その一議員として後に皇帝になるパルパティーンがいるわけです。
一議員だったパルパティーンが、いかにして権力を握り皇帝になったのか。ジョージ・ルーカスは、合法的に絶対君主制を築いたナポレオンやカエサル、ヒトラーなど歴史上の独裁者が経たプロセスを参考にしたとインタビューで答えています。
『エピソード1/ファントム・メナス』では、パルパティーンが影から操ってナブーを侵略、それを利用して元老院の最高議長のポストを獲得します。『エピソード2/クローンの攻撃』では、平和だった共和国が軍を持つか持たないか、というところからはじまっていくわけですが、軍を持たなければならない、という脅威を作ったのもパルパティーンなんです。
その結果、投票により軍隊がつくられ、クローン戦争が勃発。『エピソード3/シスの復讐』では、ジェダイの反乱をでっちあげ、最終的に共和国の解体と「銀河帝国」の建国を宣言します。
古くからある、権力を握る過程を描いたものだと思うんですが、パルパティーンが皇帝に選ばれ、銀河帝国をつくるというところでは、議員たちが拍手喝采をするシーンが出てきます。そこでアナキンの妻である元老院議員のパドメは、絶望して次のように言います。
「これで自由は死んだわ。万雷の拍手の中でね。」
(原文:So this is how liberty dies, with thunderous applause.)
権力が握られるプロセス、独裁政権というのは、実は大衆の政治の結果であって、民意によって出来てしまうんだ、ということを描いているんです。
――脅威をでっちあげて権力を得るとは、どこかで聞いたような話ですね。
ルーカスは、パルパティーンはリチャード・ニクソン(元米大統領)をモデルにしている、と言っているんです。議会を転覆させて乗っ取ったと。ちなみに、ニクソンは1972年に起きたウォーターゲート事件で米大統領の座を失いました。「スター・ウォーズ」シリーズが生まれる前の話です。
ニクソン以外にも、その時代の権力者を彷彿とさせるシーンがいろいろあります。例えば、2005年公開の『エピソード3/シスの復讐』で、アナキンがダークサイドに落ちてからオビ=ワンと対決する時、「僕と同じ道を行かないのであれば、お前は敵だ」ということを言っているのですが、当時、対テロ戦争にひた走っていたアメリカ大統領のジョージ・W・ブッシュの、「我々に協力しない者は、テロリストの味方だ」という発言と似ていると指摘されていました。協力しない者は全部敵、という構造は一致してますよね。
プリクエル・トリロジーは、アナキンがいかにしてダース・ベイダーとなったのかを描いているんですが、ある意味パルパティーンももうひとりの主人公なんです。一議員でしかなかったパルパティーンが、次々に権力を手に入れて、最終的に銀河帝国の皇帝となっていく、というもうひとつのストーリーがあるんです。
ステイホーム週間は「スター・ウォーズ」で遥か彼方の銀河系へ!《前編》
――『ジェダイの帰還』から30年後の世界を描いたシークエル・トリロジー(※2)は、ウォルト・ディズニー・カンパニーがルーカスフィルムを買収した後の作品で、J・J・エイブラムスが監督となるわけですが、J・J・エイブラムス監督が元々「スター・ウォーズ」シリーズの大ファンということで、オリジナル・トリロジーからのファンにとってはたまらない内容でしたよね。
※2 『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015年)『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017年)『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(2019年)
レイア、ハン・ソロ、そしてルークが、『ジェダイの帰還』以来、まさに約30年振りに登場しましたからね。
――その一方で、全く新たな主人公「レイ」が登場してきました。それに、ファースト・オーダーとレジスタンスも。
レイが登場してから、ファンの中ではレイの出生についていろんな説が語られていました。レイは、おなじみのキャラクターの中の誰かと血縁関係があるのではないか、という説で、それがオビ=ワンなのか、スカイウォーカーなのか、パルパティーンなのか、だれの娘なのかということがよく議論されていました。
『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』で、ついに出生の秘密がわかるわけですが、結果的に二つ説をとったんだな、と……(笑)
帝国に代わって新しくできた「ファースト・オーダー」は、J・J・エイブラムス監督によると、「ナチス・ドイツがアルゼンチンに姿を隠して、そこから復活してきたらどうなるのか?」ということを構想段階で考えていたとのことなので、ネオナチ的な組織がイメージされたのではないでしょうか。
つまり、帝国の復活を目論んでいる、帝国のエッセンスを汲んだ新しい組織、というポジションです。
『ジェダイの帰還』の後、帝国軍を打倒した反乱軍は新共和国を樹立します。しかし、新共和国は先の大戦を恐れ、反省して軍縮し、ファースト・オーダーの脅威については、見て見ぬふりをして過小評価をしていました。
新共和国がファースト・オーダーの脅威に対応出来ないなか、ダース・ベイダーの娘であることを政敵に暴露され政界を去ったレイアは、ファースト・オーダーに対抗する軍事組織であるレジスタンスを独自に設立します。
――エンドアの戦いで得た平和も、30年後には崩壊してしまった、ということですよね…時代は繰り返されてしまうんですかね。
『エピソード1/ファントム・メナス』も、平和だった銀河共和国が崩壊していくところから始まりましたからね。現実の世界でも、同じことが繰り返されてますよね。
ただ、異なる点もあります。シークエル・トリロジーはこれまでの作品群と比べて、多様性という点で大きく変容しているんです。いわゆるダイバーシティーです。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください