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たかね吹々己 がんを機に引退、人生第3章へ

【宝塚~朗らかに~】旅館おかみに 手術で決断

日刊スポーツ新聞社・村上久美子


【日刊スポーツ・4月26日紙面(東京本社発行版)より】

拡大がん手術を機に芸能界を引退し、旅館おかみに転身するたかね吹々己(撮影・村上久美子)
 元宝塚歌劇団雪組トップたかね吹々己(旧芸名・高嶺ふぶき)が、5月に甲状腺乳頭がんの手術を受けるのを機に、芸能界を引退する。秋には、山口・周防大島で旅館のおかみに就き、イベントも仕掛ける考え。すでに京都で「劇団とっても便利」のミュージカル「美しい人」を終え、女優人生にひと区切り。在団中に阪神・淡路大震災で公演が中止になった経験を持つたかねは、前代未聞の長期休止が続く古巣の後輩に「なるようになる。心を大きく持って」とエールを送った。

    ◇   ◇   ◇  

 トップスターから女優、そして旅館のおかみへ――。たかねの“第3章”は病気がきっかけだった。

たかね バセドー病の治療もいったん治って、でも、去年の春ごろからまた動悸(どうき)がし始めて、再発。その前からしこりを指摘されていて、良性だろう、と。でも大きくなっていて、去年の末、OGで中国公演へ行き、帰国後の検査で、甲状腺の乳頭がんだと判明しました。

 その昨年、元上級生が新装旅館のおかみ候補を探しており、声をかけられた。

たかね 手術をすれば日常生活に支障はない。でも、自分が思っているより歌声をコントロールできなくなる。今のように歌えなくなるのは自尊心が許さない。手術を受ける踏ん切りをつけるためにも、私は(芸能界を)引くと決めた。

 ひと声発せば、それと分かる天賦の歌声。96年に雪組トップに就き、97年に退団。以後は女優として、美声を響かせる歌、圧倒的なオーラを放つ表現力豊かな芝居で魅了してきた。

たかね 最初(の候補地)は有馬だったんですけど、結局、今年の秋から山口県の周防大島で旅館を新装することになり、そこのおかみに。イベントのプロデュースもするつもり。今までの仕事生かせるし、人に喜んでもらうのは同じ。

 甲状腺乳頭がんは河内家菊水丸も患い、克服した。

たかね 「そこに行きなさい」って、言われているような。でもお金をもらって歌うのは無理。それが平気なら、今までの自分を全否定しちゃうことになる。

 最後の舞台は、出身の京都だった。長年、親交のある「劇団とっても便利」代表の大野裕之氏作品の再演で、大きな鳥を演じた。

たかね もう京都はお墓しかないけど、ルーツですから。運命、うん! あたし持ってるなって(笑い)。

 新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中、スタッフやファンも一体となって消毒、マスク、距離をとるなどし、最善の策をとり、上演に至った。

たかね お上からのお達しがあれば受け入れる。(舞台を)求められたら、最善を尽くすのがパフォーマーの仕事だと思っていた。

 現実を受け止める潔さ。宝塚時代、つねに技術を磨き、ストイックに男役道を追求する姿で知られた。「気持ちよく歌うだけではなく、曲の魅力を最大限に表現する」こだわり。プロとしての覚悟。幾多の山を乗り越えてきたゆえの強さ。

たかね いろんなことを敏感に感じ取る。普段の生活はストイックにはしない。自然に生き、感じる。斜に構えず、おおらかに、オープン・ザ・ハート!

 たどり着いた答えだ。

たかね ホコリじゃ死なない-って人だから(笑い)。免疫力、抵抗力をどんどん上げていかないと、過保護過ぎるのはよくない。

 在団中、阪神・淡路大震災を経験。宝塚バウホールでの主演作は開幕間もなかった。

たかね いったんバウ公演は取りやめ。とんでもないことになっていたし、やっている場合じゃない。無駄にジタバタしても、どうにもならないから!

 現在、古巣はかつて例のない長期中止が続く。雪組の後輩、現トップ望海風斗は退団発表後の東京公演も途中中断を強いられ、ソロコンサートも白紙に。

たかね なるようにしかならないし、なるようになる。ゆったり気持ちを構えて。せっかく今、夢の世界にいるわけだから、おおらかな気持ちでいてほしい。長い人生、将来、振り返れば「あの時は…」ってきっと笑い話になると信じて。それが糧になり、メンタルが強くなる。自分のプラスに絶対になる。「すべらない話」ゲットした! ってぐらいに思っておいて。

 ストレートで前向きに、後輩を鼓舞。自身はこれから病に立ち向かうが、すでに先のビジョンもある。

たかね お金、もらえへんかったら、夜な夜なラウンジで歌っているかも。みなさんが飲んでらっしゃる後ろで歌ったり、お客さんとデュエットしたり、バックコーラスでも「今日、おかみ歌います」みたいな。頑張りすぎない程度に頑張るのが一番やから。

☆たかね吹々己(旧芸名・高嶺ふぶき)12月4日、京都市生まれ。83年、宝塚歌劇団へ入団。雪組配属。貴公子タイプの二枚目男役として高い歌唱力とともに注目を集める。96年、一路真輝の退団公演で、日本初演となった「エリザベート」で皇帝フランツを好演。同年、雪組トップ就任。97年の退団公演「仮面のロマネスク」で、美貌の青年貴族を演じ、好評を博した。同作は劇団でも再演される名作のひとつとなった。退団後もミュージカル、日本物など舞台や、テレビでも女優として活躍してきた。

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