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「あいトリ」補助金、国と県の「手打ち」が問題を隠した

本質議論を避けた「一部交付」、「表現の自由」の意識低く

野田邦弘 横浜市立大学大学院都市社会文化研究科客員教授(創造都市論)

問題の本質から逃げた結論

拡大補助金不交付を決めた文化庁に対して大きな批判がわき上がった。文化庁前でも人々が「表現の自由を守れ」「検閲反対」と抗議の声をあげた=2019年9月26日、東京都千代田区

 国が頑迷な姿勢を改めたことは率直に喜びたい。

 これは、国と愛知県が裁判を回避するため歩み寄ったものと考えられる。裁判になれば長期間にわたり多大な時間とエネルギーを費やし、その間、国と愛知県の関係はぎくしゃくする。仮に愛知県が勝訴したとしても、国とのしこりは残り、愛知県にとってもメリットが少ないと考えたのであろう。

 しかし、しかしこのやり方は、お互いの関係修復を急ぐあまり、問題の本質を隠蔽(いんぺい)する極めて日本的なやり方である。問題解決から逃げたと言わざるを得ない。

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筆者

野田邦弘

野田邦弘(のだ・くにひろ) 横浜市立大学大学院都市社会文化研究科客員教授(創造都市論)

2004年まで横浜市職員として「クリエイティブシティ・ヨコハマ」の策定や「横浜トリエンナーレ2005」など文化行政に携わる。主な著書に『文化政策の展開』、『創造都市横浜の戦略』、『文化行政−はじまり・いま・みらい』、『イベント創造の時代~自治体と市民によるアートマネジメント』、共著に『地域学入門』、『創造都市への展望』『アートがひらく地域のこれから―クリエイティビティを生かす社会へ』など。鳥取大学特命教授を務めた。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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