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バクパイプは 他人に聴かせるためにやっているのか

国内唯一人の「職業奏者」がコロナ自粛の渦中で考えた「音楽の本質」【上】

加藤健二郎 バグパイプ奏者

演奏家生命の危機が迫る

バグパイプのレッスン拡大バグパイプのレッスン
 そんな心配をしているうちに、私自身にピンチが訪れてきた。近所で使用していた防音ルームがすべて閉鎖になり、自分自身の演奏スキルを維持する環境が奪われたのだ。

 バグパイプは、「音楽である前にスポーツ」と形容されるほどに、体力と筋力が勝負となる楽器だ。演奏スキル維持のためには、体力と筋力を鍛えて保つことが不可欠になる。

 そのため、週に1~2回は、楽器本体を使って演奏をしておかないと、能力をキープできない。演奏での筋肉の使い方や負担かかる部位は独特で、例えば、唇や喉の筋力を必要とする。一般的な筋トレなどでは代用できるものではない。

 東京都豊島区の自宅周辺では、レンタル防音ルーム、スタジオ、カラオケボックスなどがすべて営業停止になったことで、生徒さんへの心配の前に、自身のプロ演奏家としての活動の継続にも問題が出てきた。

ロック・フェスティバル「サマーソニック2015」の開幕セレモニーで演奏する筆者拡大ロック・フェスティバル「サマーソニック2015」の開幕セレモニーで演奏する筆者
「サマーソニック」の会場を巡りながらの演奏拡大「サマーソニック」の会場を巡りながらの演奏

伝統技術の継承、「空白期」をいかに乗り越えるか

 59歳という年齢からすると、体力筋力の衰えが顕著になってきてもいるので、ここで数カ月のブランクを作ってしまっては、元の体力には戻れず、「このまま衰退の一途かも」とおそれた。

 この状況で意識したのは、「文化・伝統技術の継承とは、こういう空白期をどう乗り越えるか、なのかも」ということだった。

 さっそく練習場所を選定するため、バグパイプを担いで荒川の河川敷など数カ所を偵察した。バグパイプの大音量を出しても、近隣からクレームを受けることがないかどうかのテストが、主な目的だった。

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筆者

加藤健二郎

加藤健二郎(かとう・けんじろう) バグパイプ奏者

1961年兵庫県尼崎市生まれ、東京、横浜育ち。早稲田大学理工学部卒。東亜建設工業に土木技術者として勤務した後、15年間の戦場ジャーナリストを経て、日本人初の職業バグパイプ奏者となる。ロック・フェスティバル「サマーソニック」に5年連続出演。ボーカルグループ「GReeeeN」のアルバムに参加。大場久美子バンドやサントリーのCMなどにも演奏で関わる。2017年からバグパイプレッスンを開講。著書は『女性兵士』(講談社文庫)、『戦場の現在―戦闘地域の最前線をゆく』(集英社新書)、『戦場へのパスポート』(ジャパンミリタリーレビュー)、『35ミリ最前線を行く』(光人社)、『密着報告自衛隊―戦闘部隊としての行動と実力』(ぶんか社)など11冊。HPは「東長崎機関」。 twitter: @katokenjiro  FB:https://www.facebook.com/kenjiro.kato.18

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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