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新型コロナを伝えるワイドショーや情報番組とうまく付き合うには

鈴木理香子 フリーライター

コロナ感染が怖くて外出できない高齢者たち

 緊急事態宣言が出て1カ月が経った。テレワークなど自宅で過ごす時間が長くなったことで、ついワイドショーや情報番組を見てしまう人も多いのではないだろうか。

 テレビをつけると、どこの局も新型コロナウイルス感染症関連の話題でいっぱいだ。だが、こうした情報に触れ続けることで弊害も出てきているようだ。

 東京・世田谷区でクリニックを営む内科医は、「新型コロナが怖い、不安だと言って、家から出られない高齢者が出てきている」と打ち明ける。先日も、慢性疾患の薬を患者の代わりに受け取った家族がいた。聞けば、「本人は朝からずっとワイドショーや情報番組ばかり見ていて、病院は怖いから行きたくない、と言い出した」という。

/Shutterstock.comTukusbayev/Shutterstock.com

 「病院で薬を処方してもらうのは“必要な外出”にあたり、不要不急ではありません。まだ血圧やコレステロールの値が安定している人はいいのですが、定期的に診察や血液検査、X線検査をしなければならない患者さんもいます。こうした方がテレビ番組の情報を見て不安がって受診しなくなったり、日課だった散歩を控えたりすることで、健康を害すことが何よりも心配です」

 相手は未知なるウイルス感染症であり、先がまったく見えない。不安を抱くのも当然だろう。その一方で、この医師が話すように、テレビ番組の情報が不安のきっかけになる場合があることも確かだ。「コロナ鬱」までいかずとも、その一歩手前の人たちは意外と多いかもしれない。

 ワイドショーや情報番組がもたらす心理面への影響について、「大いにあります」と答えるのは、大阪大学大学院人間科学研究科准教授の平井啓さん。『医療現場の行動経済学――すれ違う医者と患者』の編著書の一人で、行動変容(望ましくない行動を望ましい行動に置き換えること)の専門家だ。平井さんによると、ワイドショーは特に恐怖を煽る面があり、必要以上に怖がる人を増やしているという。

 「こうした番組には、『恐怖訴求型』という手法が使われることが多いのです。視聴者の恐怖を強めることで、訴えかけたり、行動を促そうとしたりする。これは、行動変容において実はもっとも簡単でもともとある手法ですが、今はそれが過度になっている気がします」

過剰反応も差別もその根っこは同じ「恐怖」

 新型コロナでいうと、ウイルスや医療現場の逼迫した映像、感染者の様子が頻繁に流れ、感染者や死者数が連日公表されている。また、新型コロナ感染症で亡くなったタレントの動向も繰り返し伝えられている。

 平井さんによると、こうした情報に絶えず触れることによって、「自分も感染するかもしれない」というリスク認知と、「感染したら大変なことになる」という重大性の認知が高まり、「コロナは怖い」「感染したくない」という気持ちが湧き上がってくるという。その結果、「予防のために何をしたらいいか」という意識が出て、回避行動を起こす。

show999/Shutterstock.comテレビのワイドショーや情報番組はほとんどコロナ情報ばかりだ=show999/Shutterstock.com

 ところが、最近のワイドショーはこの意図が逆効果に働いていると、平井さんは指摘する。

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