2020年05月11日
4月30日、インターネット、SNS上にアップされた以下の告知が、音楽業界関係者および音楽ファンの間に大きなショックを与えた。
【VUENOS 閉店のお知らせ】この度、新型コロナウイルスの影響による事業縮小に伴い、VUENOS並びに系列Glad、LOUNGE NEOは2020年5月31日をもちまして閉店することとなりました。これまで長きに渡り支えて頂きありがとうございました。事態の終息を心より願っております。 VUENOS一同
DJカルチャーの拠点であるクラブに縁のない方はピンとこないかもしれないが、これはかなりのインパクトを投げかけるトピックだった。なぜなら「VUENOS」は、渋谷のクラブ・シーンを語るうえで、いや、国内全体的に見ても、大きな意味を持つ重要な老舗クラブだからだ。
思い出すのは、1996年の春のことだ。渋谷の円山町に、収容人数700人超の“大バコ”ができるという話が飛び込んできたのだ。
正直なところ、その時点で当初の私は「長く続くかな?」と感じていた。しかし、そんな勝手な推測をよそに、「clubasia」(クラブエイジア)というそのクラブは瞬く間に渋谷を代表するクラブとして認知されていった。
そして、その勢いを受けた経営母体の株式会社カルチャー・オブ・エイジアは、2年後の1998年3月、「clubasia」の向かいに新たなクラブをオープンした。それが、このたび閉店が決まった「VUENOS」だ。つまり同店は、22年間続いたことになる。これは、競争の激しい業界にあっては評価に値すべきことである。
ちなみに同じビルの上階には、2001年4月にイベント・スペース「asia P」が、そして2002年11月にはライブハウスの「LOUNGE NEO」がオープンしている(ちなみに「asia P」は2010年2月に「Glad」としてリニューアルされた)。
そう考えるとカルチャー・オブ・エイジアは、わずか数年で、円山町を牛耳ってしまったといっても過言ではないのだ。だからこそ今回の話は、新型コロナがクラブ・シーンに与えた影響の大きさを衝撃的に言い表していると認めざるを得ないのである。
なお、残された「clubasia」も安泰だというわけではない。今回は“結果的に”難を逃れたというだけのことで、その証拠にカルチャー・オブ・エイジアでは現在、危機を迎えている「clubasia」を存続させるべく、クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」で存続支援プロジェクトを立ち上げ、支援を呼びかけている。どういう結果になるかは予測がつかないが、なんとか持ちこたえてほしいものだと思う。
いずれにしても、業界内では“大手”と呼んで差し支えないであろうクラブ/ライブハウスですらそこまで追い込まれているのだ。だとすれば、もっと規模の小さい個人営業店の苦境は想像に難くない。
たとえば私が親しくしている下北沢のDJバーの店主Aさんも、4月初旬の段階でSNSに苦悩を記していた。東日本大震災直後に開店したので、この夏で9周年を迎えることになる店である。
多くの方に連絡して、沢山の出演快諾いただいて、それが仕事だから当然とは言え、散々苦労して作り上げたスケジュールの、また一人一人にイベント中止の連絡をするとか、悲しみしかないっす。もちろんこの困難を乗り越えてゆく気満々だけど、ちょっとくらい悲しんでもいいですよね?(4月9日)
このところずっと差し当たっての近日スケジュールの調整、支援プロジェクト関係、家賃や社会保険料など固定費の削減のための情報収集なんかをやってるんだけど、とにかく何をやっていても胸が苦しい。こういう気分は今まで一度も味わったことがない。(4月16日)
休業から丸1週間経過。生まれて初めて体験する、この「普通の生活を奪われた」毎日。
ぽっかりと大きな穴が開いたような自分の身体。再開の目途も全く立たず、ただただ不安だけが残る。
あの愛おしい日常が1日も早く戻ってくることを願って止まない。大切な家族や友人の笑顔を間近で感じたい。(4月18日)
4月22日には、緊急事態宣言後初めて大家さんと家賃について相談したのだそうだ。「営業できず収入を絶たれているので、こうした状況が続くようであれば、この先家賃を満額支払っていくのは非常に難しい」と。
とはいえ当然、大家さんには大家さんの事情があるはずだ。事実、
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