メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

無料

編集者の緊急事態日記――不安、焦燥、救われた言葉、ときどき『ペスト』

小木田順子 編集者・幻冬舎

自分がすべきこと・できること

■4月21日(火) 緊急事態宣言14日目
 緊急事態宣言が発出されて2週間。ピークアウトの気配なし。これは延期だな。

NHK『100分de名著 アルベール・カミュ ペスト』。左が中条省平さん=NHKオンデマンドのサイトより拡大NHK『100分de名著 アルベール・カミュ ペスト』。左が中条省平さん=NHKオンデマンドのサイトより
 カミュ『ペスト』への理解を深めたくて、中条省平さんの『100分de名著 アルベール・カミュ ペスト』(NHKテキスト、2018年6月)を読む。NHKオンデマンドで、全4回の放送も観る。カミュについては、『異邦人』の「きょう、ママンが死んだ」以外は何も知らなかったので、とても勉強になり、おもしろい。

 テキストでとくに心に残ったのは以下のくだり。

 〈『ペスト』はけっして勇敢さの美談ではないし、特別に強い精神をもった主人公による美しいヒロイズムの物語ではない(中略)これはむしろアンチ・ヒューマニズム、アンチ・ヒロイズムの小説であって、英雄主義に対する懐疑は随所で言及されています〉

 新型コロナウイルスの感染患者を受け入れている病院では、病床も人工呼吸器も防護服もマスクも数が足りなくて逼迫するなか、医療従事者のみなさんが懸命に仕事にあたっている。

 それは本当にありがたく尊いことで、どんなに拍手をしてもしたりない。だけれど、今回の感染が収束したとき、医療従事者の犠牲の上に助かる命があったことを、美談として消費してはいけない。ヒーローに頼らずに事態に対処できる社会でなくてはいけないと思うのだ。

■4月22日(水) 緊急事態宣言15日目
 内田樹さんが、雑誌「月刊日本」で受けたロングインタビュー「コロナ後の世界」をブログで公開。世界はいま「独裁か、民主主義か」という歴史的分岐点に立っているという。それは、迂遠な国際政治の話ではない。日頃から民主主義者を標榜し、国家による権力行使はきわめて抑制的であるべきだと言いながら、今回は、「早く緊急事態宣言を出してほしい」と求めてしまった私自身に突きつけられた問いだ。

 アフターコロナの世界について漠然と危惧していたことを内田さんが全部整理して述べてくれて、暗澹とはするが視界が開けた。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

小木田順子

小木田順子(こぎた・じゅんこ) 編集者・幻冬舎

1966年、長野県生まれ。90年、PHP研究所に入社。PHP新書創刊に携わる。2005年、幻冬舎に入社し、幻冬舎新書の創刊に携わる。気がつけば、編集者人生の大半を新書編集者として過ごしている。担当した本は村山斉『宇宙は何でできているのか』(新書大賞2011)、香山リカ『しがみつかない生き方』、國分功一郎『来るべき民主主義』など。書評誌『いける本・いけない本』編集長も務める。