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『たけしの挑戦状 ビヨンド』脚本・演出上田誠インタビュー

たけしさんへ最大限のリスペクトを持って創りたい

真名子陽子 ライター、エディター


 ビートたけしさんが監修し1986年に発売されたファミコンゲームソフト「たけしの挑戦状」。そのクソゲーと呼ばれた伝説のゲームを、ヨーロッパ企画の上田誠さんが脚本・演出により舞台化し、キングコングの西野亮廣さんが主演することで注目されていた舞台『たけしの挑戦状 ビヨンド』。残念ながら公演中止となってしまいましたが、大阪で開かれた上田さんの取材会のレポートをお届けします。

 たけしさんへ最大限のリスペクトを持って創りたいと語った上田さん。たけしさんにこの舞台を観て欲しいですかとの問いにしばらく考えて、「初日が開いてから判断しようかな(笑)。でも、『おもしろいね、あんちゃん』って言われたいですね」と……いつか必ずその日がくることを願って…。

高校生の時に攻略ビデオを作って配っていた

拡大上田誠=久保秀臣 撮影

――どのような経緯でこの作品を上演しようとなったのでしょうか?

 ニッポン放送さんとはこれまで何作か作品を創っているんですけど、あまり型にとらわれずに目新しいことをやっていこうというチームで、いろいろ面白いことができるんですね。次に何をしようかという会議があった時にいろいろ企画案を持っていったんですけど、この作品は最後に見せた案だったんです。僕の中ではこれはないだろうと思っていたんですけど、会議の大半がこの話になってしまい、これだけ盛り上がるんだったらいけるんじゃないかと。ただ、これでいこうと誰が言ったわけでもないんですけどね(笑)。みんながトキメキを感じながら、どんなことになるかわからずに進んでいるというプロジェクトです。

――「たけしの挑戦状」というゲームなんですよね?

 1986年に出たファミコンのソフトなんですけど、当時たけしさんがファミコンにはまって、誰もクリアできないゲームを作ろうという高い意気込みのもとに作られたんですね。80万本も売れたんですけど、その志の高さ故に解ける人が少なくて、クレームがきたりクソゲーと言われるほどの問題作だったんです。でも僕はこのゲームがすごく好きで、当時小学生でクリアできなかったんだけれども鮮烈な印象が残っているんです。そして高校生の時に改めて攻略本を片手に挑戦してクリアしていって、そればかりか自分でパソコンを駆使しながら VHSテープ45分の攻略ビデオを作って友達に配布していたという……そんな思い出のある「たけしの挑戦状」なんですけど、それがいろんなタイミングや流れの中で今やってみようとなりました。

――やってみようと思ったきっかけは何かあったんですか?

 僕40歳になったんですけど、たけしさんは39歳の時にこの「たけしの挑戦状」を作られたんですね。そしてその3年後に最初の映画を作られました。このソフトは「芸人さん」から「世界の北野」になっていくそのタイミングで作られていて、自分がその時のたけしさんとほぼ同じ年齢である今、このゲームをひも解くのは面白いかなと思ったんです。だから、同世代ぐらいの方で挑戦心のある方に主演をしていただきたいと思っていたんですね。その主演の西野さんとはたまたま仕事で知り合って仲良くさせてもらっていて、あまり舞台の主演をされるイメージはないんですけれども、西野さんの年齢も同時のたけしさんと一緒なので、北野、西野……どうでしょう?と声をかけさせてもらったら(笑)、ご快諾下さいました。ワクワクしましたね。

見せ方は間違えないようにしないといけない

拡大上田誠=久保秀臣 撮影

――このゲームを知らない方でも楽しめる作品なんでしょうか?

 全然大丈夫です。以前、『サマータイムマシン・ワンスモア』という作品でタイムマシンを題材にちょっと複雑な話をしたんですけど、その話以外に学生物の話も入れて、タイムマシンの興味がなくても学生物の青春グラフィティとして観ても面白いように創ったんですね。作品を創る時にはなるべく、いろんな切り口で面白さの担保を取っていくことをやっていきたいと思っているんです。「たけしの挑戦状」というゲームはすごく面白いと思っているので、その面白くてワクワクするということをちゃんと伝えるべく、最大限の演出をいろいろ工夫しようと思っています。

――その面白さを伝えるべく、どんな演出を考えていますか?

 それがとても難しいんですよね。この面白さを目指したいからとそこだけを目指して創るとかなりマニアックになるから、他の楽しさで埋めようとする。でも、この面白さを伝えるにはその楽しさは邪魔になることがあるんですよね。このゲームには興味ないけれど西野さんを見たいとか、小島聖さんを見たいとか、いろんな方が観に来ても満足してもらえるように、それぞれ役者の良さを出すようなシーンを作るといったことはやりますが、見せ方は間違えないようにしないといけないなと思っています。

――コメディなんですよね?

 そうです、コメディです。結局やることはこれまでと変わらなくて、この面白さを伝えたいと思う時はいろんな方法を尽くしてそれを見せなきゃいけないので、コメディにして笑ってもらうこともあれば、演出効果で興味深く見せることもあります。普通ならとても聞けないようなマニアックな話や退屈そうな込み入った話を、語り口などを工夫して舞台でちゃんと観られるものにすることは好きなんです。でもこの作品に関してはひたすら「たけしの挑戦状」に向かっていく話にどうしてもなるんですよね。いろいろ悩んでいるところです。

稽古が近づくにつれて怖くなって

拡大上田誠=久保秀臣 撮影

――西野さんはとてもバイタリティがあって才能のある方で、その西野さんと上田さんが出会うとどうなるんだろうという興味と、そこにたけしさんのクソゲーが加わり、何が繰り出されるんだろうと。

 西野さんは当然芸人さんだから、その場を成立させることは難なくされます。芸人さんに役者さんとして出ていただいた時、例えば、ここはフリーにするので楽しませてくださいって言ったら、そんなことは全然お手の物なんです。アドリブ入れてくれと言ったら入れてくれるし、世界観を邪魔しないように気遣って下さる。西野さんもきっとそうだと思うんですね。僕の描きたい「たけしの挑戦状」をやりましょうというスタンスでこられると思います。

――稽古場が楽しそうです。

 稽古前はいろいろストイックに考えるんですけど、大体稽古が始まるといろいろ変わっていくんですよね。今回もはじめ、「まわりが冷ややかに見ている中、一人『たけしの挑戦状』に挑む男」みたいなプロットを書いていたんですけど、稽古が近づくにつれて怖くなってきて、みんなでワイワイやるほうが良いなって(笑)。

――(笑)。なぜ怖くなったのですか?

 う~~ん、稽古場でみんなが冷ややかに見ている中、西野さんがひとりゲームをプレイしているというシーンを見るのは耐えられへん(笑)。それならみんな出た方が良い、みんなで出よう!ってなるんです。それは現場の面白いところで、そういう感じで芝居を作っていけばすごく面白くなる。やっぱり演劇の現場の論理というものがあるんですよね。

演劇の現場には全員で創るという力学が働く

拡大上田誠=久保秀臣 撮影

――どんな演出をするタイプなんですか?

 自分が創りたい作品を創る一方で、やっぱりチームなのでひとりでも気持ちが死んでる人がいたらダメで、みんながこの作品は面白いから観てもらおうという気持ちになってないとやっぱりうまくいかない。映画だとそのシーンだけ来て貰って撮って帰っていただいているけど、舞台は座組みでみんな一緒に回っていきますし、あなたの出番は一分間だけですというのはないですよね。だからストイックにゲームをする話を目指しつつも、やっぱりワイワイしたものになりますね、きっと。

――ストイックでワイワイ!?

 僕、少人数のシーンをあまり創らないんですよね。10人の座組で3人のシーンを創ったら7人が見てるわけじゃないですか、稽古場で。それに耐えられなくて、みんな出ようかってなるんですよ。出ていたらみんな文句言わないですし(笑)。お芝居で2人のシーンを創る演出家さんとかいるじゃないですか、ハート強いなあと思いますね。座組十何人いる中で2人のシーンをずっとやってるなんて、僕は苦しいんです。何だろう……演劇の現場には全員で創るという力学が働きます。僕の場合はですけどね。

こういうのに出会うと落ち着いていられない

拡大上田誠=久保秀臣 撮影

――上田さんがこの作品を通して伝えたいことは何でしょう?

 メッセージ的な意味合いで言えば、1986年のあの時代に、昭和とは言えこんなやりたい放題の大問題作、誰も解ける人がいないゲームを世に放って80万本も売って、しかもその当時色々スキャンダルもありながら……。クソゲーだという電話が鳴り止まず、攻略本を二冊も出し、その二冊目には「儲かった、これで攻略本が二冊売れたぜ」みたいな事を書いて。その挑発的なその振る舞いというか……僕は小学生だったので、その時はそこまで思ってはいなかったですけど、ただ、あのビートたけしというタレントさんが面白いことをしてるなっていうぐらいのことだったんです。

――なるほど。

 でも今考えるとすごいことだと思うし、どのジャンルを見渡してもそんな風雲児な方ってそうそういない気がするんだけど、でも西野さんはそういう人なんだと思うんです。この時代の中でアンチをものともせずというか、ものともしてるんでしょうけど、何かある強い意志を持って戦いを挑んでいらっしゃる感じがします。そういうことを具体的にやっていくというのはどういうことなのかを考えたいし、考えなきゃなと思います。僕も40歳になって、これから落ち着くもよし、なんかもっと変わったことをするのもよしというタイミングで、こういう方に出会うと落ち着いていられないなと思うんです。

――では当時、たけしさんが「たけし挑戦状」というゲームソフトを作った目的は何だったと思いますか?

 足元にも及ばないんだけど似てるのは、自分は演劇もやりながら他のジャンルにも首を突っ込んで、それらを混ぜて作品を創ることが好きなんです。そのジャンルの専門じゃないゆえに、そのジャンルにどっぷり浸かった人じゃないからできることが、いろんなところで動いている人の強みなんですよね。おそらく演劇の世界にどっぷりいたら、もっと演技の文脈のことを意識しなきゃいけなかったかもしれません。この軽やかさは唯一いろんなところを渡り歩いて良かったと思うところなんですね。たけしさんもゲーム業界の常識を知っている人だったら、こういうゲームは作れなかっただろうし、ご本人もゲーム業界という何か新しいことをやっているところに入って、外様の自分がやれるインパクトが何かあるんじゃないかという計算のもとに作られたと思うんです。タイトルが「挑戦状」ですから。俺がゲームを作ったらこういうことができるんだぜということをやったんだろうなと思います。

※舞台『たけしの挑戦状 ビヨンド』は全公演中止となりましたが、只今、公演オフィシャルHPにて「こんてにゅうや」というスピンオフ企画を展開しております。こちらにて上田誠さんのこの作品にかけた思いをお伝えしておりますので、是非ご覧ください。

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筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

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