読書率アップの小中学生と不読書率5割の高校生
新型コロナウイルスの蔓延で小中学校が長期休校になったこともあって、子どもの本がよく読まれているという。もっとも、出版全体の売り上げ激減の中で、児童書は多少の凸凹はあるものの、横ばいもしくは微増で推移してきたから、平時でもそれなりに読まれているのだ。
ちなみに、全国学校図書館協議会(全国SLA)による第65回学校読書調査(2019年6月)によれば、昨年(2019年)5月に読んだ本の冊数が、小学生(4年生から6年生)は11.3冊、中学生は4.7冊、高校生は1.4冊。1か月間に1冊も本を読まない不読書率は、小学生が6.8%、中学生が12.5%、高校生は55.3%と年齢が上に行くほど激増する。
この傾向はずいぶん前から変わらない。2000年と比較してみると、読んだ本の冊数は、小学生6.1冊、中学生2.1冊、高校生1.3冊だったから、この19年間で高校生を除き倍増している。不読書率は、小学生16.4%、中学生43.0%、高校生58.8%で、小中学生は激減しているが高校生は微減。つまり、ほぼ20年前と比べ小中学生はずいぶんよく本を読むようになったものの、高校生は相変わらず半数以上が月に1冊も本を読んでいないということがよくわかる。
その要因として、小学校では全校一斉読書活動が約97%の実施率に対し、中学校で90%前後、高校では約40%と小学校の半分以下だというから、学校内における読書活動の影響が大きい。
また「朝の読書」運動の成果も小中学生の読書人口を増やしてきたに違いない。つまり、小中学生に関しては、子どもの本離れなどはないのだ。それに比べ高校生は、以前から部活や受験のための勉強に時間がとられて、本を読む時間などとれないのだろう。年齢が上がるほど、様々な情報を、本よりもスマホなどから得ている今日ではなおさらだ。

「朝の読書」運動は小中学生の読書人口を増やしてきた
そんな中で、新潮文庫が企画している「中高生のためのワタシの一行大賞」の受賞作品を見ると、昨今の中高生の読書の在り様と、作品の中から一行を切り取る着眼点や文章表現力の巧みさには驚かされる。