1964年生まれ。法政大学中退、レニングラード大学中退。著書に『身近な人に「へぇー」と言わせる意外な話1000』(朝日文庫)、『地獄誕生の物語』(以文社)、『ポスト学生運動史』(彩流社)など。本の情報サイト『好書好日』で「ツァラトゥストラの編集会議」の構成担当。総合誌『情況』にてハードボイルド小説「黒ヘル戦記」を連載中。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
難しい課題を与えられると気負ってしまうけど秘訣は力を抜くことです
プロ野球チームの千葉ロッテマリーンズで活躍した里崎智也さんのYouTubeチャンネルを私はよく観るのですが、昨年の10月にアップされた「バッターの長所と短所」という回の中で、里崎さんは次のようなことを言っています。
「どんなバッターにも得意なところと苦手なところがありますが、得意と苦手の意味が、みなさんよくわかっていない。得意なところは打てるところ、苦手なところは打てないところと思っている人が多い。が、これは間違いです。レギュラークラスの選手の場合、打てないところはありません。打てないところがあるような選手は、そもそもレギュラーにはなれません。
では、得意なところと苦手なところの違いとは何か。得意なところとは、意識しないでも打てるところ、何も考えなくても自然にバットが出るところです。苦手なところとは、意識すれば打てるところ、意識しないとなかなかそこにバットが出ないところです」
私はこの話を聞いて、プロ野球の世界も我々の世界も同じだ、と思いました。里崎さんは「打てないところがあるような選手は、そもそもレギュラーになれない」と言っていますが、これはクリエイターの世界でも同じです。「これは苦手だからできません」「これは難しいからイヤです」などと言ったらそこでおしまい。仕事は来なくなります。だから、苦手だろうがなんだろうが、なんとかしなければなりません。
というと、大変なんだな、と思われるかもしれませんが、私の仕事仲間の一人は「苦手な分野の仕事や、難しい課題を与えられたときの方が楽だ」と言います。「だって、そういうときは、そこそこの出来で満足してもらえるだろう」と。
たしかにそうなのです。苦手な分野の仕事をするのは大変です。が、苦手な分野の場合、「そこそこの出来」でよしとされます。しかし、得意分野だとそうはいきません。「すごいもの」を求められるので、期待に応えるのが大変です。
ちなみに、私は「ソ連、ロシア、共産主義に強い」と思われています。プロフィールのところを見ていただけるとわかりますが、ソ連邦がまだこの世にあった頃、ソ連の大学に行っていたからです。また、「内ゲバ」に関する本も書いているので、「内ゲバ」も得意分野と思われています。だから、その手のネタが回ってくると緊張します。これは大変だ、いいものを作らないと怒られる、と思うからです。
結局のところ、苦手な分野の仕事は大変だし、得意分野の仕事も別の意味で大変。世の中、楽な仕事はない、ということになるのですが、前置きはこのくらいにして、今回は苦手な分野の克服方法についてお話しします。
苦手な分野の仕事が来たときや、難しい課題を与えられたとき、プロのクリエイターはどうやってその難局を乗り越えているのか。現物を見てもらった方がいいと思いますので、「ツァラトゥストラの編集会議」のバックナンバーの中から、特に私が「困った」「まいった」「どうしよう」と思ったものを例に説明します。
「ツァラトゥストラの編集会議」で、私が特に「困った」「まいった」「どうしよう」と思ったのは