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「愛の不時着」沼がステイホームのいじけ心を救ってくれた理由

矢部万紀子 コラムニスト

朝から晩までパソコンにかじりつき……

 Netflixで配信されている「愛の不時着」が人気だということは、ご存じの方も多いだろう。韓国のケーブルテレビtvNで2019年12月から20年2月まで放送され、最終回の視聴率(21.7%)は同局ドラマ最高を記録。2月後半からNetflixで配信され、以来「今日の総合トップ10(日本)」に入り続け、昨今では1位か2位が定位置になっている。

 これもご存じの方が多いと思うが、韓流ドラマは長い。1話が1時間をたっぷり超え、16話が定番。見るには覚悟がいる。それでも見ようと決めたのは、Facebookのリア充地獄(個人の感想です)から決別したかったからだ。Facebook以外のことに、気をとられたい。切実にそう思った。読書する集中力はないと自覚していた。テレビは気楽だが、ドラマは再放送ばかりだし、バラエティー番組はリモート出演者が「リア充」に見えて嫌だった。そこで思い出したのが、人気だと噂の「愛の不時着」だった。

 1話が80分前後で16話。全部見ると、21時間以上かかる。だが、見始めた。初日に1話、2日目に2話。残りは3日で見た。文字通り朝から晩までパソコンにかじりつき、昨今よく聞く「沼」という言葉を理解した。抜けられない、むしろ沈んでいたい。徹夜で見たい心をギリギリ抑えた。「ネトゲ廃人」なる言葉も遠い国のものではなくなり、Facebookを見る暇もなくなった。

tvN提供拡大「愛の不時着」=tvN提供

 あら筋を紹介する。韓国の財閥令嬢で、自らのファッションブランドを成功させている経営者ユン・セリ(ソン・イェジン)がパラグライダーの事故で北朝鮮に不時着、北朝鮮の中隊長リ・ジョンヒョク(ヒョンビン)に発見される。彼は彼女を当局に突き出すのでなく、自ら守り、南に帰すという道を選ぶ。いつしか愛し合う2人にとって、韓国への帰還というゴールは別れを意味することになる。そんな物語だ。

 最初から結ばれない関係にある2人の主人公。その悲恋感が「冬のソナタ」以来の韓流ドラマの王道で、だから韓流ファンが夢中になっている。そう人気を分析する記事もあった。韓流ドラマは「宮廷女官チャングムの誓い」しか見たことがないが、「冬ソナブーム」をリアルタイムで知る者として、その感覚はなんとなくわかった。

 なぜ従来の韓流ファン以外もハマるのか、

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筆者

矢部万紀子

矢部万紀子(やべ・まきこ) コラムニスト

1961年生まれ。83年、朝日新聞社に入社。宇都宮支局、学芸部を経て、週刊誌「アエラ」の創刊メンバーに。その後、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理、書籍編集部長などをつとめる。「週刊朝日」時代に担当したコラムが松本人志著『遺書』『松本』となり、ミリオンセラーになる。2011年4月、いきいき株式会社(現「株式会社ハルメク」)に入社、同年6月から2017年7月まで、50代からの女性のための月刊生活情報誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長をつとめた後、退社、フリーランスに。著書に『美智子さまという奇跡』(幻冬舎新書)、『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)。最新刊に『雅子さまの笑顔――生きづらさを超えて』(幻冬舎新書)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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