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コロナ禍で岐路に立つアニメーション(下) 人の心を潤す力を信じて

未来を左右するデジタル化の行方

叶精二 映像研究家、亜細亜大学・大正大学・女子美術大学・東京工学院講師

 新型コロナウイルスの感染拡大により、日本のアニメーションは制作の中断を余儀なくされ、放送・配信・公開が延期となるケースが相次いだ。非常事態宣言が解除されて以降、放送再開が決定したテレビシリーズも出始めてはいるが、一方で再延期や新たに放送中止となるケースも増えている。こうした混乱の影響が深刻化するのは、むしろこれからであろう。

 先の見えない状況下、アニメーション制作者たちは何を思うのか。前稿に続いて、筆者が制作現場で活躍する各職種のスタッフの方々に実施した「緊急アンケート」をもとに、コロナ禍がアニメーション業界にどのような影響を及ぼすのかを考えてみたい。

 なお、回答を寄せてくださったのは、スタジオ勤務、フリーランス、個人作家、小規模スタジオ経営者など様々な立場の方々である。制作現場の証言から現状を整理し、今後を展望してみたい。

テレワーク推進のメリット

 前稿で述べたように、集団作業が必須のアニメーション制作にとってテレワークはデメリットが多い。しかし、一方では、2Dでも背景美術・仕上げ・撮影などの工程ではもともとデジタル化が進んでいるため、パソコン使用による在宅作業への移行は比較的スムーズだったと聞く。

 「自分はもともと自宅作業も多く機材も揃っているので自宅作業自体に問題はない。納期さえ守れば自分のペースで作業できる」(撮影)

 「往復の通勤時間が無くなったのでその分は時間を有効に使える。自分のペースで進める事が出来る。
 現在の社内仕上チームは4人です。会社の機材をそれぞれの自宅に搬入する許可を貰いました。チームとして在宅でどこまで出来るか、在宅の今だから出来る事の可能性を探ってみようと思っています」(色彩設計)

 また、3D-CGによるセルルックアニメーション(キャラクターを2Dと同じようにセル画調に加工したCG作品)の制作現場でも遅れは出ているが、2Dの現場とは多少事情が異なるようだ。

 「元々テレワークの一部テストを試みていたこともあり、全スタッフの自宅PCにソフトウェアライセンスを発行し、徐々に通常業務に戻りつつあります。むしろ、個々人の自宅のLAN(ネットワーク接続)環境に大きく依存するので、スタジオとして各自の自宅のネットワーク環境整備のサポートが急務です」(プロデューサー)

 「撮影や仕上げに遅れを取ってきた作画のデジタル化も、ここ5年ほどは徐々に進んでいます。コロナ禍はその流れを強く後押しします。早くにデジタル化を進めてきたプロダクションに有利な状況ですし、これからのプロダクションにとっても進歩のきっかけになります」(森田宏幸氏/監督・講師)

Kit8.netshutterstock拡大Kit8.net/Shutterstock.com

 今回の事態を受けて、各制作現場は社会的距離や労働時間の問題について再考せざるを得ないであろう。今後は手描きの現場が減り、3D-CG作品が増える可能性がある。また、むしろテレワークの方が意思疎通がスムーズだと感じる若手スタッフや、労働時間・通勤時間が短縮出来るといった柔軟な考えをもつスタッフが中心となって、現場の世代交代が進む可能性もある。一方で、従来型の手描き作画に戻るスタジオでも元請・下請のテレワークとの共同作業法の確立やデジタル化への移行が急務となるのではないか。

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筆者

叶精二

叶精二(かのう・せいじ) 映像研究家、亜細亜大学・大正大学・女子美術大学・東京工学院講師

映像研究家。亜細亜大学・大正大学・女子美術大学・東京工学院講師。高畑勲・宮崎駿作品研究所代表。著書に『宮崎駿全書』(フィルムアート社)、「『アナと雪の女王』の光と影」(七つ森書館)、『日本のアニメーションを築いた人々 新版』(復刊ドットコム)、共著に『王と鳥 スタジオジブリの原点』(大月書店)、『マンガで探検! アニメーションのひみつ』(全3巻、大月書店)など。

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