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『不死鳥の如く』、宝塚歌劇団・演出家 石田昌也

良い未来を「想像する権利」は誰にも奪えない

石田昌也 宝塚歌劇団 演出家


「オコモリ生活」、叶わない気分転換

 大型連休中「曜日感覚」を消失した。連日テレビで「同じようなニュース」を見ているせいかもしれない。コロナ禍は正しい情報を得て、正しく理解する事の大切さを改めて認識する機会になった。

 美容院で「仰向けに寝て」シャンプーするより、理髪店で「前屈み」でシャンプーして貰った方が、美容師(理容師)との顔の距離が保てるのでコロナに罹患しにくい…と云う情報がある。この「情報」が正しいか否かは別として…なら、美容院へも散髪屋にも、行かなければすむハナシかもしれない。折角「脳みそ」が付いているのだから、自分の頭で考える事した。小生の結論は理髪店に行き「髭剃り」は無し。

拡大星組公演 フレンチ・ミュージカル『ロックオペラ モーツァルト』 The Musical ≪Mozart, l'opéra rock≫ Produced by WAM PRODUCTIONS International Licensing & Booking, G.L.O, Guillaume Lagorce, info@glorganisation.com 潤色・演出/石田 昌也
http://info@glorganisation.com

 劇団からは「打合せ」「呑み会」が禁止(当然だが)されて久しい。「オコモリ生活」はもう暫く続きそうだが、我々の仕事(脚本、作曲、衣裳デザインなど)…の半分は元々オコモリなのでそう苦痛を感じる事はない。しかし実際は気分転換に喫茶店に行き、図書館で資料を調べ、時にスーパー銭湯で湯あみ…と、オンモに出てで「気分転換」をしている。しかし今回はそれが叶わない。

 我が家は幼い子供、病人、妊婦、受験生がいる訳でもなく、医療に従事している訳でもない。また、すぐに路頭に迷う訳ではない。こんな事で泣き言を云うと罰が当たる。旅行や出張が減って知らぬ間に航空会社の「ステータスが下がってしまった」など愚痴を言おうものなら…袋叩きに合いそうだ。

 無宗教の小生「運命」など信じないタイプだが、古い戦争映画を再見すると「戦場は弾に当たる奴と当たらない奴がいる!」との台詞。スピリチュアルなど無関係に生きて来たが、もしかしたら「運命」は?

エンターテインメントの中止、その「傷の種類」は様々

 宝塚歌劇だけでなく、最近のエンタメ情報は「中止」「延期」「不明」と云う言葉で埋め尽くされている。野外で行われる野球やサッカーも中止となれば、屋内で催される演劇は、さらに厳しい状態だ。古代のギリシャ悲劇のように『野外劇場』で催される公演ならいざ知らず、レビューは基本…屋内でのエンターテインメント。

 胃の中に石を詰め込まれた気分になる。初日直前に/千秋楽直前に/初めての新人公演なのに/初の単独主役なのに/演出家としてデビューなのに/衣裳合わせも終わっているのに等々。タカラジェンヌの心、お客様の心、スタッフの心。その「傷の種類」は様々で、共通の慰めを見つける事すら難しい。

 タカラジェンヌもそうだが、制服の採寸だけして「実家」でオンライン授業に励む音楽学校新入生の事を思うとさらに心が痛む。もう5月も終わろうとしているが、入学式の日程すら不明だ(※その後、6月5日に入学式が行われました)。体を動かすことは室内でも、ジョギングでも可能だが。防音室付きの大邸宅に住んでいるタカラジェンヌは多分?いないので、声を出すレッスンはさらに大変のようだ。自家用車を所有している生徒なら車の中で大声を出すことも出来るが、停車中は周りの目が気になる…と云うハナシを聞いた。稽古や公演中のタカラジェンヌはホントに大変だが、あまりに長い休演は…「もっと大変」なのだ。

 それでも古参の宝塚ファンの方から「戦後GHQに接収され、アーニー・パイル劇場となった東京宝塚劇場。軍に接収され海軍航空隊宿舎となった宝塚大劇場の不遇を超えて、歌劇団は不死鳥のように蘇った経緯がある、今が踏ん張り処です!」と励まされた。

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筆者

石田昌也

石田昌也(いしだ・まさや) 宝塚歌劇団 演出家

兵庫県出身。1979年4月、宝塚歌劇団入団。1986年『恋のチェッカー・フラッグ』で演出家デビューを果たし、1989年『硬派・坂本竜馬!』で新たな竜馬像を描き出して注目を集める。2008年、白洲次郎を主人公にした『黎明の風』で骨太な作風が好評を博す一方、2011年にはニール・サイモンの傑作コメディ『おかしな二人』の脚色・演出を手掛けるなど、幅広いジャンルで活躍。近年は2016年『アーサー王伝説』、2019年『ロックオペラ モーツァルト』など、海外ミュージカルの潤色・演出も手掛けている。