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結成2年半、女性落語家グループ「落語ガールズ」の団結のパワー

トーキョー落語かいわい【5】定期公演50回以上、継続は力でファンも広がり

鶴田智 朝日新聞社財務本部グループ財務部主査

 寄席や落語会で女性落語家の姿が増えてきました。真打ちが何人もいるし、活躍が目立つようにもなってきています。女性落語家の高座の、男性とはまた違う味わいを楽しみにしている人たちもいます。

 緊急事態宣言が解除され、6月に入って定席の寄席は入場制限つきながら一部再開しました。とはいえ、見に行く時はまだ、新型コロナウイルスを警戒しながらです。のびのびとなんの気兼ねもなく寄席や落語会に行ける日は一体、いつ来ることやら。

 でもね、嘆いてばかりいてもしょうがない。今回はその日を夢見て、女性落語家のお話とまいりましょうか。

「落語ガールズスペシャル」のゲストで登場した春風亭昇太を囲んで、右から春雨や風子、川柳つくし、林家ぼたん、柳家花ごめ、三遊亭遊かり=2020年2月、「落語ガールズ」の公式ツイッターから

東京の女性落語家の三分の一が参加

 イベントの自粛要請などがまだ出ていなかった今年2月1日、東京・中央区の月島社会教育会館(定員240人)で、女性落語家が集う大きな落語会が開かれました。「落語ガールズスペシャル」です。

 「落語ガールズ」は、東京にある落語家の団体の枠を越え、2017年秋に結成された女性落語家のグループです。女性がいない円楽一門会を除く、落語協会、落語芸術協会、落語立川流の3団体に所属する女性落語家の若手が集まりました。この日の落語会は結成2周年を記念する「スペシャル」。

 3団体を横断し、東京の女性落語家のざっと三分の一が参加している計算です。落語家全体から見ると少人数ですが、こう数えるとけっこうな存在感です。落語といえば男が語るもの。そんな既成概念との闘いを乗り越えて奮闘している彼女たちからは、団結のパワーを感じます。

 「落語ガールズ」の現在のメンバーは次の13人です。

▽落語協会 川柳つくし、林家ぼたん、古今亭駒子、三遊亭美るく、林家扇、柳家花ごめ、林家あんこ、春風亭一花
▽落語芸術協会 春雨や風子、三遊亭遊かり、三遊亭遊七
▽落語立川流 立川こはる、立川だん子

 昼夜2部制で開かれた2月1日の「スペシャル」には、メンバーのうち8人が出演。昼の部は、扇、風子、美るく、つくし、夜の部は、遊かり、花ごめ、駒子、ぼたん。各人による古典、新作の高座のほか、出演者たちが顔をそろえるにぎやかな大喜利もあり、さらに、人気漫才師のナイツ(昼の部)や、テレビの「笑点」の司会でもおなじみの春風亭昇太(夜の部)をゲストに迎え、大いに盛り上がりました。

高座にただよう華やかさ

 どんな落語を聞かせてくれたのか。うち3人の高座の様子を紹介しましょう。

 「落語ガールズ」の「リーダー」風子は、信じる宗教を巡って父と息子が口論する「宗論」を披露しました。宝塚の男役俳優のようなキャラの息子が歌う賛美歌が、途中から童謡に変わってしまうのですが、背が高く、目元のメイクを決めた風子に宝塚的な味わいが似合って見えます。なんでも、かつてインディーズバンドのボーカルをしていたそうです。

 「スペシャル」昼の部のトリ、つくしは、新作「早慶戦」を口演。早大出身のつくしならではの、大学野球の応援をテーマにした一席です。つくしファンにはおなじみのキャラ、しおりとひろみ先輩が女子大生として登場、早慶戦の応援風景をめぐり、話が弾みます。

 夜の部のトリをつとめたぼたんは、奉公に出した息子が3年ぶりで帰ってくる古典落語「藪(やぶ)入り」の一席。長屋で待つ父母と、奉公から帰った子の様子を古典の伝統的な筋で演じ、「正調」藪入りを聞かせました。

 ガールって少女じゃないの?などと突っ込むのは、野暮ってことでやめておきましょう。女性落語家が次々に登場する様子は、なかなか華やかです。

「落語ガールズ」の三つの狙い

 大きなホールでのスペシャル公演は18年12月以来、2回目。風子は「メンバーのまとまりが1年前と全然違う。みんな盛り上げていこうとしている」。つくしは「みんな芸の方向が違い、バラエティーに富んだ感じでよかった」と話していました。

 そもそも、「落語ガールズ」をつくった狙いは何か?

春雨や風子
 設立を呼びかけた風子によると、まずは「落語をたくさんの人たちに聞いてほしいし見に来てほしいから」。まだ落語を知らない人たちのために、まずは「目立つ」ように、「華やかに」なるようにと考えたそうです。くわえて、女性落語家が団結してパワーを生み出す機会にする。さらに、「メンバーの実力が上がるように切磋琢磨する。そのためのグループ」という狙いも 。

 「勉強させていただいています」と話す風子は真打ち前の二ツ目ですが、プロデューサー的な役割を果たしてきました。当初、各団体の若手女性落語家に「とりあえずやってみませんか」と持ち掛け、手探りで始めたそうです。

 結成後、「落語ガールズ」は17年12月から、東京・西新宿で毎月2回、メンバー4人ずつが交代で出演する落語会を続けてきました(20年4、5月は中止)。毎回20~40人ほどのお客が入り、2年以上過ぎて回数も50回を超えました。「一度は来てみたかった」。 そんな言葉をかけてくれるファンもいて、広がりを感じるそうです。 継続は力です。

「ラジオ番組を経験したからこそ」

 19年4~9月には、グループ名と同名のラジオ番組も持っていました。高知放送、北海道放送、新潟放送など各地の民放で毎週1回放送され、番組の中で落語や大喜利を披露しました。

 このラジオ番組の経験が「大きかった」と風子。

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