鶴田智(つるた・さとし) 朝日新聞社財務本部グループ財務部主査
1984年朝日新聞社入社。地域面編集センター次長、CSR推進部企画委員、「声」欄デスク、校閲センター記者を務める。古典芸能にひかれ、歌舞伎はよく観劇、落語は面白そうだと思えばできるだけ見に行く。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
トーキョー落語かいわい【5】定期公演50回以上、継続は力でファンも広がり
どんな落語を聞かせてくれたのか。うち3人の高座の様子を紹介しましょう。
「落語ガールズ」の「リーダー」風子は、信じる宗教を巡って父と息子が口論する「宗論」を披露しました。宝塚の男役俳優のようなキャラの息子が歌う賛美歌が、途中から童謡に変わってしまうのですが、背が高く、目元のメイクを決めた風子に宝塚的な味わいが似合って見えます。なんでも、かつてインディーズバンドのボーカルをしていたそうです。
「スペシャル」昼の部のトリ、つくしは、新作「早慶戦」を口演。早大出身のつくしならではの、大学野球の応援をテーマにした一席です。つくしファンにはおなじみのキャラ、しおりとひろみ先輩が女子大生として登場、早慶戦の応援風景をめぐり、話が弾みます。
夜の部のトリをつとめたぼたんは、奉公に出した息子が3年ぶりで帰ってくる古典落語「藪(やぶ)入り」の一席。長屋で待つ父母と、奉公から帰った子の様子を古典の伝統的な筋で演じ、「正調」藪入りを聞かせました。
ガールって少女じゃないの?などと突っ込むのは、野暮ってことでやめておきましょう。女性落語家が次々に登場する様子は、なかなか華やかです。
大きなホールでのスペシャル公演は18年12月以来、2回目。風子は「メンバーのまとまりが1年前と全然違う。みんな盛り上げていこうとしている」。つくしは「みんな芸の方向が違い、バラエティーに富んだ感じでよかった」と話していました。
そもそも、「落語ガールズ」をつくった狙いは何か?
設立を呼びかけた風子によると、まずは「落語をたくさんの人たちに聞いてほしいし見に来てほしいから」。まだ落語を知らない人たちのために、まずは「目立つ」ように、「華やかに」なるようにと考えたそうです。くわえて、女性落語家が団結してパワーを生み出す機会にする。さらに、「メンバーの実力が上がるように切磋琢磨する。そのためのグループ」という狙いも 。
「勉強させていただいています」と話す風子は真打ち前の二ツ目ですが、プロデューサー的な役割を果たしてきました。当初、各団体の若手女性落語家に「とりあえずやってみませんか」と持ち掛け、手探りで始めたそうです。
結成後、「落語ガールズ」は17年12月から、東京・西新宿で毎月2回、メンバー4人ずつが交代で出演する落語会を続けてきました(20年4、5月は中止)。毎回20~40人ほどのお客が入り、2年以上過ぎて回数も50回を超えました。「一度は来てみたかった」。 そんな言葉をかけてくれるファンもいて、広がりを感じるそうです。 継続は力です。
19年4~9月には、グループ名と同名のラジオ番組も持っていました。高知放送、北海道放送、新潟放送など各地の民放で毎週1回放送され、番組の中で落語や大喜利を披露しました。
このラジオ番組の経験が「大きかった」と風子。
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