青木るえか(あおき・るえか) エッセイスト
1962年、東京生まれ東京育ち。エッセイスト。女子美術大学卒業。25歳から2年に1回引っ越しをする人生となる。現在は福岡在住。広島で出会ったホルモン天ぷらに耽溺中。とくに血肝のファン。著書に『定年がやってくる――妻の本音と夫の心得』(ちくま新書)、『主婦でスミマセン』(角川文庫)、『猫の品格』(文春新書)、『OSKを見にいけ!』(青弓社)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
まゆゆが引退した。元AKB48、卒業後は女優もやってた渡辺麻友。
なぜかそれほど驚かなかった。といっても、「やめたそうにしている」ようにも「やめなきゃならないような状態に追い込まれている」ようにも見えなかったので、「ある日ふっと芸能界から消えた渡辺麻友」で、「そのことがなぜか納得できてしまった」という感じ。
まゆゆは、同時期に「選抜総選挙でのライバル」として指原莉乃がいたので、「ブスのくせに人たらしで選挙にやたら強い指原(←これは私がそう思ってるんじゃないですよ!)」に対して「真のアイドルはまゆゆ」「あれだけ真性のアイドルだとAKBみたいな集団ではかえってトップになれない」みたいな存在だった。
私もAKBグループのファンの末端にいたので、大阪ドームとかのコンサート見たり、選抜総選挙を現場で見たりして、ナマまゆゆは何回か見たことがある。巨大な会場のてっぺんみたいな席だからモニターに映るのすら小さくしか見えない、生身のまゆゆなど針の先みたいなものだ。しかし、うわっと思うのは、そんな針の先みたいな集団アイドルがうごめいてる中で、まゆゆはすぐわかるのだ。
「いた、あれがまゆゆだ!」
なんでわかるのかというと、光ってるの。
物理的に光っている。
頭蓋骨の中に白熱電球でも入ってるんじゃないかというような明るさ。まゆゆだけが「ほわっ」と明るく白く光っていて、まわりのアイドルたちは背景のように薄暗く見えたのである。宝塚歌劇ではトップスターにだけ当てる特別な「トップ・ピン(スポットライト)」というものがあると聞く。当たるとパーっと光って見えて「この人は違う……!」と、何も知らない人にも思わせるようなライト。まゆゆにもそういうのを当ててたのか? いやちがうだろう。そのコンサートにおける序列トップはまゆゆじゃなかったし(前田敦子は卒業してたが大島優子はまだいた時代)。とにかく、あの大量のアイドル集団の中で、顔の見分けもつかないような遠くからでも、
「まゆゆはちょっとちがう」
ということは、見ただけでわかった。ただし「ちょっとちがう」から頂点にのぼりつめるかというとそうはいかないのが、AKBであり、芸能界というものなのだった。