2020年06月08日
まゆゆが引退した。元AKB48、卒業後は女優もやってた渡辺麻友。
なぜかそれほど驚かなかった。といっても、「やめたそうにしている」ようにも「やめなきゃならないような状態に追い込まれている」ようにも見えなかったので、「ある日ふっと芸能界から消えた渡辺麻友」で、「そのことがなぜか納得できてしまった」という感じ。
まゆゆは、同時期に「選抜総選挙でのライバル」として指原莉乃がいたので、「ブスのくせに人たらしで選挙にやたら強い指原(←これは私がそう思ってるんじゃないですよ!)」に対して「真のアイドルはまゆゆ」「あれだけ真性のアイドルだとAKBみたいな集団ではかえってトップになれない」みたいな存在だった。
私もAKBグループのファンの末端にいたので、大阪ドームとかのコンサート見たり、選抜総選挙を現場で見たりして、ナマまゆゆは何回か見たことがある。巨大な会場のてっぺんみたいな席だからモニターに映るのすら小さくしか見えない、生身のまゆゆなど針の先みたいなものだ。しかし、うわっと思うのは、そんな針の先みたいな集団アイドルがうごめいてる中で、まゆゆはすぐわかるのだ。
「いた、あれがまゆゆだ!」
なんでわかるのかというと、光ってるの。
物理的に光っている。
頭蓋骨の中に白熱電球でも入ってるんじゃないかというような明るさ。まゆゆだけが「ほわっ」と明るく白く光っていて、まわりのアイドルたちは背景のように薄暗く見えたのである。宝塚歌劇ではトップスターにだけ当てる特別な「トップ・ピン(スポットライト)」というものがあると聞く。当たるとパーっと光って見えて「この人は違う……!」と、何も知らない人にも思わせるようなライト。まゆゆにもそういうのを当ててたのか? いやちがうだろう。そのコンサートにおける序列トップはまゆゆじゃなかったし(前田敦子は卒業してたが大島優子はまだいた時代)。とにかく、あの大量のアイドル集団の中で、顔の見分けもつかないような遠くからでも、
「まゆゆはちょっとちがう」
ということは、見ただけでわかった。ただし「ちょっとちがう」から頂点にのぼりつめるかというとそうはいかないのが、AKBであり、芸能界というものなのだった。
まゆゆはAKBの「神セブン」(選抜総選挙の上位7位)常連ではあったが(何しろ第1回の選抜総選挙から、5位より下がったことがない)、1位になったのは1回だけだ。悲願の1位になったその2014年、まゆゆがアイドル生活史上最高に輝いていたかというとそうはいかなかった。このズレみたいなものも芸能界あるあるだ。
まゆゆがいちばん光っていたのは、私見であるといちおう断っておくが絶対の自信を持って言い切りたい、2011年だ。『渡り廊下走り隊7』(わたりろうかはしりたいせぶん、通称ワロタ)というAKB内ユニットをやっていて、その8枚目のシングル『へたっぴウィンク』が出た頃だ!
この曲のPVは今もYouTubeにアップされているのでみなさんもご覧になることが可能です。
しかし『へたっぴウィンク』ってどれぐらい知られてるんだろ。オリコン週間チャートで2位になったらしいが、現在のオリコンチャートなんてすでにヒットチャートの意味がなくなってる気がするし。そもそもワロタの存在だってどの程度の知名度なのか。AKBは有名で、まゆゆもわりと有名で、しかしワロタはAKBあるいは積極的アイドルファン内でしか知られてないのでは。私の知り合いの主婦の皆さんはまるで知らないと言っている。論座の読者の皆様はいかがだろうか。
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