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コロナ禍のなかで『はだしのゲン』を一気読みした

大槻慎二 編集者、田畑書店社主

 『はだしのゲン』(汐文社ほか)は初出の「少年ジャンプ」で読んでいた。連載が始まった1973年は、ちょうど中学校にあがった年だった。活字も漫画も音楽も映像も、全てがストレートに幼い頭脳に飛び込んでくる、そんな時期だ。特に漫画は直感的で、原爆の地獄絵は理屈抜きにそのまま地獄として脳裡に焼き付いた。学校の授業で原爆被害の写真なども見たことがあったが、中沢啓治の絵の方が遙かに強力で色褪せなかった。

『はだしのゲン』を「週刊少年ジャンプ」で連載していたころの中沢啓治さん 拡大70年代、『はだしのゲン』を「週刊少年ジャンプ」で連載していたころの中沢啓治さん
 ところが何回か飛ばしているうちに筋がわからなくなり、連載を追うのをやめてしまった。それに、のちになって単行本を買って全体を通読するには至らなかった。その頃にはもう漫画雑誌からも、漫画という媒体からも距離を置くようになっていたからだ。

 それがなぜ今回、この状況のなかで改めて読もうという気になったかといえば、もうずいぶん以前から、この漫画からの引用がツイッターにあげられているのが散見されるようになり、そういえば何年か前に、松江市の小中学校の図書館で閲覧制限をしたことが大問題になったことなどを思い出し、あの時の右からの異様な反応に危惧したことが、その後じわじわと具現化していき、このコロナ禍で一気に噴き出したような気がしてきたからだ。

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筆者

大槻慎二

大槻慎二(おおつき・しんじ) 編集者、田畑書店社主

1961年、長野県生まれ。名古屋大学文学部仏文科卒。福武書店(現ベネッセコーポレーション)で文芸雑誌「海燕」や文芸書の編集に携わった後、朝日新聞社に入社。出版局(のち朝日新聞出版)にて、「一冊の本」、「小説トリッパー」、朝日文庫の編集長を務める。2011年に退社し、現在、田畑書店社主。大阪芸術大学、奈良大学で、出版・編集と創作の講座を持つ。フリーで書籍の企画・編集も手がける。