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来館者名簿をめぐる図書館界のちぐはぐなコロナ対応

利用者のプライバシーを守るのが「大原則」だが……

長岡義幸 フリーランス記者

入館記録の記入「強制」をする図書館も

 世間には職能団体や業界団体が制定した倫理綱領が数多あるものの、どちらかといえば構成員に義務を課す「倫理規定」風のものが多い。他方、「図書館員の倫理綱領」(1980年6月4日総会決議)と自由宣言は表裏の関係にあり、自らの権利・責務を確認し、利用者の権利・自由を保護しようとしている点で画期的なものだった。

 朝日新聞の天声人語も「宣言の背後には、かつての図書館が思想善導の機関として国民の知る自由を妨げる役割を果たしたことへの、苦い反省があるようだ」と記述しつつ、図書館の自由宣言を高く評価したことがあった(1984年4月30日付)。

「借りたい本を選ぶだけにしてください」と図書館のサービス制限を呼びかけた=2020年5月16日午前11時41分、大阪市立中央図書館


 拡大大阪市立中央図書館では「借りたい本を選ぶだけにしてください」と呼びかけた=2020年5月16日
 にもかかわらず、ガイドライン更新版の下敷きとなった補足説明でも「来館者名簿の作成」を半ば前提にしつつ、〈意思決定においては、何よりも利用者のプライバシーに対して配慮すべきです〉という留保を付けた。本来であれば、半世紀以上の歴史を持つ、図書館界の基本的な指針である「図書館の自由宣言」に依拠して、まずは「図書館は利用者の読書事実を外部に漏らしません」と大原則を確認し、そのうえで現下のコロナ禍への対応・対策を例外的なものとして位置づける慎重さこそが必要だったはずだ。

 少なくとも、自由宣言は図書館界の総意として全国図書館大会の場で確認された“重み”があり、一方のコロナガイドラインは日図協の理事者を中心に策定された、一時的な文書という“軽さ”が感じられることは指摘せざるを得ない。

 ただし、

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筆者

長岡義幸

長岡義幸(ながおか・よしゆき) フリーランス記者

1962年生まれ、福島県小高町(現・南相馬市)出身。国立福島工業高等専門学校工業化学科卒業、早稲田大学第二文学部3年編入学後、中退(抹籍)。出版業界紙『新文化』記者を経てフリーランスに。出版流通・出版の自由・子どもの権利・労働などが主な関心分野。著書に『「本を売る」という仕事――書店を歩く』(潮出版社)、『マンガはなぜ規制されるのか――「有害」をめぐる半世紀の攻防』(平凡社新書)、『出版と自由――周縁から見た出版産業』(出版メディアパル)ほか。震災・原発事故関連の共著書に『除染労働』(三一書房)、『復興なんて、してません――3・11から5度目の春。15人の“いま”』(第三書館)なども。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです