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「文化芸術復興基金」の創設を求めて

コロナ禍の中で映画・音楽・演劇が合流【下】

シライケイタ 劇団温泉ドラゴン代表、劇作家、演出家、俳優

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために活動を自粛せざるを得なかった文化3ジャンルに携わる人たちが、「#We Need Culture」を合言葉に合流した。ミニシアターを救おうと運動してきた映画人、ライブハウスやクラブを守るために活動する音楽関係者、そして、演劇人たちだ。「文化芸術復興基金」の創設を求めている。演劇から参加している筆者が前回に続き、その活動を報告しながら、コロナ後の文化を考える。

ミニシアターやライブハウスは「文化団体」じゃない?!

拡大「We Need Culture」の合言葉で集まり、合同で記者会見する(左から)渡辺えり(演劇)、スガナミユウ・加藤梅造(音楽)、諏訪敦彦(映画)の各氏=2020年5月22日、東京・衆院第1議員会館

 それぞれ行っていた署名活動の成果も、ジャンルによっての違いが際立っていました。

 「演劇緊急支援プロジェクト」に集まった署名はその時点で2万筆ほど。「SAVE the CINEMA」が8万筆。そして、「Save Our Space」は30万筆を超えていました。演劇に比べ映画が4倍ほど、そしてライブハウス/クラブには10倍以上と文字通り桁違いの署名が集まっていました。

 映画や音楽と演劇ではその性質上、お客さんの目に触れる機会の多さや、一度に見て頂ける人の数が圧倒的に違いますので、単純に署名数だけを比較することはナンセンスです。ですがそうは言っても、この圧倒的な支援の大きさと、人々の生活への根付き方、愛され方を目の当たりにして、心から羨ましく思いました。

 映画や音楽のように演劇が愛されるためには何が必要なのだろう、とわが身を顧みる機会にするためにも、彼らと合同することは意義のあることだと、直感的に確信しました。

 ここまで書いたことは、あくまでも僕の個人的な見解ですので、他の演劇人からの反論があるかもしれません。この原稿の前半で「近視眼的に見た場合の」とわざわざ書きましたが、本来はもっと俯瞰して、長い時間軸の中でこの3ジャンル合同を捉えるべきです。今後、もっと大局的に現状を評価する時期が必ず来ると思っています。その未来のためにも、日本の文化芸術にとって意義のある合流にしなければならない、決して今が良ければいいと思っているわけではない。そう関係者は皆強く思っていることを書き添えておきます。

 一方、ミニシアターとライブハウス/クラブにとっての、演劇と合流した理由を考えてみます。

 今回僕も初めて知ったことなのですが、彼らには、彼らのアイデンティティに関わる切実な問題があったのです。それは、ミニシアターやライブハウス/クラブが行政に支援を求めた際、文化庁からは門前払いを食ってしまう、という現実です。

 どういうことか。

 彼らは当然、自分たちのことを文化の作り手であり、担い手であるという自負の中で映画や音楽を発信してきました。ところが、行政から見える景色はそうではなく、音楽や映画そのものは文化であるけれど、それを提供する場であるミニシアターやライブハウス/クラブは、あくまで事業体であり、だとするならば、支援を文化庁ではなく経産省や厚労省に求めてくれ、というものだったのです。

 そのことに彼らは傷つき、現状を変えたいと思ったのです。

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筆者

シライケイタ

シライケイタ(しらい・けいた) 劇団温泉ドラゴン代表、劇作家、演出家、俳優

桐朋学園芸術短期大学演劇専攻在学中に、蜷川幸雄演出「ロミオとジュリエット」パリス役に抜擢され俳優デビュー。数々の舞台やテレビ、CMに出演。2011年より劇作と演出を開始。劇団温泉ドラゴンの座付き作家・演出家として数々の作品を発表。劇団以外での演出や脚本提供も多く、アングラ劇団から老舗の新劇団まで多様な作風に対応する演出の幅の広さを持つ。社会における人間存在の在り方を、劇場空間における俳優の肉体を通して表出させる演出手法に定評があり、生と死を見つめた骨太な作品作りが特徴。「若手演出家コンクール2013」において、優秀賞と観客賞を受賞。15年、作・演出・出演した『BIRTH』の韓国ツアーを成功させ、密陽(ミリャン)演劇祭で戯曲賞を受賞した。18年『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(若松プロダクション)と『袴垂れはどこだ』(劇団俳小)の演出で、第25回読売演劇大賞「杉村春子賞」を受賞。 日本演出者協会常務理事。日韓演劇交流センター理事。日本劇作家協会会員。18年度より、セゾン文化財団シニアフェロー。 桐朋学園芸術短期大学、非常勤講師。桜美林大学芸術文化学群、非常勤講師。 著書に『BIRTH×SCRAP』(19年)がある。

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