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「文化芸術復興基金」の創設を求めて

コロナ禍の中で映画・音楽・演劇が合流【下】

シライケイタ 劇団温泉ドラゴン代表、劇作家、演出家、俳優

ただの「場所」ではない、文化の揺りかごの意味

拡大観客同士の距離を保つため、座席に貼り紙をして再開準備をするミニシアター=2020年5月17日、茨城県
 ミニシアターやライブハウス/クラブは単にソフトを提供するだけでなく、作品選びやプログラムの作り方に大きな特徴があり、そのことが地域の文化をそのまま形作ると言っていい程の役割を担っています。更に、ミニシアターやライブハウス/クラブから、世界に羽ばたく才能が多数生み出されていて、その意味でも彼らは単なる「場所」ではなく、日本の文化芸術を根本から支え、産み出す存在なのです。

 しかし、その彼らは行政から文化団体としては認められず、それ故に文化庁管轄の予算は1円も来ません。彼らは、自らのアイデンティティを否定され続けてきたのです。

 同じことは演劇界にも言えます。民間の小劇場は文化庁管轄ではありません。小劇場が文化庁に助成金や補助金を求めても、現在の枠組みでは難しいのです。

 しかし演劇界は歴史の中で、映画や音楽業界に比べて行政と深く結びついてきたという側面があり、充分な形でないとはいえ、助成金システムも構築されています。それは劇場に対する直接的な助成ではなく、あくまでも作品に対する助成ですが、作品を創作するカンパニーが劇場を借りる時の劇場費として間接的に分配されている、ということは言えると思います。

 これも完全な私見ですが、その意味でミニシアターやライブハウス/クラブ側から見た時、演劇の持つ歴史と行政との繋がりが、これも近視眼的に見た場合の、演劇と合同する大きな理由だったのではないでしょうか。

 これを書いているのが6月9日。近く成立する見通しの第2次補正予算に、560億円の文化芸術に対する支援策が盛り込まれています。

 現状の予算案には、その支援対象にミニシアターとライブハウス/クラブは含まれていません。日本の文化芸術の発信地である彼らが支援対象に含まれないということは、決してあってはなりません。

 現在Twitter上では「#ライブハウス・クラブ・ミニシアターも文化芸術支援の対象に」というハッシュタグが拡散されています。どうか、我々の願いが届きますように。

 このように、三者三様の現状があり、お互いの足りない部分を補い合うようにして結びついた今回の3ジャンル合同であったと言えると思います。


筆者

シライケイタ

シライケイタ(しらい・けいた) 劇団温泉ドラゴン代表、劇作家、演出家、俳優

桐朋学園芸術短期大学演劇専攻在学中に、蜷川幸雄演出「ロミオとジュリエット」パリス役に抜擢され俳優デビュー。数々の舞台やテレビ、CMに出演。2011年より劇作と演出を開始。劇団温泉ドラゴンの座付き作家・演出家として数々の作品を発表。劇団以外での演出や脚本提供も多く、アングラ劇団から老舗の新劇団まで多様な作風に対応する演出の幅の広さを持つ。社会における人間存在の在り方を、劇場空間における俳優の肉体を通して表出させる演出手法に定評があり、生と死を見つめた骨太な作品作りが特徴。「若手演出家コンクール2013」において、優秀賞と観客賞を受賞。15年、作・演出・出演した『BIRTH』の韓国ツアーを成功させ、密陽(ミリャン)演劇祭で戯曲賞を受賞した。18年『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(若松プロダクション)と『袴垂れはどこだ』(劇団俳小)の演出で、第25回読売演劇大賞「杉村春子賞」を受賞。 日本演出者協会常務理事。日韓演劇交流センター理事。日本劇作家協会会員。18年度より、セゾン文化財団シニアフェロー。 桐朋学園芸術短期大学、非常勤講師。桜美林大学芸術文化学群、非常勤講師。 著書に『BIRTH×SCRAP』(19年)がある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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