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韓国の「クオーター音程」は神秘的で心地良い

ミン・ヨンチ ミュージシャン 韓国伝統音楽家

 前回『韓国伝統音楽「5拍子10拍子の世界」へようこそ!』は、韓国伝統音楽(韓国では伝統音楽のことを「国楽」と言うため、以下、「国楽」と表記する場合もある)のリズムに関して少しではありましたが、書かせていただきました。

 そうなると今回は、韓国伝統音楽の音階、音程の説明を少しだけですが、簡単に説明させていただきます。

 まず皆さんがご存知の音階は、『ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ』の7音階ですよね。

 ピアノの白鍵で弾けます。

 それに比べて韓国は、『黄・太・仲・林・南』の5音階です。なんと漢字!なのです。

 これはピアノの黒鍵で弾けます。

 そうです。韓国の音階は、7音階ではなく、5音階ペンタトニックなのです。

宗廟祭礼楽を再現したもの。宗廟祭礼楽は、李氏朝鮮王室の祭礼儀式。年に一度、毎年5月第1日曜日、歴代王と皇后の霊が眠るソウル宗廟で行われる(国楽大辞典から)

韓国は何で音を伝えたのか

 例えば韓国や北朝鮮の民謡『アリラン』は、

『ドーレドレ ファーソファソ ラーソラファレ ドーレドレ』

 と始まるのですが、韓国の音階で表すと、

『黄ー太黄太 仲ー林仲林 南ー林南仲太 黄ー太黄太』

 となります。

 そして、この『アリラン』の曲も当然、音が5つで構成させれています。

韓国の音階の漢字表記と五線譜の関係を一緒に表すとこんな感じになる

「ヘグム」という胡弓に似た韓国の伝統楽器の楽譜。現在、使われている楽譜である

 西洋の音階は、何百年も何千年もの間に伝わってきた歌や器楽曲などを、長い間研究し、そして科学的に周波数を定め、音程を統一させました。

 その中で代表的な楽器がピアノ。西洋は、ピアノメインで音程音階が構成されているといっても過言ではありません。オーケストラなどの合奏の場合の調律もピアノに合わせます。

 では、韓国はどうだったか?

 まず、基本の音となる、「黄」の音程を、どう決めたか? ピアノで言うと「ド」の音と思って頂ければ良いです。

 それは遠い昔、その音程を中国から鐘でもらったと聞いています。

 そうです。当時は鐘で音程を伝えたのです。

国楽大辞典から
 なぜ鐘かというと、割れにくいしつぶれないので、音程が変動しないからでしょう。(詳しく言うと、「黄」の音程は、ピアノの「ミ♭」。余談ですが、日本のお寺にある鐘も、「ミ♭」が多いような気がするのは私だけかな?)

 こういう風に音程、音階が伝わり、今に至っています。

 今日はここまで!

 ……ではなくて、今日はここからなのです。

ピアノの音程とは微妙に合わないロマンチック

 さてさて、先ほども西洋の音程は科学的に、周波数を整えたと説明しましたが、では韓国は?

 ここが一番の、今日の真骨頂で、面白いところです。

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