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【10】有事・非常時の「猿の惑星理論」

胆は「大どんでん返し」ではなく、実は設定の重要性です

中川文人 作家

歴史的大事件はちょくちょく起きる

 今年は、新型コロナウイルスの流行によって世界中が大騒ぎになりました。「まさか、こんなことになるとは…」と思った方も多いでしょう。私もその一人です。が、冷静になって考えてみると、「まさか、こんなことに…」と思ったのは今回が初めてではありません。

 2011年、東日本大震災と原発事故の時も、「まさか、こんなことに…」と思いましたし、1995年の阪神淡路大震災の時も、オウム事件が起きた時も、やはりそう思いました。

 さらに遡ると、1989年11月にもびっくりするような事件が起きました。ベルリンの壁の崩壊です。当時、私はソ連邦のレニングラード(今はサンクトペテルブルク)に住んでいて、「ドイツが大変なことになっている」ことはモスクワ放送のニュースで知ったのですが、アナウンサーもコメンテーターも、「まさか、こんなことに…」という顔をしていました。

 このように、「歴史的な大事件」というのは意外とちょくちょく起きています。湾岸戦争、同時多発テロ、イラク戦争、リーマンショック、シリア内戦なども含めると、何もない、穏やかな日々の方がむしろ珍しいような気もしてきます。

 そんなわけで、大きな事件はこれからもちょくちょく起きるでしょうから、今回はそれに備えるという意味も込めて、有事・非常時の理論である「猿の惑星理論」を紹介します。

 猿の惑星理論は、みなさん、よくご存じの映画『猿の惑星』から生まれたものです。『猿の惑星』はシリーズで全5作あるようですが、猿の惑星理論と関係があるのは1968年に公開された、チャールトン・ヘストン主演の第一作目です。この映画では、最後の最後で自由の女神像が姿を現し、それを見たチャールトン・ヘストンが「ここは地球だったのかー」と叫ぶラストシーンがよく知られていますが、猿の惑星理論で重要なのはこのラストシーンです。

 チャールトン・ヘストンは自由の女神像を見て、それまで「猿の支配する変な星」と思っていた星が、他ならぬ「地球」であることに気づくわけですが、このように「最後の最後でそれまでの前提がひっくり返る」、「最後の最後で意外な真相が明らかになる」作品を、我々は「猿の惑星型」の作品と呼んでいます。

猿の惑星型の4コママンガ

 「ツァラトゥストラの編集会議」のバックナンバーから、猿の惑星型の4コママンガを二つ紹介します。

 一つ目は、SF小説の最高峰と言われる「火星年代記」です。レイ・ブラッドベリのこの作品は

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筆者

中川文人

中川文人(なかがわ・ふみと) 作家

1964年生まれ。法政大学中退、レニングラード大学中退。著書に『身近な人に「へぇー」と言わせる意外な話1000』(朝日文庫)、『地獄誕生の物語』(以文社)、『ポスト学生運動史』(彩流社)など。本の情報サイト『好書好日』で「ツァラトゥストラの編集会議」の構成担当。総合誌『情況』にてハードボイルド小説「黒ヘル戦記」を連載中。

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