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つかこうへい「口立て芝居」の本当の意味

作家と役者は何をしていたのか(上)

長谷川康夫 演出家・脚本家

つかが発する「正解」で作る芝居

拡大つかこうへい事務所『熱海殺人事件』。(左から)平田満、加藤健一、三浦洋一=1978年、東京・新宿の紀伊国屋ホール

 我々の時代、つかの芝居が台本のない「口立て」という手法で作られたことは、演劇の世界ではよく知られた話だ。それが如何(いか)なるものだったか、僕は『つか正伝』の中で繰り返し描いた。だが、そんな芝居作りでは、つかと僕らの特別な関係性こそが大きな意味を持つという、一番重要なそこには触れることがなかった。今になって、しまったと思っている。

 つかの「口立て」なるものを、ここの読者のために、今一度説明しておこう。

 はなから〝台本がない〟ということで、よく誤解されるのは、稽古場で役者に状況だけ与えて、即興で演じさせ、演出家がそれに助言しながら繰り返す中で台詞を固め、出来上がった各々の場面を構成して、一本の作品に仕立て上げるというものだ。実際それは珍しいことではなく、初期の『東京乾電池』などでは、そんな形で芝居が作られていた。

 しかし「口立て」はそれとは対極にある手法なのだ。

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筆者

長谷川康夫

長谷川康夫(はせがわ・やすお) 演出家・脚本家

1953年生まれ。早稲田大学在学中、劇団「暫」でつかこうへいと出会い、『いつも心に太陽を』『広島に原爆を落とす日』などのつか作品に出演する。「劇団つかこうへい事務所」解散後は、劇作家、演出家として活動。92年以降は仕事の中心を映画に移し、『亡国のイージス』(2005年)で日本アカデミー賞優秀脚本賞。近作に『起終点駅 ターミナル』(15年、脚本)、『あの頃、君を追いかけた』(18年、監督)、『空母いぶき』(19年、脚本)などがある。つかの評伝『つかこうへい正伝1968-1982』(15年、新潮社)で講談社ノンフィクション賞、新田次郎文学賞、AICT演劇評論賞を受賞した。20年6月に文庫化。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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