祝ウディ・アレン復活! 『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』
肩の力を抜いたラブコメの佳品
藤崎康 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師
コロナ禍で心も体もなまっている7月3日、新宿のシネコンで御年84歳のウディ・アレン監督の新作、『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』を観たが、新作といっても2017年に撮られた映画だ。
周知のとおり、ウディ・アレンは1992年、当時交際相手だった女優ミア・ファローの養女への性的虐待容疑で訴えられ、証拠不十分で不起訴となるも、2018年に例の#MeToo運動が過熱するなか養女らから再告発され、加えて米アマゾン・スタジオが本作を含むアレンの4作品の配給契約を破棄し、それに対しアレンは同社を提訴(のち和解)……という係争(けいそう)の泥沼化により、3年前に完成していた本作もお蔵入り状態になっていたが、ようやく昨年(2019年)秋からヨーロッパ各地で公開されると良好な興行成績を上げ、そして先日、日本でも封切られた次第だ(私が観たのは21時からの遅い回だったが、感染予防のため前後左右に1席ずつ間隔を空けた館内の客の入りは上々で、スキャンダルもなんのその、アレン人気は根強いと実感した。ただし、本作はアメリカ本国では現時点でも未公開)。

ウディ・アレン監督=2015年のカンヌ国際映画祭で Denis Makarenko/Shutterstock.com
そんな曰く付きの『レイニーデイ』は、才人アレンが肩の力を抜いて余裕しゃくしゃくで早撮りした92分の古典的ラブコメで、彼の長編50作目にあたるが、このジャンルの法則――とりわけ<偶然>の仕掛け方や行動的なヒロインの設定――を知悉(ちしつ)した者でなければ撮れない軽妙な佳品だ。

『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』7/3(金)、新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開 ©2019 Gravier Productions, Inc. Photography by Jessica Miglio ©2019 Gravier Productions, Inc. 【配給】ロングライド